賜姓、偏諱授与、通字、推しマーク

 歴史上の人物の関係を分析する時に名前が情報源になることがある。

 古くは天皇から姓を与えられる賜姓などがあり、時代が下ると戦国武将が家臣に自分と同じ名字を名乗る名誉を与えるなどの事例もある。あるいは偏諱へんき授与として自らの名前から一字を与えて改名したり子供の名前をつけることを許したりする(例えば織田信長からの松平信康、長宗我部信親。実質的には強制の場合も)。

 そして通字とおりじとして一族の慣習で名前に使う字を決めていたりもする(例えば足利氏の「義」、徳川将軍家の「家」)。


 これらを創作に実装できれば家系図を描かなくても人間関係をさりげなく伝えることができるのではないかと考えた。漢字で二文字以上の名前を付ける文化に設定すれば歴史時代の日本と同じに運用できる。

 ヨーロッパっぽい名前では難しいかもしれない。複数の要素を繋げた名前にすればできないことはない(ドイツ語の名字もそういうものが多いと聞く。下の名前はそうじゃないけど)。独自言語による命名の場合は通字・偏諱くらいあった方が理解を助けてくれそうだ。

 栄誉となる名字を名乗らせる例はヨーロッパにもあったはず。そもそも貴族としての家を建てさせるのが、それに当たるか。ただ特定君主との関連性を示すには情報が足らない。

 名字の間に君主の氏か名を挟むなどの運用でカバーするアイデアはある。いっそイニシャルや記号にしてしまえば――と考えていて現代におけるVTuberの推しマークがそれに近いことに気づいた。


 推しマークの場合はファンの側が自発的につける点で異なる(自分の推しマークをつけて変な発言をしないでくれと注意する人はいる)けれども、名前で繋がりを表現するという意味で、戦国時代から変わらない心性が現代に続いている可能性を感じた。絵文字を使うから名前の文字よりも家紋を借りるのに近いかもな。

 複数の推しマークの並び順は偏諱を名前の上にするか下にするかみたいな序列化された関係性も示せる。やっぱVTuberは戦国武将だわ。

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