第7話 欲を継続する階層主
第5階層での採掘中、ドワーフのモスモスは木片を発見した。
「おーぃ、板っぽいのが出てきたが、どうするよ~?砕くか、キレイに形を見てみるかぁ?」
[陽だまり]リーダー:カメロが言う。
「外側を掘ってみて取り出せそうなら、丸ごと板を取り出そう」
慎重に土を取り除いて、全体像が見えてきた。横幅30cmくらいの蓋付き木箱がだった。
「よーし、一旦通路まで持って行って、開けてみよう。ピレン、罠かかってないか調べてくれ」
「んぁ~、何十年振りだろうか罠調査」
興奮と加齢による手の震えが、周囲の緊張を高めたが罠はかかっておらず、そのままピレンが慎重に蓋を開けた。
中身は、金貨銀貨にあらゆる宝石が箱にぎっしり詰まっていた。
「やったぞ~!お宝だ~!」
小躍りしだす老人たち。その騒ぎを見て、俄然やる気を出す他冒険者たち。
「よーし、木片が重要みたいだぞ」
[タマハガネ]は、パーティ人数が多いせいもあってか無作為に掘り進め、無駄に疲労している中、長めの木片を発見することができた。リーダー:タマが叫ぶ。
「その場で、木片を砕いてみせろ!」
「了解!」
狭い穴に2人がかりで砕き始めた。大した時間かからず、木片がさらに砕け散った。その中から、大量の骨がこぼれ落ち、通路まで転がった所で骨が組み合わさり、スケルトンとして襲い掛かってきた。
「ずいぶん身長あるな。2mくらいか?よーし、まず骨盤砕け!再生に時間をかけさせろ、それから呪いを解け!」
手際よく行動に移している。大柄なメンバーが囮になってスケルトンと対峙し、その間に横から骨盤を割って下半身が耐えきれず崩れ落ちる。上半身だけになったスケルトンに背後から背骨や頸椎を狙って構造をズレさせそこから、解呪の魔法によりスケルトンを対処した。
その戦いをよそに、アルラムの元へ発掘した石を鑑定しに持ってくる冒険者たち。
「どうだ、これ貴重なやつだと思うんだが・・・」
「これねぇ~、似てるけど違うんだな~。安いけど対価払うよ」
アルラムはどんどん鑑定していくが、貴重で高価な素材が出てこない。それもそのはず、鑑定結果を誤魔化しているから。本物を偽物・類似物と言い、安く買う。後から、王都の街に行って高額で売る。鑑定ができない者は大損するようアルラムは初めから仕組んでいた。
しかし、全ての冒険者が無知な訳ではない。鑑定の列に並んでいる時、アルラムの査定に疑問を持った者はあえて小ぶりな石を出し、良い素材、価値ある物はしっかり懐に収めていた。
それから数日経ち、十分に鉱石等が集まった所で、アルラムが冒険者たちを集めた。
「あなた方に探掘をお願いしたが、ろくな素材が見つからない。時間もかかりすぎる。なので階層主権限により第6階層権利に該当者なしとして、次の階層主も私が引き継ぐ」
横暴な決定に、冒険者数名がアルラムを取り囲み設計仕様書を奪い取った。しかし、階層主に対する冒険者からの強引な権利はく奪は、設計仕様書自体が持つ階層主を守る効力により、冒険者数名は、その場で体が麻痺した。
「強引なことをするとね、設計仕様書の力が働くんだよ。では、私は第6階層作成の準備に取り掛かる」
そういうとアルラムは第6階層へ下りて行った。いろいろ言いたい事があった冒険者たちだが、このダンジョン内でのルールをまざまざと見せつけられ、休息のため、地上に戻った。
いつもの酒場で荒れる者も多かったが、賢い者たちは違った。この時間を利用して、第5階層で得た鉱石等を鑑定・加工して、自分たちの装備をより強固なものにすべく動いた。いつでもアルラムを討つために。
また例のごとく通達が来た。
「お待たせしました。第6階層というパラダイスが完成です」
どうにかして階層主権利を奪ってやろうと、冒険者たち力が入っていた。第6階層へ続く階段周辺に集まり、アルラムの説明を待った。
「ようこそ皆さん。次の階層はパラダイスですよ」
[ビッグトルク]のゴンブトが質問した。
「パラダイスとは、どういう意味だ?」
「欲望をさらけ出してください」
何、分からない言ってんだと文句を言いながら、階段を下りていく。
ダンジョン内に、鮮やかで発色の良い照明と色使い。第5階層で掘り出した魔法石を利用した照明と金属粉末を利用して、とても多彩な色が多く表現されているそうだ。しかし、見た目は歓楽街。
「第6階層は、歓楽街を作りました。サキュバスとインキュバスとの契約に成功し、命を奪わないよう約束を結んでおります。お店の規模や種類は様々あるので、皆さんで探索してください。次階層への権利決定条件は、どれだけ極上の体験をしたか。では、お楽しみください」
「何だ、その条件は!意味が分からないぞ!」
「淫魔は夢魔とも言われます。素晴らしい夢を見せてくれる事がどれだけ素晴らしいか体験して頂きたい。そして、その内容を私に教えて欲しい」
「その言ってる意味が分からないんだよ。ただのド変態ってことか?」
「挑発ありがとう。楽しんでください」
全く会話の意味が分からないまま、冒険者たちは広い通路を歩き出した。いくつかの細い道もあるようだが本当に歓楽街を作られている。ただし、飲み屋街と言った方が近いかもしれない。地上の酒場のように各地方や他国の料理を提供する店や小さな立ち飲み屋、高級クラブ、見た目年齢による差別化を図った店がある。若年、中年層に見た目を変えたり、熟した容姿で応対する飲み屋。それは、サキュバスに特化していた。
インキュバス専門店は、同じ見た目でも体形に配慮した店として複数用意してある。
冒険者たちは、次の階層主権利が不明なまま、この歓楽街を探索することにした。
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