第76話 下級ダンジョンに関する情報集め
いずれ挑戦する事になる下級ダンジョンの情報も、そろそろ集めておきたい。夜寝る前の時間を利用して、ネットで調べてみよう。
そんな感じで下級に上がる際の注意点についてなんかを検索してみる。
初級から下級に上がる際、まず一番気を付けるべき点として挙げられていたのは、「罠」の存在だ。
初級ダンジョンには罠の類が一切存在しないので、それまで経験した事がない分、準備が足りず引っかかる人が多いという。
そのサイトには「できれば初級のうちから斥候ギルドに訓練に行っておいた方が良い」という忠告が乗っていた。斥候ギルドとは、罠の解除や作成を行う斥候職の支援を目的として作られたギルドで、有料だが訓練施設が使えたり、講習を受けられたりするのだという。目印の看板の絵は、トラバサミと輪っかに結ばれたロープだそうだ。
斥候ギルドの場所が知りたければ、ネットに掲載されている地図を検索するか、あるいはその街の斥候用品店でギルドの場所を聞けば教えてくれるとある。
そのままネットで調べてみると、4つ分だけだが、斥候ギルドまでの地図が載っているサイトを見つけた。ちょっと探しただけじゃ、全部の街のギルドを網羅しているサイトは見つからなかった。そして見つけたサイトの地図の中には、キセラの街は含まれていなかった。
(別に全部の用事をキセラで済ませないといけないって決まりがある訳じゃないし、ネットに載ってる地図のある街に行ってもいいし、キセラの街の斥候用品店で場所を聞いてもいいけど。……そういえば、前に黒檀に斥候用品と、潜伏に邪魔にならない小ぶりなリュックを買わないとって思ってたのに、すっかり忘れて、まだ買ってなかったな)
買いたいものがあるのだし、ついでに斥候用品店でギルドの場所を教えてもらえばいいか。キセラの北西通りの斥候用品店は、薬屋の隣にあったはず。そこに買い物に行って、ギルドの場所を教えてもらおう。
斥候ギルドで講習を受けるのは、斥候役の黒檀だけじゃなく、俺も他の人形も全員で受けた方がいいだろう。何も知らないよりは、基礎的な知識はつけておいた方が安全だ。
(なら明日、まず斥候屋にいって、それから斥候ギルドに行ってみる事にしよう。講習がいつ受けられるのかとかも、実際に行って聞いてみればいいよな)
明後日はキセラの街の創立祭当日だから、行くなら明日のうちだなと予定を立てる。
斥候ギルドに関してはそれでいいとして。今は下級ダンジョンについての情報集めに戻ろう。
……ダンジョンは、それぞれのフィールドで出てくるモンスターも違うし、ドロップアイテムも違う。なので同じ階級の中でも、難易度の違いで「難」「普」「易」の3種類に、更に分類されている。
初級にはそういう区分はなかったけど、それは初級のダンジョンが初心者ダンジョンや食材ダンジョンなど、限られた種類と数しかないからで、下級以降はその三つの区分で定義されているようだ。
また、難易度とは別に、日本人に不人気なダンジョンという分類も(ネット上では)存在するようだ。
「ゴブリンダンジョン」や「オークダンジョン」といった、人に近い二足歩行のモンスターが専門で出るダンジョンが不人気の代表となっている。人に近い姿のモンスターと戦うのは、人殺しをしているようで忌避感が強いらしく、日本人には圧倒的不人気だそうだ。
あとは、「アンデッドダンジョン」も不人気となっている。アメリカではアンデッドダンジョンでゾンビ退治するのは映画みたいで面白いと、一部の層には人気があるらしいが。
他にも、虫ばかり出てくる「昆虫ダンジョン」も見た目で不人気だし、武器を溶かしてしまう「スライムダンジョン」も不人気だ。
初心者ダンジョン1層の最弱スライムを知っていると、ついスライム相手というだけで油断してしまうのだろうが、スライムとは本来、物理攻撃が効きにくい強敵のモンスターなのだ。装備類はダメージを受けても修復されないので、スライムは他のモンスターより出費が嵩みやすいモンスターとなる。
(うーん、どうしよう。不人気モンスターだって、モンスター混合型のダンジョンでは出てくるんだよな。先々を考えれば避けて通るより、今のうちに体験しておいた方がいいかな?)
