第155話 オオイノシシの攻略
「今回の群れは6体かな」
気配察知で近くにいる群れの数を確かめる。黒檀も頷いた。
この周辺の罠もあらかじめ潰しておいたし、ついでに足場固めもした。大盾もインベントリから出して、それぞれに構えさせている。
「始めよう。誘導してきてくれ」
俺の合図に、黒檀が土の斜面を静かに駆けていく。人形達はお互いに丁度いい位置を探って、それぞれが大盾の下の杭を地面に打ち込んだ。
……イノシシの攻略を始めて五日目。中継ゲートを探しつつ、俺達は順調に経験値を積んでいた。
また、実際にイノシシと戦ってみて、変更した方がいいと思ったところは変更してある。
まず、俺と黒檀以外は長柄の武器の方が有効だろうと判断して、対イノシシ戦では青藍と紫苑に槍を装備させる事にした。
また、大盾を一人で支えて突進を受け止められないかどうかを試したところ、レベルが上がったおかげか、ウシよりはやや小型なイノシシ相手だからか、ギリギリだが一人でも止められた。
そこで大盾の数を四枚まで増やして、俺と黒檀以外は一人ずつ盾を構えてもらう事にした。インベントリもレベルが大分上がったから、嵩張る大盾を複数買って収納しても大丈夫なのだ。
こうして大盾複数で待ち構える事で、イノシシの突進を受け止められる数を多くした。
ちなみに、最初の突進を止めた後はその場に大盾を放置して、槍や斧での攻撃に集中してもらう手筈だ。
「来るぞ!」
黒檀が6体の群れを誘導して駆け戻ってくる。
「炎珠召喚! 先頭のヤツにファイヤージャベリンを!」
俺の呼びかけで召喚された炎珠が、群れの先頭を走るイノシシの鼻先に魔法を撃ちこんだ。顔面に炎の太い投げ槍を食らったイノシシは悶絶し、突進が止まる。先頭のイノシシが痛みに悶えて足を止めた事で、後続もそのイノシシを避ける為に突進の勢いを弱めた。
(よし! 突進が来る前に一撃入れて、群れ全体を怯ませられたな)
イノシシの突進をただ待ち構えて受け止めるだけじゃなく、タイミングを合わせればその攻撃そのものを弱めたり中止させたりできるようになった。
「結聖召喚! フィールドバリア!」
次に召喚した結聖が、大盾を構える人形達より少し離れた場所にいる俺のかなり手前の位置に結界を張った。止まった先頭を避けて突進してきたイノシシ達が、大盾や結界にガツンと衝突する。
「今だ! 攻め込め!」
突進を止めて、イノシシの動きが鈍った隙に、人形達が大盾の影から飛び出して各々一体ずつを相手に戦いだした。
弓では深い傷を負わせられなかった紫苑も、武器を槍に変えたおかげで、一対一で充分に戦えるようになっている。
黒檀は大きなダメージを与えられないかわり、素早さで翻弄して自分が担当するイノシシを他の相手のところに行かないようにうまく立ち回っている。
俺には結聖の張ってくれたバリアがあるので、バリア越しにクロスボウを射っている。同じパーティメンバーの張ったバリアは味方の攻撃を素通しするのだ。敵の攻撃のみを弾き、味方の攻撃はきちんと通すなんて、本当に便利だよな。
(まあ、石躁のストーンウォールのような物理魔法は、石の壁に触れるし乗れる代わりに、味方の攻撃のみを通すような機能はついてないから、それぞれの特徴を把握して、うまく使い分けないとな)
攻撃力の少ない俺や黒檀が敵を足止めしている間に、仲間内でも特に素早くイノシシに止めを刺した、紅、山吹、青藍が残りのイノシシに向かう。紫苑も青藍の助けを借りつつも無事に一体を仕留めたし、紅と山吹は俺と黒檀が足止めしていた個体を力強い攻撃を繰り出して素早く排除してくれた。
「今回は完勝だな」
ついでに、今回の戦闘ではドロップアイテムでスクロールも出た。
スクロールは下級に入って、初級の頃よりも頻繁に落ちるようになっている。それで多少は希少度が下がっているとはいえ、収入的にはやはりその売却益は大きいので、ありがたい事には変わりない。
他のドロップアイテムも軒並み高値で売り払えており、必要経費以外の純利益が月に100万くらいになっている。
シーカー以外の職業ならば、普通には稼げないような大金だ。俺は電子書籍の漫画や小説を少し買うくらいで、他には特に無駄遣いもしていないので、貯金は貯まる一方である。
ダンジョンに潜り始めた当時は常に金欠で喘いでいたのに、随分と変わったものだ。
……こうして戦闘方法をイノシシ向けに変更したおかげで、六体の群れまでなら安定して倒せるようになった。
俺も人形も、これまでの戦闘で何度か、イノシシの攻撃を避ける際などに柔らかい土に足を取られて転んでしまって、全身が土塗れになったりもしたけど、大きな怪我や破損はせずに済んでいる。
あと一体、群れの最大数である七体を安定して倒せるようになれば、次に行っても大丈夫だろう。
それと今、人形使いと精霊召喚のスキルレベルが、どちらもともに49だ。あと二つレベルがあがれば、6体目の人形と精霊を同時に増やせる。そうなれば戦力がより強化される事になる。
(次の人形と精霊が楽しみだな)
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