第62話 武器屋で一部の武器を変更する

「それで今日は何の用だ」


 ラーメンの話が一段落したところでアルドさんに問われ、店に来た用を思い出す。

 そういえば、元々は用があったから店を訪れたのだった。つい、食べ物談義に夢中になってしまった。

「あ、そうでした。ダメになった矢の買い取りと、新しい矢の補充と、あとは武器の状態が問題ないか見てください」

 一度撃った矢は、状態が良ければ再度使えるけど、矢じりが曲がったり羽の部分がへたったりと、使えなくなるものも多い。なので使えなくなった矢はこうして武器屋に持ってきて安値で引き取ってもらって、代わりに新しい矢を買うのだ。


 それと、俺は武器に関しては完全に素人なので、言われた通りの手入れはしているものの、偶に武器屋で手持ちの武器の状態をチェックしてもらっている。

 武器の損耗度を判断してもらって、必要なら手入れしてもらったり、買い替えが必要ならそれも判断してもらったりと、お世話になっているのだ。

 今日は人形も全員連れてきている。彼らの持つ武器も含めて状態をチェックしてもらう為だ。


「この人形の片手剣は、内部に細かい傷ができている。打ち直すか買い替えした方が良いだろう」

「そうですか。この剣も結構長く使ってますしね。どうする青藍? 打ち直しと買い替えだとどっちがいい?」

 青藍は武器屋の店内の、剣がいくつも並べて置かれている方を指さした。これは新しい剣が欲しいって主張だな。

「買い替えでお願いします」

「ふむ、いくつか見繕おう。今のよりもやや長めの剣も出してみるか」


「そういえば打ち直しの場合だと、鍛冶屋さんに依頼するんでしょうか?」

ふと気になったので質問してみる。

「打ち直しは俺でもできる」

「店主さんって、武器を造ったりもできるんですね」

鍛冶屋さんでもあるのか。でも鍛冶用の施設はこの店の中には見当たらないけど。

(鍛冶は他の場所でやってるのかな)

「……店主……、俺の名はアルドだ」

ちょっと微妙そうな顔でそう申告された。

「え? あ。アルドさんですか。はい、了解です。俺の名前は鳴神 鴇矢です。鳴神が苗字で、鴇矢が名前です」

(おお、ガイエンさん、アゼーラさんに続いて、武器屋の店主さん……アルドさんとも自己紹介をしあえた! 最近、立て続けにすごいな!)

「そうか、トキヤか。これが今回のお勧めの剣だ」

 青藍はアルドさんが勧めてくれた3本の剣をそれぞれ持ち比べて、軽く振ってみたりして、最終的に今まで使っていたのより、やや長めの片手剣を選んだ。


「あと、トキヤの使っている短剣も少し痛んできているが、普段はあまり使っていないようだな。買い替えが必要かは微妙なところだ」

 主武器の確認を終えて、予備武器の確認に移ったところでそう告げられた。

「そういえばこれが、今一番長い期間使ってる武器になります。でも俺の予備武器にしてからは、殆ど使用してなくて」

 俺の持っている予備の短剣は、前は青藍が使用していたものだ。母が俺の入学祝にと買ってくれた、地球製のものだ。

(せっかく入学祝に母さんにもらったものだから大事に使いたいけど、武器はいずれ交換が必要になるものだし、痛んだ武器を使って不具合が起きる方が問題だしな。安全重視でこれも買い替えようかな)

 買い替えに意識が向いたところで、別に短剣である必要はないのだと気づく。

 そもそもこの短剣を予備として使うようになったきっかけは、青藍に俺の使っていた鉈を渡したからだ。その後、俺の主武器は槍を経てクロスボウに変わったけど、予備の方はろくに使ってこなかった。

 槍だと長さ的に邪魔になるから予備に持つには不向きだったけど、普通の片手剣なら、予備の武器にしても良さそうだ。短剣だと敵と対峙する時、リーチがなくて使いづらいし。


「……そもそも短剣を予備にしなくても、普通の長さの片手剣でも良いんですよね。その方がリーチがあって戦いやすいですし」

「なら、細身の片手剣を見繕うか」

「はい、俺の新しい武器は片手剣をお願いします」

 アルドさんが俺用にいくつか武器を見繕ってくれている間、再び気づく。

「そういえば、紫苑も俺と同じで、別に予備が短剣でなくても良いんだよな。どうしたい?」

 そう紫苑に訊ねる。

 青藍、紅、山吹の三人は自前の武器の使用頻度が高く、予備はあくまでも、いざという時の為でしかなく、普段使う事を想定していない。だから持っていて邪魔にならない短剣で良いだろう。

 黒檀は斥候として、短剣と投げナイフが主武器だ。それ以上重い武器を持たせる気がないので、今のままで良い。

 だけど紫苑は俺と同じで、予備の武器は接近戦で弓を使えない場合の主武器となる。その場合、短剣ではリーチが短いと感じる可能性が高い。


「前は体の大きさ的に短剣が丁度良かったけど、今はもう、普通の剣でも持てるもんな。どっちでも、紫苑の使いやすい方を選んでいいぞ?」

 俺がそう言うと、紫苑はしばらく首を傾げて、腕を組んで悩む様子を見せた。アルドさんが片手剣をいつくかまとめて持ってきたところで、そちらに顔を向ける。

「紫苑も試しに持ってみるか?」

 俺が問うと紫苑は頷いて、俺と一緒に片手剣を選び始めた。

 そして最終的に青藍だけじゃなく、俺と紫苑も片手剣も購入した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る