第35話 今後について
しかし、次に待っていたのがモレニ。アシィド目掛けて重力魔法を発動。アシィドの体を固定させ、一気に地面に落下させる。その位置は、詠唱が終わり発動待ちの4人が待つ場所。アシィド落下と同時に唱えた。
「強制転移!」
バリバリという音と激しい光が起こり、アシィドはどこかに消え去った。
「よし、成功だぞ!」
大いに喜ぶ冒険者たち。ゴンブトを引き連れて、他の冒険者たちも合流した。
「すげぇな、一発勝負でうまくいったな。で、どこに消えたんだ?」
ゴンブトが尋ねた。
強制転移を仕掛けた4人はそれぞれ答えた。
「さぁ?」
「どこか」
「あの辺」
「知らないっ」
ゴンブトがさらに尋ねる。
「いいのか、それで?」
「図書館で最近覚えたばかりだからな。どこに転移させるって目的地指定するのは、ほんの数分じゃ時間が足りぬよ」
ラドヤが答え、他の者も深くうなずいた。
「あのさ、ここの階層主権利条件って決めてないんだよ。あんたらで決めてくれ」
ゴンブトは、そう言って設計仕様書をラドヤに渡した。ラドヤは、そのままルコットに渡そうとした。
「いや、これは[サンピラー]が受け取るべき。私は手伝っただけ」
「ん~。そうか、では我々が受けよう」
ラドヤは宣言した。
「我々[サンピラー]が第27階層の階層主となった」
[サンピラー]の体が薄っすらと光った。ラドヤは、ズフィッチ・モレニ・ルイターを集め、第27階層に下りる前に話し合いを始めた。他冒険者たちは、静かに見ている。
しばらく話し込んでいる[サンピラー]たちは、その視線にようやく気付いた。そして、ラドヤが話し始めた。
「冒険者諸君よ、集まっているのでそのまま聞いてほしい。次の階層は、セーフエリアにする。小規模で作成するため、下り階段付近で待機してくれ」
[サンピラー]は、第27階層へ向かった。30分もしないうちに戻ってきて、急いでくるよう促される。
冒険者たちは階段を下り、第27階層に入った。これまでのセーフエリアに比べれば、広くなく必要最低限な宿泊施設、食堂、蘇生所、道具屋程度。また、以前と同様作業を任されたパペットが各施設に2体ずついる。
「あのクラウンがまた攻め込んでくるかと思い、この第27階層は凝った設備はない。ただ、アシィドや他のモンスターは侵入できないよう結界が張ってある。また、ラギン・イザベルもここには入れない。というよりも入らせない。これまでの動きが怪しすぎるからな。いくら地主とは言え、軽々しく各階層に入ってきて、その後にドラゴンが現れている。関連がないとは言い切れないし、セーフエリアで戦闘になってもこちらも困るからな」
またラドヤは続けて話しだした。
「本来なら、設計仕様書の盲点を見つけて転送装置を作りたかった。完成した階層に手が加えられないので第27階層から勝手に転送することも考えたが、転送先に何があるか分からないので断念した。やはり、まずは直近にある身の危険を回避することが重要だろうよ」
話を聞き終えた冒険者たちは、休息を取ることにした。冒険はしてきたが、巻き込まれる形が多すぎたので心身共に限界を超えていたため、1週間ほど、回復に時間を要した。
食堂に[サンピラー]が集まって、今後の対策を話し合っている。他の冒険者たちも食事を取っていた。 そこへ、トコピに連れられたリステアが[サンピラー]の元へ現れた。
「何用だね?」
「我々の話が参考になるか分からないが聞いてほしいことがある」
トコピが言った。二人は椅子に座り、リステアが話し始めた。
「わたしたちは、三年前、主要都市から遠く離れた山でラギンにあったことがあるの。今回と同じようにダンジョン階層主を決め、階層を作っていく。冒険者はギルドで募集され、参加した」
「本当かね?」
「えぇ。でも、以前は古龍のようなドラゴンは出てこず、ラギンとダンジョン内で出くわさなかったからどうして入ってきているのか分からなかった。それに、わたしとトコピは途中でダンジョンを離れてて、そのダンジョン入り口が塞がれて二度と入ることが出来なかった。この話は誰も信じてくれないしわたしとトコピは、それぞれで、どうしてダンジョンに入れなくなったのか、その後を調査していた。そして、今回のダンジョン探索依頼を知って、参加したの」
「前回は、何階層まであったのだ?」
「以前は10階層と聞いていたわ。でも、実際は分からない、戻ってきた冒険者に出会えなかった。すごく探したけど行方不明扱いになってて。だけど、ラギンは生きている。それって、変な話でしょ」
「あの横にいる女性もいたのか?」
「付き添いみたいな人でしょ?イザベルとかいう・・・」
小さな食堂で話しているので、周りの冒険者たちはこの話を聞き入っていた。そこへエリスが割って入ってきた。
「ちょっとリステア、あなたラギンについて何も知らないって言って[王室調査隊]には情報提供しなかったじゃない。何で今、この人たちには話すのよ」
「未確認なことをべらべら話すわけにはいかないでしょ。王室が絡むと、偽情報流布で民衆を扇動したとかで逮捕するじゃない」
「それは、国家転覆を目論む集団がいるからであって、今回の目的とは話が違う」
「さて、どうだか」
そこにラドヤが言う。
「その揉め事すら、首謀者の計画通りなのだろうな。ちょっとした火種が隠れ蓑になる。しかし、分からぬことがある。ラギンは階層を作らせ、その後どうしたいのか?」
それに対し、いろんな意見が飛び交った。しかし、所詮、憶測や推測でしかなく具体的な内容ではなかった。ごちゃごちゃと話し合っている中、今度はゴンブトが意見を言った。
「あのさ、大前提として、また古龍が出た時、どうするんだ?討伐するんだよな?」
エリスが発言した。
「仮説のラギンが古龍だとした場合、王室調査隊として、捕獲して取り調べる必要がある」
「あのばかデカイの捕まえるのか?どうやって運ぶんだ!」
「捕獲といっても、その場で捕まえて身動き取れないよう固定する」
「ロープ固定か?ハハッ、何言ってんだお前は」
「魔法による罠で痺れさせ固定する」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます