第104話 新魔法を試してみる
今日は一昨日買った新魔法を、実戦で使って試してみる事にする。
9層で試せるのは、炎珠の「ファイヤーウォール」と「ファイヤーエンチャント」。そして花琳の眠り、麻痺、毒の魔法の単体魔法の方だな。ウシは群れないから、範囲魔法はまた別の層で試そう。あと、炎珠の「ファイヤー」は着火の為の生活魔法であって、そもそも攻撃魔法じゃないから、モンスター相手に試す必要はない。
後で7層と8層に行って、イヌとヒツジを相手に、花琳の範囲魔法の方も、一通り試しておきたいところだ。
「炎珠召喚! ファイヤーウォール!」
まず炎珠の新魔法であるからファイヤーウォールから試してみたところ、やはり炎の壁では、突撃してくるウシに、すぐに通り抜けられてしまった。通り抜けた際に少しだけ表面が焦げたようだが、やはりそこまで大きなダメージは与えられていないようだ。
ただ、ちょっと思いついて炎珠に概要を説明して試してみてもらったところ、木の幹に魔法をかけて炎の壁を幹から生やして、壁を横向きに展開する事はできた。
これまでは地面から生やす固定式なのかと思い込んでいたが、そこに固定する土台さえあれば、方向は問わないのかも。
新しい発見をしたので、もっと詳しく検証ずべく、後で石壁がある5層へ行って、石畳の壁や天井でも、横向きや逆さといった条件でも、同じように魔法を展開できるのか試そう。これは勿論、石躁のストーンウォールもだ。
これまで思いつかなかった新しい使い方を思いついてあれこれと試してみるのは、なんだか実験をしているみたいで、ちょっと楽しい。これが戦闘に活かせるなら、もっと嬉しい。今のうちに存分に試して、条件をはっきりと確定しておこう。
召喚のクールタイムには他の精霊を召喚して通常の戦闘を挟んだりしつつ、新しく買った魔法の使い心地を試していく。
「炎珠召喚、ファイアーエンチャントを紅の槍に!」
次はファイヤーエンチャントの魔法の方を試してみる。エンチャントとは、武器に属性を付与する魔法の総称だ。これは火属性や聖属性だけに限らず、全属性で同じようにエンチャントの魔法があるようだ。
指定した紅の槍の穂先に、綺麗なオレンジ色の炎が纏わりつく。勿論この炎が、武器そのものを焦がしたりしている様子はない。
そのまま紅に槍でウシに攻撃させてみると、こんがりと美味しそうな匂いが辺りを漂った。火属性のエンチャントがなされた武器で攻撃された場合、攻撃対象はやはり火で焦げるようだ。他の属性でどうなるかはわからないが、少なくとも火属性ではそうなるんだな。
ダメージを通常攻撃よりも与えやすくなっているかどうかは、まだわからない。焦げると傷口が焼かれて出血が止まる分だけ、出血ダメージが少なくなるって可能性もある。
(まあモンスターは何故か普通の動物よりも、流れる血の量がかなり少ないし、熱のダメージが加わる分だけ、ダメージが増加されてる可能性の方が高いかな?)
その後も色々と条件を変えてエンチャントを試してみたところ、魔力を多く込めれば、複数の武器に対して、一度の精霊召喚でエンチャントできる事もわかった。火属性が弱点の敵を相手にする時とか、みんなの武器に、一気に属性付与してもらうのもいいな。
炎珠の新魔法が一通り終わったので、次は花琳の単体魔法の方に移る。
「花琳召喚、眠り草の誘いを!」
今度は花琳の新魔法の試しだ。この魔法は、かけた敵を高い確率で眠らせる魔法だ。ただし相手が睡眠耐性を持っていたりすると、魔法の効果に抵抗されたりする場合もあるようだ。まあ、ウシは睡眠耐性を持っていなかったようで、普通に魔法を受けて眠りこんだ。
ただ、この魔法の効果は、強い痛みの前ではすぐに薄れるらしくて、攻撃して痛みを感じさせてしまうと、敵はすぐに起きてしまう。
これだと、最初の一撃を、反撃を気にせず思い切りやれるくらいしか、メリットはなさそうだ。
ただ、範囲魔法なら敵の数が多い時に、一度に戦う相手の数を調整するのに役立つんじゃないかな。
「花琳召喚、痺れ草の罠!」
次は麻痺効果のある新魔法だ。この魔法はかけた敵を麻痺させる効果を持つ。実際に試してみたところ、麻痺状態になったモンスターは、最初から魔法が切れる時間まで、動きがかなりはっきりと鈍った。こちらの方は、攻撃して痛みを与えても、効果が切れるといった弱点もないようだ。相手の攻撃が鈍る分、こちらから一方的かつ集中的に攻撃を加えられる。
敵の動きを阻害する効果だけなら、眠りの魔法よりも麻痺の方が、ずっと有効だな。
「花琳召喚、毒草の囁き!」
単体最後の新魔法は、かけた敵を毒状態に陥らせる魔法だ。この魔法を試してみたところ、かけた当初はそれほどウシの動きは鈍らなかったが、時間を置くにつれて加速度的に苦しそうに弱っていき、動きを鈍らせていった。
どうやら魔法によって敵の血液の一部を毒に変換するか、あるいは血液に直接毒を流し込むかしているらしい。そのせいで、魔法をかけた花琳が時間切れで帰還してからも、魔法の毒の効果は切れずに長く続いた。
これはまた、中々にえぐい魔法だな。でもかなり有用だ。眠り、麻痺と比べると初動は遅いものの、効果時間は一番長くなる。敵が毒耐性を持たず、ポーションで解毒もできない状態なら、かなりの効果が期待できそうだ。
9層で試せる内容を一通り終えたので、今度は別の層に場所を移す事に。
まずは5層の石畳の通路や壁で、ストーンウォールやファイヤーウォールを試した。
これも想定通り、壁や天井から、横向きに生やしたり逆さにした状態で、ちゃんと壁を生やす事ができた。炎の壁も石の壁も両方ともだ。
更に7層、8層で、イヌとヒツジを相手にして、花琳の眠り、麻痺、毒の範囲魔法も、念入りに試してみた。
7層のイヌは、以前は数の多さに随分と苦戦させられたものだけど、これも群れの一部を眠らせたり麻痺させたりして、動きを止めて対処するっていう方法もあったんだな、という気づきを得た。
こうすれば敵の数が多すぎて手が足りない時に、こちらに有利な状況を作れたのか。
それと、範囲魔法三種類をそれぞれじっくり比べてみて初めてわかったんだけど、眠りの魔法の方が、麻痺や毒よりも、魔法にかかる個体数がかなり多めのようだ。
一度攻撃すると効果が切れてしまうとはいえ、これは敵の数を一時的に減らしたい場合には、非常に有効だ。こうした差異をきちんと覚えておいて、いざという時に使い分けられるようにしたい。
その日の夕飯の時間に、姉が「あとちょっとで7層を超えられそうな手応えがあるのに、最後の決め手がなくて、困ってるのよね」と不本意そうな表情で愚痴を零していたので、随分とタイムリーな話題だなと思って、俺は状態異常の範囲魔法の取得をお勧めしておいた。
眠り、麻痺、毒のそれぞれの魔法の違いや使用感なんかも、わかる範囲で話しておく。
姉が状態異常魔法を覚える場合、別に緑属性に拘らなくても、他の属性でもいいのだけど、俺が既に使って使用感がわかる魔法の方が、確実でお勧めしやすいのだ。
もうちょっとで7層を超えられるっていう手応えを感じられるくらいまで実力をつけてきているのなら、状態異常の魔法でイヌの数をコントロールできれば、きっと遠くないうちに、先に進めると思うんだよな。
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