パナマ運河を核ミサイルで破壊した時の海流と気候の変化について

「体感!海底凸凹地図」を読んだ。この本ではパナマ地峡が閉じたことで地球の気候に起こった変化が図解されていた。

 南北アメリカ大陸がつながったことで太平洋の東赤道海域では貿易風が強まり深層から低温の海水が上がってくるようになり寒冷化が進んだ、またメキシコ湾流が強化されて北大西洋に熱や塩分、水蒸気を供給するようになったとのこと。


 たとえば核戦争によってパナマ地峡がパナマ海峡になった作品として佐藤大輔氏の「遙かなる星」を思いつくが、あの世界において舞い上がった塵が太陽光を遮り地球が寒冷化する核の冬が収まったあとも、パナマ海峡が誕生したことにより海流が変化(先祖返り)して不可逆的な気候変動が続いたはずである。北大西洋海流(暖流)を失ったならば「遙かなる星」世界のヨーロッパは復活も絶望的と言える(ソ連も有人火星探査どころじゃないだろ)。

 また、南極が他の大陸と分裂することで南極を周回する海流が誕生する影響も大きい。この海流が熱を閉じ込めることで南極大陸の寒冷化が進み、氷床が発達、海水面が低下する現象も起こる。


 逆に考えれば大陸の配置によって世界の気候をある程度操作することが可能である。パナマ地峡を開いたり、南極と南米の間にあるドレーク海峡を閉じたり、小惑星衝突・火山噴火など「少しの嘘」で見慣れた世界を別の世界に変えてしまえる急所が地球にも存在する。いまは極寒の南極大陸だって夏の間は前近代的な装備の人間でも生活可能な物語の舞台にできる可能性がある。

 これを創作に活用しない手はないと思うのだが、連鎖現象で思わぬ変化まで起こる時に、ちゃんと全てを織り込むのは困難だろう。真面目なツッコミを恐れるとやりにくい改変でもあるかもしれない――スーパーコンピューターでシミュレーションできれば?

 一つの逃げ道は与えられた条件によって環境が安定する前の「非定常状態」だと説明することだな。これぞ悪いテクニック。

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