第156話 六体目の人形の作成と精霊との契約

 3層に降りる階段を見つけて階段を降りた。とはいえ、イノシシ7体相手を安定して狩れるようになるまでは、先に進む気はない。3層のゲート登録だけしておいた。

 そしてその後もイノシシ相手に戦闘を続ける。


「お、レベルアップだ! これで新しい人形と精霊を増やせるな!」

 体にいつものレベルアップ特有のふわっとした温かさみたいなのを感じたのでステータスボードで確かめると、やはりレベルが上がっていた。思わず歓声を上げる。

 レベル51になった事で6体目の人形を作成できるようになり、同時に6体目の精霊と契約できるようにもなったのだ。

 人形はレベル21以来だから、随分久しぶりの作成となる。内心、楽しみで仕方ない。


 戦闘を切り上げて、一旦部屋に戻る。まずは人形の作成からだ。

「人形作成!」

 随分と久々となる呪文を唱える。部屋の床に魔法陣が現れ、全長30センチの、小さい木肌の人形が現れた。この小さい姿を見ると、初めて青藍を召喚した時を思い出すな。


「おまえの名前は「緑青(ろくしょう)」だ。これからよろしくな」

 新入りに挨拶して頭を撫でて、早速ステータスボードから名前をつける。今回の名前は緑系の色から取った。なので早速、緑のバンダナをその首に巻く。

 緑青は俺を見上げて、周囲の人形達を見渡して、小さくこくんと頷いた。

(他の人形達とはかなりのレベル差があるから、慎重にレベル上げしていかないとな)

 いきなりイノシシ相手では何もできずに大きな破損を負うだけになりそうだし、少し別のモンスターを相手にレベル上げした方が良いな。

 とはいえ、それよりも先に、次は精霊ダンジョンへ赴いて精霊との契約だ。

 その後はスクロール屋に行って、緑青と新精霊のスキルや魔法を買い揃えないといけない。

 まあ、どちらもまだレベル1なので、必要なスキルや魔法を一気に覚えさせられないので、覚える予定のうちの一部だけだが。


 ゲートの行き先を精霊ダンジョンにして潜る。そして近くによってきた複数の精霊のカケラのうちの一体と、無事に契約を済ませた。

「よし、おまえの属性は氷にする予定だ。名前は「氷毬(ひまり)」だ。これからよろしくな」

 嬉しそうにふわふわと俺の周りを漂うモヤの姿の精霊に名前をつける。

 今回は、前回の精霊選びの時には寒さのせいで選ばなかった氷属性にした。イタチの風魔法が不可視で避け辛かったのもあって、風魔法も有力候補にあったのだけど、それはまた次の機会に回し、応用範囲の広い氷属性を選んだのだ。

「魔法を覚えてもらう為に、スクロール屋で呼び出すからな」

 氷毬にそう言い置いて精霊ダンジョンを後にして、早速スクロール屋に移動だ。


 まず、緑青に買ったのは「身体強化」「剛体」「盾術」「剣術」だ。他のスキルはまたレベルが上がったら、随時買い足していく予定だ。それと、人形専門スキルの「硬質化」「遠隔操作」「視覚共有」も買いたいと、ガイエンさんに頼んでおいた。


「手間をかけてばかりで申し訳ないですが、また暇な時にでも倉庫探しをお願いします」

「おう、任せとけ。どうせマイナースクロール祭りで放出しても、仲間内全部の在庫は捌ききれねえ程の量があるんだしな。そのうちに見つけといてやるよ」

 人形専用スキルに関しては、本当に毎回ガイエンさんのお世話になってるな。

「そのうち、専用スキルや専用魔法だけがドロップするようなダンジョンとか出来ればいいんですけどね」

「そうだな。一応システムに要望だしとくか」

 ガイエンさんがステータスボードを操作している。今言った要望を早速システム宛てに出してくれたようだ。

 もし実現すれば、使役用の専用スキルや専用魔法ももっと一般に認知されるし、入手しやすくなるだろう。システムが新ダンジョンを採用してくれればいいな。



 次いで、氷毬に買ったのは以下の四つの魔法だ。


「アイス」(小さな氷を出す魔法)

「アイスアロー」(氷の矢を飛ばす攻撃魔法)

「アイスボール」(氷の玉を飛ばす攻撃魔法)

「アイスバレット」(氷の散弾を飛ばす攻撃魔法)


 勿論こちらも、他にも覚えて欲しい魔法はあるので、またレベルが上がったら買い足す予定だ。

 これらのスクロールを店内で、連れてきた緑青と召喚した氷毬に覚えてもらった。その結果、氷毬の姿は氷の結晶が巨大化したような姿になった。

 その次には、緑青用の短剣を買う為に武器屋に移動だ。

 そうして一通りの事前準備が整ったら、今度は初心者ダンジョンの7層へ。

 イヌの群れを他の人形達にある程度ダメージを与えた状態で捕まえて抑えてもらって、そこに緑青や氷毬に攻撃を叩きこんでもらうというパワーレベリング方式を採用した。

 そうしてこの二人のレベル上げにのみ注力した結果、その日のうちに緑青はレベル12、氷毬はレベル9まで上がった。氷毬の方は召喚のクールタイムと魔力の回復時間の制限がある分、ちょっと緑青よりもレベルの上がりが遅くなるが、そこは仕方ない。


 次の日もまた、同じようにイヌを他に人形に抑えてもらって、ひたすらレベリングに励んだ。

 やっぱり30センチじゃ、大型モンスターといきなり戦わせても、何もできないもんな。もうちょっとレベルを上げたら俺達に混じって普通に戦ってもらうようになるけど、極端な低レベルのうちは安全にレベル上げをしたい。

 前はレベル1の人形をいきなり最前線に放り込んでも、モンスターがそこまで凶悪じゃなかったおかげでなんとかなっていたけど、ここまでレベル差が開いてくると、こういう措置も必要かと思ったのだ。



 そんな訳で、緑青がレベル18、氷毬がレベル14まで上がったところで、またスクロール屋に赴いて、緑青に「氣力増強」「投擲」「知力強化」「記憶力強化」「魔法耐性」「水抵抗軽減」「平衡感覚」「直感」「気配察知」「危険予測」のスキルを買った。

 氷毬の新魔法は、もうちょっとレベルが上がったらまた買い足そう。


 明日からは魔物素材ダンジョン1の1層のオオウサギを相手にして、緑青と氷毬をもうちょっとレベリングするつもりだ。

 そしてその後は最前線であるイノシシに戻る予定だ。

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