第20話 精霊カスタマイズと魔法の属性

 サモナースキルを入手して精霊を新たな戦力とする。そう決めたのはいいが、サモナーはルールが独特で理解が難しそうな仕組みだった。

 そこでお盆のあと、海嗣兄から送ってもらったURLなどを参考に、ネットで下調べしてみる事にした。

 以前サモナーについて調べた時は、表面上の情報をさらっとなぞっただけだったから、本格的に調べるのはこれが初めてだ。



「えーっと、まずは属性の区分……?」

 カスタマイズされた精霊の一例と、その召喚にかかる魔力のコストの比例が載っているサイトだった。

 海嗣兄が例として出していた「熱と氷を同時に覚えさせた精霊」が「2種混合」で、結果として、「温度を操る精霊」として成立している例。

「炎」「熱」「風」「光」など「4種混合」で「太陽の精霊」として成立はするものの、召喚魔力のコストが非常に高くなる例など。


 基本的に「単一属性」の精霊が、もっとも召喚の際に魔力を消費しないコストの良い精霊であり、混合種類が増えていくにつれて、コストは重くなっていく。

 ただ、難しいのが「関連属性」だ。

 相性の良い属性同士なら、一緒に覚えさせてもそこまでコストは重くならず、逆に相性の悪い属性を一緒くたに覚えさせると、非常にコストが重くなる。

 これは召喚にかかる魔力の量だけでなく、精霊が使う魔法の効果にまで、影響を及ぼすという。

 召喚と魔法、両方のコストを良くしようと思うなら、極力、単一属性で揃えた方が良い。


 ただし魔法によっては、ひとつの魔法で複数の属性を持つものが存在する。

 例えば、「空を飛びたい」という目的をサモナーが果たす場合、精霊に「飛翔魔法」や「浮遊魔法」を覚えさせないといけないのだが、このふたつの魔法、実は両方とも「風属性」と「重力属性」の二重属性なのだそうだ。

 飛翔魔法は風属性が強めで、浮遊魔法は重力属性の方が強い。

 空を飛ぶ為の精霊を作る。属性は「風」と「重力」の二種混合だ。そこまでは良い。

 だが、そこで更に「同じ重力魔法だから」という理由で「グラビトン」のような、重力の圧による攻撃魔法などを覚えさせてしまうと、一気にコストが重くなるという。


「ええっ、同じ属性でも、相性が悪いのがあるんだ……」

 これには困惑するしかない。調べれば調べる程、訳が分からなくなる。

(飛ぶと浮くに特化した精霊だったのに、加重魔法を加えられて、整合性が取れなくなったって事か?)

 属性さえ同じならどの魔法を覚えさせても良いという訳ではないのが、精霊カスタマイズを更に複雑にしている。

 基本、単一属性なら相性は悪くないとなっているので、俺も最初はまず、1体一属性に絞って魔法を覚えさせていくべきだろう。

 それかサイトの例をそのままコピーして、他のものを一切覚えさせないか。




 さて、精霊を育てるのに絶対に必要なのは、魔法のスクロールである。

 どの魔法を覚えさせるかによって、どんな属性の精霊となるか決まっていくのだ。

 ネットの説明によれば、自分の成長させたい方向に魔法を覚えさせていると、その時々でその属性の魔法っぽい見た目に変化するとあった。

 つまり、サモナーとなるには、大前提のサモナースキルのスクロールと、その他に欲しい魔法のスクロールの両方を、買い揃えないといけない。

(またお金を貯めないとな……)


 仲間が増えるどうしても、戦えるよう強化しなければならない問題が付きまとう。

 もしも他人とパーティを組めば、その問題は各自で対応するから、金銭的な負担は分散されるのだろう。

 だがその分、ドロップアイテムの分け前も分散される。

 どちらが効率良いのかはわからないが、少なくとも俺は望んでソロをやっているのだし、ソロを続けるのに必要な投資は惜しむべきじゃない。

 人形も精霊も、手をかけて育てれば、ちゃんとそれに応えてくれるのだから。



「俺が欲しいのは、攻撃魔法か防御魔法だよな」

(攻撃なら火属性がわかりやすくて、防御なら地属性がわかりやすいかな?)

 そう思って調べてみると、地属性にはある問題があった。

「……地属性でひとまとまりになってないな」

 土・石・砂・泥・植物の緑魔法などなど……実は地属性というのは、たくさんの複数属性の集まりで成り立っていた。

 考えてみれば、大地にあるものを全部まとめてひとつの属性に押し込むのが無理があるのか。

 特に植物を使った「緑魔法」は、回復・攻撃・支援・阻害など、魔法の種類も多彩で、もうそれだけでひとつの属性であって、他とはまったくの別系統と考えた方が良さそうだ。

 土と石はまだ、ひとまとめにしても相性は悪くないが、砂は石と風の二重属性、泥は土と水の二重属性なので、場合によっては他の属性との相性が悪くなる。


 防御に使いたい「ストーンウォール」は石の単一属性。攻撃に使いたい「ファイヤーボール」や「ファイヤーバレット」などは、火が主な属性で、魔法を敵に飛ばす補助に風を使った複合属性だった。

 つまり、石と火(+風)を一緒に覚えさせるのは、かなり相性が悪い。最低限、防御の石と攻撃の火とで分けるべきだろう。

 石での攻撃だって「ストーンバレット」があるし、火で防御にも「ファイヤーウォール」がある。

 ただ、石の散弾だと物理攻撃に近いし、火の壁だと一瞬はすごく熱いものの、火でできた壁なので、すぐ通り抜けられるという性質を持っている訳で。

 その辺りを考えると、攻撃用の火(+風)の精霊と、防御用の石の精霊で、2体別々の属性に分けた方が無難だろう。

 レベル1で1体、レベル11で2体なので、2体目との契約まではそんなに苦労せず、レベル上げもできるだろうし。

 いずれ、回復系の魔法が使える精霊とか、支援系の魔法が使える精霊も欲しいけれど、まず欲しいのは攻撃魔法と防御魔法だ。


「よし、最初の1体は火の精霊として育てて、次は石の精霊として育てよう」

 俺はそう、今後の方針を固めた。

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