第6話やぶなりの日 -2-

「やぶなりの日ってなあに?」

「何だろうなぁ」


雪の手を引き、新しい道を行く。

草が全て刈り取られて、野原だった場所に道ができていた。見通しがよいので、道に迷う心配はなかった。遠目からでも赤いブランコがよく見える。公園はすぐそこだ。


トントカトントカトントントン

トントカトントカトントントン

雪がリズミカルに何か口ずさみ始めた。雪は歌が好きで、普段からよく歌を歌っている。だから気にもしなかった。

そのうち雪がぼくの手を離して走り出した時も、よっぽどブランコに早く乗りたいのだろうとしか思わなかった。


トントカトントカトントントン

トントカトントカトントントン

歌いながら走って行く雪が、公園の前を通り過ぎたとき、ぼくはようやく、おかしいぞと首をひねった。


「雪、どこにいくの。止まって」


雪はどんどん走って行く。新しい道をひたすらまっすぐまっすぐ走って行く。先には真っ白な駅舎が見える。

一生懸命追いかけているのに、ぼくの足は、自分でも嫌になるくらい遅かった。5才の妹に追いつけない。


「雪、まってくれ」


雪は、できたばかりの真っ白な駅舎にはいっていった。

ぼくもようやくたどり着く。新しいためか白すぎて、目がちかちかするくらいの駅舎に入る。汗がぼたぼたとたれて、真新しい駅舎の床を濡らす。

息を整えながらあたりを見るも、雪の姿はどこにも見えない。

それどころか、駅員も誰もいない。電光掲示板にも何も表示されていない。

できたばかりで、まだ営業前なのだろうか。


とにかく雪を探さなければ。この駅に入ったことは確かなのだ。

頭の中まで真っ白くなりそうだと思いながら、誰もいない自動改札を通り抜け、ホームへの階段を上った。


ホームには電車がいて、ドアを開いて停車していた。水色の車体に白いラインの電車。4両編成だ。駅員はいない。雪もいない

何かおかしいけれど、今はとにかく雪を探さなければならない。

雪はどこだ?電車に乗るとき、雪はいつも運転席からの眺めを見たがる。

いるとしたら先頭車両だ。


どっちが先頭車両なんだ?もつれる足を引きずりながら走る。

ぼくはどうしてこんなにどんくさいんだ!

倒れ込みそうな態勢で走りまわり、ようやく雪を発見した。

雪は誰もいない運転席の窓にかじりついていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

じいちゃんちは妖怪屋敷 あじみうお @ajimiuo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