異世界で衝突する正義

 はてな匿名ダイアリーで「巷に溢れかえる幼稚なマウント系創作物が嫌いすぎるhttps://anond.hatelabo.jp/20230315191109」という書き込みを読んだ。言いたいことは理解しつつ、自分も作品でやっていそうと心配になってしまった次第だ。

 より「遅れた」異世界にやってきた主人公は自分の倫理観で異世界の人間を非倫理的だと断じてしまいがち。それをマウントと受け取られるのもマズければ、郷に入らば郷に従えで異世界の倫理観に染まってしまうのもマズい(世の中の作品には女奴隷を買っている主人公などもいるが)。ダブルバインドに陥ってしまう可能性がある。

 結局価値観が多様すぎる現在では読者を決めてそれ以外には「not for you」と突っぱねるしかないのかもしれないな。八方美人にして誰にも読まれないのでは結局作品自体がないのと同じ?(バズこそが正義の社会がいちばん息苦しいよ……)


 この悩みに興味深い解決策を出している作品として漫画の「創世のタイガ(森恒二)」のことを思い出した(ネタバレ注意)。

 現代からタイムスリップした主人公側がホモ・サピエンスにつく一方、第二次世界大戦からタイムスリップしたナチスの将兵がネアンデルタール人についている作品だ。

 過去世界にとってはどちらも未来の倫理観をもった人間であるが、現代人からみればナチスの倫理観が間違っていることは自明である。(先史時代からみた)未来の倫理観がそれだけで正しいことを意味しないとナチスのタイムトラベラーが示しつつも、一つの疑問を投げかける。

「もし、異世界転生した我々が、現代より未来からタイムスリップしてきた連中と異世界でかち合ったとしたら、彼らの倫理観に屈服するべきか?」


 未来は現代よりも倫理的に優れた社会かもしれない。あるいはディストピアとしか言えない社会かもしれない。さぁ、どっちかにゃ?

 というわけでこれを突き詰めると重厚なテーマの作品になってしまいそうだ。


 あと、倫理観の変動があまりに激しい社会では日常的なコミュニティから出た時に、未来にタイムスリップした気分になる現代人も多かろうな。

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