第21話 姉さんの眼、そして真実が…
隆史は大学病院の手術室の前にいた……。
「どうですか……見えるように成りましたか…?」
隆史は真剣な表情で…先駆けて手術室から出て来た看護師に声を掛けた…。
「はい……手術は成功しました…。 まだ眠っておられますから…安静にしてあげてください。」
少し遅れてストレッチャーに乗せられた姉の梓に付き添うと…
「5~6時間は目が覚めないでしょう。 やるべき事はしましたので…あとは時間と共に眼は回復していきますよ。」
自信ありげに執刀医は言った。
隆史は頭を下げて礼を言った。
医師が言ったように梓は眠り続け…
付き添った隆史がウトウトし始めた夜中1時頃に梓は目を覚ました。
梓は…疲れているだろうと案じて、隆史を起こさなかった。
〔これで私の眼は…見えるようになるのか…
隆史に甘えてばかりで…良いのだろうか…
そうだ…眼が見えるようになったら…
隆史の望む事をしてあげよう…
それが、隆史への恩返しであり…
真里お母さん、極楽お父さん、そして孤児院の方々、
本当の父母に対する恩返しだと思って…。〕
梓はそのまま眠りに落ち…次に目が覚めたのは朝方で…
隆史が目を覚ました頃だった。
「梓姉さん…気分はどう……?
眼とか、頭とか…痛い所は無い……?」
梓
「うん…ずっと側(そば)に居てくれて、ありがとね。
痛い所は無いから安心して……。」
「もし…痛くしやがったら…あの医者、タダじゃおかねえから……。」
梓
「もう、隆史ったら…どうして、そんなに喧嘩腰なのかしら…。
ほら、姉ちゃんの所へ来な! ハグしてやるから…。」
隆史はブツブツ言いながら梓のハグを受けた。
「ああ…姉ちゃんにハグされると落ち着くわ……。」
コンコン!「失礼します。」
看護師は必要な処置をすると…また出て行った。
隆史
「姉ちゃん……手術は成功したらしいから…
早く見えるようになると良いな。」
梓
「隆史…有り難う。 何から何までお世話になって……
姉ちゃんは…感謝しているよ。」
隆史
「姉ちゃん…水くさい事言うなよ。
俺達は楽しい時も苦しい時も一緒じゃないか。」
梓
「隆史……姉ちゃん、何か恩返しがしたいんだよ。」
隆史
「うう~ん、じゃあ考えとくよ。
それで、姉ちゃん……ずっと聞いてみたいと思ってた事があるんだけど……
亡くなった大蔵兄さんがね…
『俺にもしもの事が有ったら…梓を頼む。
梓に好きな人が出来て、一緒に成りたいっていうなら…そうしてやってくれ!
それが隆史君なら…それで良いし、
むしろ…そのほうが俺は安心だ。』
って言ったんだ。
『梓ねえさんとは姉弟だから……。』
って俺が言うと、
隆史さんは知らないけど…
梓さんと隆史さんは血が繋がった姉弟では無いんだと梓さんが言っていたと。
それで、俺も昔住んでた浅草に言って…
当時を知る人を探して確かめたんだ。」
梓
「隆史……確かめたんだね……『あすなろの家』それが姉ちゃんが貰われてきた所だって…。」
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