日本人に不人気なそれらは、俺にとっても苦手要素が満載だ。けれどだからといって、避けて通っていいものか。少し悩んだが決めた。
(出費が嵩むスライムはともかく、他の不人気モンスターは、一度体験してみるか。ダンジョンの完全攻略まではいかなくても、何度か潜って慣れる程度はしておこう)
一般的に定番と言われるダンジョンの他に不人気ダンジョンも視野に入れて、今後の予定を立てよう。
「初心者ダンジョンを卒業してからの定番の流れとしては、「魔物素材ダンジョン」の1と2か」
初心者ダンジョン卒業後の多くの人が選ぶ定番ダンジョンがその二つだ。
ここは難易度「易」の上、初心者ダンジョンと似た10層までの構造になっているのもあって、下級へ上がって最初に行くダンジョンとして、最も人気が高いようだ。
ドロップアイテムも、防具などの装備に使える魔物素材が豊富にドロップする他、金属類、ポーション類、食材類のドロップも豊富で、実入りの良いダンジョンのようだ。
特徴としては、二つのダンジョンをジグザグに攻略していくのを推奨されている事。
魔物素材ダンジョンの、1の1層を攻略したら、次は2の1層。その次は1の2層、更に次は2の2層……と、順番に攻略していくのが良いと提唱されている。
その理由は、1と2のモンスターの強さの違いが、体感で1.5倍程度なので、ジグザグ攻略の方がスムーズに攻略していける、というもので、とあるサイトで提案されたのが始まりで、今ではわりと一般に広く知られた攻略法となっているようだ。
(同時攻略した方が効率が良いなら、俺も先人に習ってそうしよう)
このダンジョンで推奨される取得耐性は8種類。そのうち、特に必要性が高いのは5種類のようだ。下3種は取らなくても特に問題ないとある。初級で取った方が良いとされるスキル分は抜かしての記載だな。雷を使うモンスターも出るけど、それは初級のヒツジで対策済みのはず、という事だ。
優先順位としては、毒>火>氷>変温>即死>風>水>土。
風と水と土は無くても問題ないとある。下級ではそれらの属性魔法はまだ、物理攻撃に近いらしい。
変温耐性とは、耐冷と耐熱を合わせた耐性だ。火や氷は魔法が直撃しなくても温度変化でダメージを与えてくるので、この耐性もあった方がいいようだ。
即死耐性は毒でのショック死を防ぐ目的で取得が推奨されているが、下級の毒はそこまで強くないので、優先順位はわりと低いらしい。でも念の為ここで取っておくのもアリ、という扱いのようだ。
(そういえば、即死耐性はこの前ドロップして売ったんだっけ。まあドロップアイテムは窓口で売った方が買い取り価格が高くてお得だし、ダンジョン街で定価で買い直せるから問題ないけど)
(明日、斥候ギルドに行った後にスクロール屋にも寄って、耐性スキルを揃えようかな。緊急性の低い下三つは見送って、とりあえず重要性の高い順に上から五つか)
パッシブスキルの取得は慎重に選ばないと氣の運用が厳しくなると、以前ガイエンさんに忠告されている。ここは欲張って全部の耐性を取るよりは、数を絞った方がいいだろう。
「あれ、見慣れない金属の名前があるな」
魔物素材ダンジョンについて更に調べていると、ドロップアイテムに、ファンタジーで有名な幻想金属以外の、見慣れない名前の金属があった。
気になって調べてみると、これらは地球で知られたものではない、ダンジョン固有の幻想金属らしい。
ダンジョンでモンスターを倒した際に落ちるドロップアイテムの中には、有名な幻想金属の名も当然含まれているが、それ以外にも種類があるようだ。
また、トレントの素材は魔力を通すのに最適な素材で、魔法が主体の戦い方をする人は、金属よりもトレント素材を使った武器を使うのを推奨されていた。
そして、氣力と魔力の両方を使う人と、氣力だけを使う氣力特化の人でも、推奨金属の種類が変わるようだ。
下級で一般的な武器素材は、魔力専門が「レッサートレント」の素材。魔力と氣力の両立素材が「アルフース」という金属を使った武器。氣力専門が「オリグラ」を使った武器、となっている。
また、普通の金属だと武器に適しているのは鉄や鋼だが、幻想金属は違う。
鉄<銅<銀<金<白金。
この順に金属としての強度が増して、魔法やスキルの威力も増していくとの事だ。アルフースとオリグラは、この区分だと「鉄」相当の素材となるのだそうだ。
なので下級ではまず、魔法使い系の人はレッサートレントで杖などの武器を作成、魔法とスキルのどちらも使う人は、アルフースの素材で武器を作成、氣力をメインにスキルで戦う人は、オリグラの素材で武器を作成するのを、当面の目標にするという。
俺の場合、魔法を使う精霊達は実体を持たないので装備は持てない。なので俺と人形の武器はオリグラという、氣力特化の幻想金属で武器を作成するのが良いと思う。
オリグラ金属やその素材で作られた武器は武器屋でも売っているが、出来合いのものを買うよりも、自分で素材集めをして武器作成を依頼した方が安上がりなので、そうする人が多いようだ。アルフースもオリグラも幻想金属の一種だけあって、かなりの高値らしい。
俺も、俺と人形達の分全部を揃えるとなると、素材集めから開始した方が良さそうだ。
これらの幻想金属が多くドロップするのは「ゴーレムダンジョン」だ。また、魔法の武器となるトレント素材がドロップするのは「トレントダンジョン」となる。
ゴーレムダンジョンとトレントダンジョンは、下級、中級、上級、特級、最上級にダンジョンが揃っていて、自分に合った等級のダンジョンに挑み、武器の素材を揃えつつ更なる高みを目指すのが、シーカーの習わしであるらしい。
(へえ。本格的にシーカーをやるなら、装備の素材を自分で集めるのが習いなのか)
まあ、金持ちはそんな習慣を律儀に守る必要はないのだろうし、単なるジンクスみたいなものかな。
定番では、難易度「易」を二か所、「普」を二か所、「難」を二か所で、計六か所のダンジョンを攻略できれば、中級に上がって問題ないとされている。
無論これは定番なので、自信がある人や急ぎたい人は手順通り進まずショートカットする人もいるだろうし、逆に慎重に進みたい人は、もっと多くのダンジョンを時間をかけて巡るのだろう。
俺は一般的な手順に加えて不人気ダンジョンも少し通う予定にしたので、定番よりゆっくりめのペースになる。
トレントダンジョンやゴーレムダンジョンの難易度は「普」だ。不人気ダンジョンは、ゴブリンが「易」で、オークとアンデットと昆虫が「普」となっている。
なので俺の下級での予定は、まず「魔物素材ダンジョン」1と2を攻略し、その後「ゴブリンダンジョン」に少し通ってから、武器の素材を揃える為に「ゴーレムダンジョン」を攻略。
その後、難易度「普」のどこかのダンジョンを選んで攻略し、他の不人気ダンジョンに通ってそれらのモンスターに慣れる事になる。
その後更に、難易度「難」のダンジョンからどこか二か所を選んで攻略。
そうしてようやく中級へ進む……という手順になりそうだ。
不人気ダンジョンの部分を抜かせば、これらの予定はごく定番の下級ダンジョン攻略法だな。
「他はまだ先の話だし、まずは真っ先に攻略する事になる魔物素材ダンジョンの情報を、もっと集めないとな」
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