第16話 梓(あずさ)姉さんの眼が…

梓は病室で目を覚ましていた…


医者

「娘さんの眼ですが…… 」

深夜の病院の廊下での話し声は、梓の耳にも聞こえてきた。


医者

「娘さんの眼の手術は…難しい上にドナーからの提供を待たなければ成りません… 義眼というのも有りますが… 」


「義眼だなんて…年頃の娘なのに …あなた… 」

梓の母は泣き崩れた。


義父の極楽

「先生、金なら何とかします! どうか娘の…梓の眼を治してください!」 


医者

「はい、最善は尽くします……でも元通りに見えるように なるかどうかは……。 」


「母さん…義父さん…俺のせいなんだ。 申し訳ない。」

義父と母に同行している隆史は、泣く涙も もう枯れて放心状態だった。


「だったら…アンタの眼を梓にやりなさいよ!」

母は 感極まって そう言ったが、直ぐに言葉を打ち消した。

「嘘よ! そんな事できやしないんだから…。 」


「お母さん…お義父さん…隆史が悪いんじゃないの。 自分の身を守れなかった私が悪いんだよ。 隆史だって随分ヤられたんだから…。」


梓は病室から出てくると、そう言って隆史の頭を抱いてやった。


「姉ちゃんがもっと強かったら…あんな奴! 

あんな奴…やっつけてやるんだから!」


梓は隆史を慰めるつもりだったが…自然に涙が流れた。


極楽(義父)

「梓…どんな野郎だったんだ! 

くそっ! 見つけたら生かしちゃおかねえ!」


「お義父さん、警察には届けてあるから…そのうち判るよ…」


……………………………………………………


そんな何年も前の事を思い出して…一人唇を噛む隆史は梓の部屋に居た。


「タカ…この洗ったシーツを畳むから…そっちを持っててくれるかい?」


隆史は完全に眼が治らなかった梓姉さんを可哀想に思って見ていた。


「タカ……そうじゃないだろ! そっちの端を持たないと……。 」


隆史は梓姉さんを後ろからハグして

「姉ちゃん…ゴメンな…。」と言った。


梓は持っていたシーツの端を隆史が離したので、シーツに巻かれるように二人は折り重なった…


「姉ちゃん…好きだ♡…どうしようもない位… 」

隆史は梓を抱きしめて唇を重ねた…


……………………………………………………

☆『長い旅から帰ってきた貴方を…

ホッとさせ…昔から此処にいるような…

そんな気にさせる店…

ダンサーのステップは貴方の興味を掻き立てる

ナイトスポット《東京スピンドール》

今宵も夢の国へ♡』☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る