第11話 冒険者とサキュバス
リステアはイモウに聞いてみた。
「あのさ、設計仕様書の力を使えば、その意中のサキュバスに会話はできると思う。そこで、気持ちを聞いて判断してから、それから階層作成完了ってすれば、他冒険者には影響しないと思われるんだが、私の案を試してみるかい?」
「僕の思いのために、設計仕様書使ってしまうのはダメなんじゃないですか?」
「鼻エリアとか訳分からないのあったじゃない。あんなの作れるのなら、存在が異なる生き物の恋愛すら設計仕様書が介入できるかどうか見てみたい。アンタが真剣なら、その思いを階層主としてやってみろ!」
「・・・はい」
酔って目の座っているリステアの迫力に押され、イモウはリステアの案を参考にして第9階層を任されることになった。
リステアから設計仕様書を受け取ると、イモウの体が薄っすら光った。
「あ、酔いが覚めた。もう設計作業をしろってことでしょう」
すくっと立ち上がるとイモウは、走って第9階層への階段に行き、下りていった。
まだ設計されていない階層。ただの空間で基本の広さ・高さが用意してある。設計仕様書を読み高さを宣言すると天井が高くなった。その逆を言えば、低くなるわけか。イモウは空間を歩き続け中心付近まで進んだ。
「さて、試してみるか」
設計仕様書のモンスター召喚・配置の項目を読み、目的の第6階層に残っているだろう大柄のサキュバスに交信を始める。
対象物が動いていなかったせいか、あっさり見つかり召喚が始まった。
設計仕様書の力により描かれた魔法陣が、大柄のサキュバスを目の前に呼び出した。
「誰だ、ワタシを呼び出したのは」
「えっと、ボクです」
「へ?アンタが召喚儀式をしたの?すぐ近くじゃないの、来いよ!」
「あのサキュバス暴走地帯に乗り込むには丹力が足りませんで・・・」
「口説いたくせに」
「口説いたというか、率直な意見を言葉にしたまでで、でも、久しぶりに会えて嬉しいです」
お互い惹かれあうのか、もじもじしだす。
サキュバスが言う。
「そのアンタが持っている本は気に食わない。ワタシらの自由を奪って、強制的に配置させられたり契約しないまま意味のない戦いをすることがある。他種族が適当に命を奪われている」
「これは、ダンジョンを設計するための仕様書と聞いている。その力を利用して、あなたと話がしたかった」
「勝手な欲だね」
「そうでもしないと、サキュバスであるあなたに会えないでしょ!」
「こっちが言ってることと、話がかみ合ってないんだが」
サキュバスは頭を抱え、イモウに尋ねた。
「ワタシに会うためだけに、呼び出したのか?」
「それだけじゃ収まらない。これほど一緒にいたいと思う気持ちになったことがない。だから、隣にいて欲しい」
「求婚か、それ?え~、そんなこと言い出されても、ワタシ悪魔だし、地上に行けるわけないだろ。それにこのダンジョンにずっと住むのはなんか違わねぇか?」
「そこで、この設計仕様書を力を使うのです。あなたをあえて人の大きさに縮め、名を与え、冒険者を装ってもらう」
「あ、無理だ。地上に出たらバレる、とても簡単にな。ワタシの本能ってやつが精気を吸いつくしたくなるから」
「おそらく名持ちになることで、知性・知力が数段上がるので、本能を抑え込むことができると思う。それに精気なら、ボクがいるじゃないか」
「・・・なかなか、あんた自身に酔いしれてるな。その本の力を使えば、アタシを名持ちより、人間にも出来るだろう?」
イモウは驚いた。考えもしなかったし、サキュバスの姿に惚れたからサイズ感を小さくすればどうにかいけるんじゃないかなとか、極めて甘い考えだった。
「あの~、人への転生って考えたりしますか?」
「ワタシは、サキュバスの中でも体が大きいから、魅了するには近づく場所も限られたりする。かと言って巨人族を前にすれば、若干小さ目であのパワーには劣る。中途半端で扱いづらさもワタシの中であるんだ」
「ボクがいるから、ボクにはあなたが必要なんだ」
「ワタシを何も知らないのに、よくもまぁそこまで言い切れるもんだね」
サキュバスも賭けである。使い勝手の悪い体長を変化させる手段、それが巡ってきた。寿命は縮むだろうが勝手に召喚され、冒険者に挑まれ命を落とすかもしれない場面が多すぎる。人に近い形になって地上でも行動ができるならば、精気をいかようにも吸えるだろう。イモウと合わなければ、吸い尽くせば、それも良し。悪魔的発想。
「・・・あんたが持つ本を試してみようか。ワタシの姿を人に近づけて、名前を付けて」
「あぁ、大事にするよ!」
「何言ってんの?」
イモウは、興奮を抑えきれず、設計仕様書の転生項目を念じ、創造した。大柄のサキュバスは光の繭に包まれ沈黙した。
「大丈夫ですか~?」
心配するイモウ。それから数時間、変化がなかったため、イモウは我慢できず、光の繭にそっと触れてみた。
ボゥッ!
触れた場所から燃えだした。あっという間に光の繭は激しい炎に包まれる。
「何だよ、これ!」
イモウは設計仕様書を広げ、階層中に水が吹き出すよう設計し消火活動を始める。程なくして、炎は消え白い煙と水により、周囲が見えなくなった。
「おーぃ、無事ですか~?」
イモウは、サキュバスの生存確認を始める。しかし、設計した消火活動用の水が吹き出し通路の壁代わりになって行く手を遮る。行ける道を探しながら進むと、倒れている姿があった。
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