第42話 春休み開始と8層の様子見
春休みに入った。前世の記憶が戻ってから、もう二年になる訳だ。
春の始めに魔法耐性スキルを揃え、ある程度レベルも上げた。
今日はいよいよ8層に降りてみる。
ここまでで俺のレベルは、基礎23、人形使い23、身体強化23、知力強化23、記憶力強化23、痛覚耐性22、精神力強化22、精霊召喚21、槍術21、剛体20、体力増強20、気配察知19、危険予測19、氣力増強18、魔力増強17、俯瞰16、投擲15、剣術9、魔法耐性8となった。
魔法耐性スキルは、別に魔法攻撃を受けなくてもレベルは上がるようだ。他のスキルもそうだよな。特に使わなくても順調に上がっている。
青藍は基礎23、初期スキル(自動修復、自律行動、学習知能)23、身体強化23、剛体19、盾術18、剣術17、氣力増強16、投擲14、知力強化11、記憶力強化10、魔法耐性8。
専用スキルは硬質化17。強化は筋力+1、素早さ+3。
紅は基礎23、初期スキル(自動修復、自律行動、学習知能)23、身体強化23、剛体18。槍術16、氣力増強15、投擲13、知力強化10、記憶力強化9、剣術8、魔法耐性7。
専用スキルは硬質化16。強化は素早さ+4。
紫苑は基礎23、初期スキル(自動修復、自律行動、学習知能)23、身体強化23、剛体18、弓術18、氣力増強15、投擲12、知力強化10、記憶力強化9、気配察知7、俯瞰7、剣術7、魔法耐性7。
専用スキルは硬質化15。強化は知力+2、器用さ+2。
山吹は基礎19、初期スキル(自動修復、自律行動、学習知能)19、身体強化19、剛体18、氣力増強15、斧術15、投擲12、知力強化11、記憶力強化10、魔法耐性6。
専用スキルは硬質化14。強化は筋力+4。
黒檀は基礎10、初期スキル(自動修復、自律行動、学習知能)10、身体強化10、剛体9、氣力増強9、投擲9、知力強化8、記憶力強化8、罠感知7、罠解除7、鍵開け7、縄術6、隠密6、消音6、消臭6、登攀5、剣術5、魔法耐性5。
専用スキルは硬質化9。強化は素早さ+1、器用さ+1。
こうして並べてみると、人形達がかなり成長してきていると実感できる。一番レベルの高い3人は全長1メートル40センチまで育っている。
硬質化スキルの影響で、見た目がどんどん黒銀の金属っぽい質感へと変化していってる。元々木製でも問題なく動いていたから特に心配していなかったけど、金属に変化していっても、稼働にはなんら問題ないようだ。
炎珠が基礎21、火(+風)属性。現在は火の矢の姿をしている。
覚えている魔法は「ファイヤーボール」「ファイヤーバレット」「ファイヤージャベリン」「ファイヤーアロー」。
石躁が基礎19、石+土属性。現在は石の檻が半分ほど土に埋まった姿をしている。
覚えている魔法は「ストーンウォール」「石柱撃」「石の檻」「土操作」。
花琳が基礎10、緑属性。現在は葉が茂り花も咲いた木の枝に緑の蔦が絡まった姿をしている。
覚えている魔法は「蔦の戒め」「森の癒し」「木の癒し」「緑草の安らぎ」「治癒の緑花」「治癒の緑花畑」。
精霊ではまず石躁に、以前から覚えさせたいと思っていた「土操作」を、新たに習得させた。
イヌだと半端な深さの落とし穴は爪で登ってきそうだと後回しにしていたのだけど、ヒツジなら四肢が蹄なので登れないだろうという判断からだ。
これでうまくすれば2、3匹まとめて、落とし穴に嵌められるかもしれない。
可琳には「木の癒し」「緑草の安らぎ」「治癒の緑花」「治癒の緑花畑」という新しい4つの魔法を覚えてもらった。
「木の癒し」は単体の氣力回復魔法だ。「森の癒し」が範囲でこちらは単体。状況によって使い分けたいので両方を取得した。
「緑草の安らぎ」は単体の体力回復魔法だ。
氣力回復と違って単体のみ取得した。体力回復を必要とするのが俺一人だけだからだ。
(人形は疲労がないし、精霊は実体がない)
範囲より単体の方が、個人への効果は大きいし魔力効率も良いので、俺にしか使わないとわかっているなら単体の方が良い。
3つ目の「治癒の緑花」は単体の怪我回復、そして4つ目の「治癒の緑花畑」は範囲指定の怪我回復の魔法だ。
人形の破損も魔法でなら回復ができるので、こちらは単体と範囲の両方を取得した。
花琳には一気にたくさんの魔法を覚えてもらったな。魔法耐性を買い揃えた後で、懐にちょっと余裕ができたので、どうせいずれは必要になるからと買い揃えてしまったのだ。
8層のフィールドも、6、7層と変わらない草原だった。
たまにある木に生っている果物は、無花果のようだ。
(うーん、残念。俺、無花果はあんまり好きじゃない……)
でも確か、母や姉は好物だったはずだから、いくつかお土産に持って帰ろうか。
俺が好きな果物は、みかんやバナナ、メロン、梨、さくらんぼとかだ。9層の果物はなんだろう。好物だったら嬉しいのだけど。
(それはともかく、始めるか)
レベルの上がった気配察知で慎重に、3匹だけの群れを探しながら草原を歩く。他の群れが近くにいないかも見極めて、ついに初のヒツジ戦だ。
見つけたヒツジの群れは丁度3匹で、のんびりと草原の草を食んでいた。
体毛は白で、大きさは3匹とも同じくらいだ。一般的な羊と変わらない見た目だと思う。7層のイヌよりは大きい。
ヒツジには斥候役がいないのか、今のところ、こちらに気づく様子はない。
「石躁召喚、土操作でヒツジ達の背後に落とし穴を作ってくれ。魔力量は半分くらいで。紫苑と黒檀は、落とし穴ができるのを確認してから、こちら側から遠距離攻撃でヒツジを追い立ててくれ。……みんな、行くぞ!」
小声で指示を出す。そして俺の合図で一斉に動き出す。
「メェッ!?」「メェェ!!」
「! いいぞ、2匹落ちた!」
誘導がうまくいって、落とし穴にヒツジが2匹落ちた。すぐに動けるのはの残り1匹だけ。初戦として理想的な状態だ。
穴に落ちずに1匹だけ残ったヒツジが、雷撃魔法を使ってきた。
バチバチと放電する青白く丸い電撃が作成され、ヒツジの頭上の空中で大きくなっていく。そして野球ボールより大きくなった辺りで、こちらに向かって放たれた。
全員咄嗟に散開して魔法を避ける。単体で1撃だけの攻撃だったから避けられたけど、複数から同時に魔法を放たれていたら危なかったかもしれない。
「全員攻撃!」
次の魔法を放たれる前に走って距離を詰める。
「ぅわばばばばっ」
真っ先にヒツジに槍を突き立てたところ、俺の体を電気の強い衝撃が襲った。
ビリビリとした強い痺れのせいで、殆ど動けなくなってしまう。
もどかしく思いながらもうまく動かない指をゆっくり動かして、なんとか槍から手を離した。ヒツジに刺さったままの槍を抜くのは無理だった。体に力が入らない。
(魔法を使ってる様子もなかったのにっ)
どうやらこのヒツジ、普段から羊毛部分に電気を帯びているらしい。
(どうしたらいい?)
俺はヒツジから距離を取って、予備武器の短剣を引き抜く。
だけどヒツジと接触したら、また先ほどと同じように感電してしまう。そう躊躇っていると、俺以外が普通に動いて戦闘を続けているのに気づいた。
「え!? みんな平気なのか!?」
遠距離で戦っている紫苑と黒檀だけじゃなく、近距離で戦っているメンバーも、支障なく動けているように見える。ヒツジの帯電の影響が、まったくないとは思えないのだけど……。
(どうして……って、あっ!? 痛覚がないからか!?)
原因らしきものに思い当たる。
普通だと感電して、痛みと痺れに動きが止められてしまうけど、人形には痛覚がないので、痺れた状態でも動きにさほど支障が出ないで済んでいるのか。
現に彼らは各々の武器を振るって、問題なく最初のヒツジを倒してしまった。
「おお……」
続いて落とし穴に落ちたヒツジ2匹を、穴の淵に立って囲むように配置し、それぞれ武器を振り下ろす。
俺も透明になって消えていくヒツジから槍を取り戻して、慌てて穴に駆け寄った。
落とし穴は、深さが1.5メートルくらいで、広さはヒツジが2、3匹くらい入るくらいの大きさで開けられていた。
石躁の土操作の魔法は、魔力の込め具合によって操作できる土の量が異なる。今回は半分の量の魔力を込めてもらった。40分に一度は召喚できる程度の魔力量だ。
石躁はもう時間切れで帰還しているが、土を避けて作った落とし穴は、そのまま維持されてる。
これでヒツジが飛び出してくるようなら、穴の深さをもっと深くして調整しないといけなかったが、幸いヒツジが穴を飛び出してくる様子はない。
俺も穴の淵で槍を構えたが、攻撃するとまた電気で痺れるかもしれない。俺がそう躊躇している間に、人形達がどんどんヒツジに攻撃を加えて、的確に傷を負わせていく。
穴の中からヒツジ達が雷撃魔法を使ってきたが、全員穴の淵から少し下がるだけでさっと躱した。
一度放った魔法は途中で進路を変えて曲げられないから、穴に落ちたヒツジの魔法なら進路が予測しやすく、簡単に避けられるようだ。
(ああ、これなら大丈夫そうだな)
俺が手出しせず見守る中で、人形達は本当に彼らだけでヒツジの群れ3匹を倒し切った。
石躁の作った落とし穴は、放置しておいても数時間で元に戻るだろう。ダンジョンには復元力があるから、木から果物を収穫しても、次の日にはまた生っていたりする。
ヒツジのドロップアイテムは、コアクリスタルと羊肉だった。
一番身長のある俺が落とし穴の底まで降りて、ドロップアイテムを拾い集める。その後紅に槍の柄の方を差し出され、柄に捕まって引っ張り上げてもらって、穴を登るのを手助けしてもらった。
「ヒツジ相手でもやっていけそうかな?」
近接で戦った面子に調子は大丈夫か改めて聞いてみるが、全員問題なさそうだ。
ヒツジの帯電は、人形には本当に効かないようだ。
(まさか人形が帯電してる相手にも怯まず戦えるなんてな)
思わぬ利点が判明した。これなら俺が無理に前衛で頑張る必要もない。
人形がちんまりと小さくて、あまり頼りにならなくて、守ってもらおうと思っていたはずなのに、逆に「俺が彼らを守らなければ」と思った当時を思い出す。
あの日々を経て、ついに俺を守って戦えるくらいに、人形は強くなってくれたのだ。なんとも感慨深い。
(ここで予定通り、俺は後衛に下がろう)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます