泣き虫たちの危機(後編)
ひえええ、何だよアレ。いや、メビウスには違いないけど強さがハンパない
光と闇の遠距離魔法を自在に操り、中距離では鎖が無双してる。近接戦闘でも挑もうものなら、剣で一刀両断だ
アレって、マザーエーテルが持ってた剣だよねえ。それじゃあ、あの威力も頷ける
そんな中でも奮闘しているのがPOWER OF OLDの爺ちゃんたち。改めて見ても、あの4人の連携はホントにスゴい
遠距離からは、モトナリさんの弓がムダ無く飛んで行く。どうやらプレイヤーさんたちで弓隊を結成したようで、皆んなで息を合わせての攻撃だ
メビウスから魔法が飛んで来ると、HPの高い盾職の人たちが弓隊を守ってる。だけどねえ、モトナリさんは盾職の人たちより前に出て射ち続けてるんですよ
うお! 今の矢は当たったとたん爆発したよ。これで
近接組はメビウスのパリィに苦労しているけど、ちょびっとずつダメージを重ねてる。その中でも目立っているのは、火縄銃を携えたナオイエ爺ちゃん
こちらは銃撃版の射手の体術で、スゴいアクロバティックにグイグイ攻めてる。その変則的な動きで、中近距離を行ったり来たりと目まぐるしい
そしてナオイエ爺ちゃんが下がると出てくるのは、サオトメ、ツネヒサの両爺ちゃんたち。この二人は麒麟を模した霊機獣なんてモノに乗ってるのだ
ツネヒサ爺ちゃんは回避以外ほとんど動かず、霊機獣の特性である風属性の攻撃を放ってる。ダメージを期待するものではなく、メビウスが動くのに邪魔になりそうな所へ撃ち込み牽制をしているようだ
そして、もっとスゴいのがサオトメ爺ちゃん
炎をまとった霊機獣『
『ほう。汝、見えるものでも変わったか?』
「おかげさまでの……と、言うとでも思ったか!」
まるで水が流れる様な、ゆっくりとした動き。そして空気でも切るかの様な、軽く見える片手剣の振り下ろし
目で追うのは難しくない。それなのにメビウスのパリィを掻い潜り、確実にダメージを与えている
そして、何と言ってもプレイヤーの皆さま。『戦いは数だよ』とはよく言ったものである
どんなに強くてもメビウスは単体。数で勝る、我々プレイヤーたちが徐々にではあるが押し始めているのだ
この調子で行けば、最終的に勝つのは我々プレイヤーだと思う。メビウスさえ倒せば、後は普通のアンデッドたちだからね
『
……もう、やだ! メビウスのやつめ、ジャックたちの
増えたのは2体。少ないように思えるけど、ラスボス級の能力を誇るメビウスである
そりゃもう、こちらの戦線は崩壊待ったなしだ
『見ぃつけたあぁ』
うへえ。粘着質な声がしたと思ったら、メビウスがわたしを
ヤバい。アレが本体か分身かは分からないけど、完全にロックオンされた
……これは、逃げだな
『どぉこえぇ行こうというのだあぁ』
「ぎゃあ!」
他のプレイヤーさんたちには残った2体を向かわせて、あんたはこちらに一直線かよ。逃げる間もなく捕まった
仕方ないなあ、もう!
『どうした、狂戦士にはならぬのか?』
数合、武器を合わせた結果のセリフがこれだよ。分かっていたけど、もはや通常状態では対抗出来ません
それに
味方にも襲いかかるってんだからね。ラスボス+狂戦士って、もう無茶苦茶になるじゃない
『つまらぬ』
わたしの気も知らないで勝手な事を言ってんじゃないよ、まったく。でもこれは好機かも
慣れない武器で苦戦してるし、態勢を立て直せるかな
『ならば、もう終わらせるか。そちらの敗北でな、
うぎゃあ! 性能は劣るけど、分身の数は多い朧舞を使いやがった。それだけじゃなく、何やら繰り出そうと構えを取るメビウス
なるほど、邪魔をさせないための分身たちか。幻想舞で出てきた2体の分身も、朧舞を使い同じ構えをしてる
でも、どんな大技だろうと本拠地の砦を陥落させられない限り負けはないはず……ってまさか!
そうだった、マザーエーテルはこちらの本拠地まで攻め込んで来たんだった。正面衝突して、わたしのヨロイと槍は粉砕されたんだけど、あっさりと引き揚げて行った
今思えば、あれってゲームオーバーを避けるためだったんじゃなかろうか……だけど、メビウスのやつは?
『これで終わりだ。
な、何? あのキラキラしたの。星? え、あの楕円形のヤツって銀河!?
周りでキラキラと輝く星たちが、銀河に吸い込まれて行くエフェクトが美しい。もうこの演出と名前で想像つくけど、ものすんごい爆発系の魔法だと思う
マズイよ、これは。被害を最小限にするため、こちらも最大火力を叩き込むしかない
「
空を切り裂く、極太ビームが銀河へと吸い込まれる。だけど、それだけ
わたしの最大火力は宇宙へと消え去ってしまった。あきらめきれずに、もう1発
結果は同じ。プレイヤーの皆さんも頑張ってはいるが、相殺には至っていない
やはり、根本的に火力が足りてないみたい
脳裏に浮かぶは『自爆』の2文字。おそらく、それならば消せるかもしれない
ただし、メビウス本体を倒しきらないと、もう後が無い。ラスボス補正がどの程度かわからないが、自爆に耐えても不思議じゃない
どんどん膨らんでいく銀河の魔法。残された時間は、もう少ないだろう
もう、悩んでいる暇は無い
「奥の手を見せる時は、勝利を確実にした時。さすがツネヒサ爺ちゃん、良い事を言うね」
「え?」
背後から聞こえる声に驚いてしまった。だって、その声は
「や、初めましてだね。どうもどうも」
「お、おお!? ホントにわたしだ!」
話しには聞いてたけど、ホントに居たんだ。わたしの姿で、お助けキャラプレイしてる人だよね
褐色の肌色だったり髪が白っぽかったり、角が2本生えてたりと細部に違いは有るが、紛れもなくわたしである
では、言いたかった事をば1つ
「ミニスカボンテージ衣装は禁止!」
「おおう、そうきたか」
今は戦闘中なのでヨロイ姿だけど……って、それもわたしのに似てるなあ。それにしても、いつの間に背後に現れたんだか
おっと、それよりもこのタイミングで挨拶とかどうなの、まったく
「今はそれどころじゃないんだなあ。アレを何とかしなくちゃ」
「だから、もう手は打ったよ。自爆じゃ確実性に欠けるんでしょ?」
「ええ?」
─◆─ 上空 ─◆─
「お待たせしました。キラキラと──」
「──ザラザラの配達屋でございます。確認をお願いします」
「うむ」
「待ってました」
サーバーさえ跨いで荷物を届けてしてしまう配達屋プレイヤー、キラキラとザラザラである。配達するものは様々で、時にはプレイヤー自身も場所を選ばず運んでしまう
彼らをはるか上空で待っていたのは、金髪と黒髪の女性が2人
「確認した。で、この後も手伝ってくれるのだろう?」
有無は言わせぬという感じで確認を取る黒髪の女性
「追加料金は……まあ、いいですよ──」
「──アフターサービスと言うやつだな」
彼らもプレイヤーであるからには、イベントを楽しむ事を優先したのであろう。笑顔で応じている
「んじゃ、早速始めようぜ。時間はもう無いぜ」
金髪の女性が真下を指差す。そこには銀河のエフェクトが3つ有る
「さあ、祭りの時間だ!」
黒髪の
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