第146話 休日のあれこれ、火吹きキツネへの対応
シーカー用食料品店で色々と買い込んだ後は第三街区のシーカーギルドへ赴いて、エッガボルブさんに戦闘訓練をつけて貰った。やはり熟練者の指導は為になる。
その後は昼食までの時間、ダンジョンに潜って戦闘を熟す。
昼食後、今度は斥候ギルドに行く事にする。マレハさんに魔道具のお礼も渡したかったし、罠に対する講習も受けたかったので。
そんな訳で午後から斥候ギルドに行き、マレハさんにお礼として低反発クッション(エバさんに渡した物と同じもの)と健全系の一次と二次の同人誌を数冊、そして同人誌の歴史や取り扱い、マナーや作成方法などを総合的に纏めた本(ややこしいけど、この本自体は商業誌)などを渡した。
マレハさんは「素晴らしい本を大量に購入して頂いたおかげで、毎日の読書が楽しくて仕方ない日々でして、このような名作ばかりを選んで購入して頂いた事に非常に感謝しております。むしろこちらが重ねてお礼をしたいところですのに、トキヤ様からのお礼など、私が受け取る訳には」と恐縮して遠慮していたけど、「この本は商業誌じゃないマイナーな物なので、多分こちらの宅配や本屋では取り扱われないと思います」と言ったら、速攻で受け取ってもらえた。数量限定、期間限定の一期一会ですからね、同人誌っていうヤツは。
同人についてのあれこれは軽く説明するに留めた。
「詳しくは纏め本を読んで下さい。多分そのうち政府からも、詳しい広報があると思います」
それと渡辺さんの集落で、いずれは地球で作られた同人誌や同人グッズなどを販売する祭典を開催するかもしれないと、マレハさんに伝えておく。
更科くん曰く、同人の祭典や鉄道企画については渡辺さん達も積極的で、できれば開催したいという方針なのだけど、企画や運営の人手が足りないのが最大のネックになっているそうだ。
なので、実現するかどうかは不透明だけど、もし興味があれば渡辺さんに協力してあげて下さいと伝えておいた。マレハさんはとてもいい笑顔で、「それは是非とも協力して、開催に漕ぎ着けなければなりませんね」と嬉しそうに宣っていた。
ちなみに同人誌の纏め本に関しては、早渡海くんを通じて貞満さんにも、同じ物を贈っておいた。正直、日頃のお礼がこれでいいのか謎だけど、本の担当者の人が同人誌を知る参考の一助にしてくれたらいいと思う。
そして夕方、斥候ギルドでの講習と特訓を終えて家に帰った後は、母から食事の作り方を教わった。今回はお米の研ぎ方と焚き方、そして味噌汁の作り方を習った。日本食はこれが基本中の基本だから、これが作れないと、一人暮らしの際に本気で困りそうだ。
……余談だけど、初級の食材ダンジョンでドロップする穀物の中には、米もちゃんとある。短米種も長米種も両方とも。だけど味は日本の有名産地の品種の一等米には及ばない程度だ。
ただそれも、中級までいくと日本の一級品よりも明らかに勝る味の食材がドロップするようになるので、支援効果目当てではなく純粋なる味目当てで、中級以降の超高級食材を求める層がいるとの事だ。
そういうのを聞くと、中級に辿り着くのが待ち遠しくなるな。
数日後の放課後、5匹の火吹きキツネと対峙する。キツネは3体から5体の群れで行動するので、これが群れの最大数だ。このモンスターには仲間を呼ぶ習性もないし斥候役もいないので、戦闘途中で敵の数が増える心配はほぼない。
群れ全体が脚に力を溜めて火を吹く前動作をしたのを見て、即座に「結聖召喚、フィールドバリア!」と指示を出す。召喚によって現れた結聖が、キツネ5体がこちらに抜けて真っ直ぐ前に吹いた火を、地面から現れた魔法陣から立ち上った結界できっちり全員をカバーして防いでくれる。
結界によって火を防いだおかげで、俺達が大きく飛びのいて距離を置く必要はなくなった。人形達もそれを理解していて、結界のすぐ内側で、キツネの火魔法が切れるのを油断なく待ち構えている。
「金煉召喚! 武器の切れ味強化! 花琳召喚、毒の範囲魔法!」
立て続けに召喚した精霊が揃って魔法を行使する。それによってみんなの武器が強化され、続いて敵が毒によって弱体化した。
火が消えると同時に、全員の攻撃が一斉にキツネに襲い掛かる。その後、キツネを始末するのに僅かな時間しか掛からなかった。
「よし、精霊の力も借りたとはいえ、最大数を相手にしてもまるで苦戦しないな」
改めてキツネとの戦力差を確認して、俺は大きく頷いた。やはり1層は1でも2でも楽勝だ。
キツネの火魔法も顔を向けた方向にしか放射されないし、火を吹いている最中は四肢を踏ん張る必要があるようで移動もできないようだし、それほどの脅威にはならなかった。
フィールド探索の方も順調で、数日で中継ゲート東西南北の四か所すべてを発見している。これならあと数日もあれば、次の層への階段を見つけられそうだ。
(ドロップアイテムの買い取り値段で見ても、1の1層は初心者ダンジョンの10層よりちょっと安い程度だし、2の1層でやっと、ほぼ同じ程度なんだよな。これは下級は2層からが本番と言っていいかもしれない)
1層が最弱スライムと同じ位置づけだと考えれば、2層、3層あたりからが下級ダンジョンの本番と言っても良い。
経験値的にも収入的にもあまり効率が良くないようだし、できるだけ早く階段を見つけて、次の層へと行きたいところだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます