名砲ブリキトース
「大名左遷(岡崎守恭著)」という本を読んでいたら、江戸時代の大名植村家に伝わる大砲「ブリキトース」のエピソードが出てきた。
ブリキトースは徳川家康が大坂城を攻めるためにオランダから購入した大砲で、徳川家の古い家臣(安祥譜代)である植村家に六門が預けられていた。名前はブリキ(鉄の薄板)を徹すというダジャレ的なものと言われている。なんとなく信長の鉄甲船を意識している感じがする。
このブリキトースが大坂城陥落に役立っただけじゃなくて、248年後の幕末にも活躍している。尊皇攘夷派の志士の集団である「天誅組」が大義名分を失って暴徒となり植村家の高取城に襲いかかってきた時、ブリキトースが火を吹き、轟音で天誅組を追い払ったという。
実は高取藩はブリキトースとは別に新しいホーイッスル砲を二門所有していて、天誅組に発射されたのはホーイッスル砲の方じゃないかとも言うが、この事例から「音」だけの働きなら二世紀以上経っている大砲でも活躍できた可能性が僅かに見えてくる。
創作において名剣や名馬、名槍などは良く出てくる反面、名銃や名砲となると中々見かけないように思う。操作する人間の技量によって性能が映える前者と、構造で威力の決まっている後者の違いかもしれない。そのため、名弓は中間に来るか。
現実に名のある大砲がないかと言えば、ウルバンの大砲やモンス・メグ、国崩し(ありかな?)などが思いつく。中世の大砲は国王権力による数点ものなので、それなりに名前をつけられていることが多いはずである(残念ながら名前を収集していないが、お城の写真集で展示されている大砲の名前が載っているのをみた記憶もある)。
これらの名称資源を活用するのにブリキトース的ないわくや音要素の強調が使えないかと思った。自分が知らないだけで、お城擬人化ゲームなどで活用されているのだろうか?
参考文献:文藝春秋 岡崎守恭 大名左遷 2022年
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