第12話 川崎組からのスカウト

いつの世も…栄枯盛衰は世の習い。

ヤクザと呼ばれる渡世人の世界も例外ではない。


最近 勢いを増していると噂に高い《川崎組》も、

その無鉄砲な版図拡大の手法に業を煮やした周りの組の結束により、

去勢されたとしても不思議ではなかった。


ある日5~6人の民間戦闘員によって川崎組の若い衆は壊滅的な打撃を受けた。 

御礼参りも出来ないほどだった。


川崎組の幹部連中は存続の危機に瀕して…

新たな若い衆を集めていた。 

そこで白羽の矢が立ったのが隆史という訳である。


川崎組の関係者

「隆史さん…隆史さんのお姉さんが玉井組に嫁いで隆史さんと玉井組が姻戚関係と知った上で……隆史さんを男と見込んでのお願いです。 

うちの親分が[どうしても隆史さんを川崎組へ]という事なんで… 」


隆史

「期待に添えるかどうか分かりませんが…考えてみます。」


[川崎組といえば玉井組の敵(かたき)!玉井組の元若頭の大蔵さんの敵だ!

しかし、今は川崎組も去勢されて当時の勢いは見る影も無い。

一度、梓姉さんと玉井組には話を通しておかないとな。]


隆史は 先ず 玉井組にヤられた大蔵の女房の梓姉さんに会いに行った。


……………………………………………………


梓姉さん

「タカ……いらっしゃい。来てくれるなら……

もう少し前に連絡が欲しかったわ。

いつも急なんだから…… 」


隆史

「ゴメンな。ご婦人の所へ行く時は…前もって…だよね。」


梓は隆史をアパートの中に招き入れるとドアを閉め…ハグをした。

「会いたかったわ♡」


梓がハグを止めると、今度は隆史が梓をハグしてやった。

「俺もさ♡」


「ウソ!きっと恋人と仲良くしてたんだわ…悔しい♡」


「そんな事無いさ…梓姉さんほど魅力的な女は…そう居ないよ。」


「嬉しいわ…ウソでもね。」


隆史は、どんなに梓姉さんの事が好きか…

まだ言葉を続けたがったが、

本題を話すのが遅くなると思って、

話題を変えた。


隆史

「姉さん……大蔵兄さんの100日が過ぎたばかりなんだけど……

姉さんは大蔵兄さんをヤった川崎組をどう思ってる?」


梓「あのね、姉さん…

玉井家から籍を抜いて貰ったんだ、

丁度100日が終わった頃にね…。

だから川崎組は大蔵さんの敵なんだけど……

もうどうでも良いかなって…。」


隆史は梓姉さんの変貌ぶりに少し驚いていた。


隆史

「姉さん……実は、川崎組は出鼻を挫かれて今は壊滅状態らしいんだ。

若い衆が皆ヤられちまって、新しい若い衆を探していてね……。」


「それで隆史の所へ話が来たって事ね…。」

梓は察しが早かった。


隆史

「姉さんは……どう思う?」


「そうねえ……タカは頭がキレるし、

きっと上手くやれると思うけど…… 」

梓の返答は歯切れが悪かった。


次の瞬間、梓は隆史に抱き付いて泣いた。

「姉ちゃんの大切な男性(ひと)は…皆 戦場に行っちゃうんだ …」


「姉ちゃん…… 」

隆史は梓の身体を抱きしめた。


「タカ……今日は泊まっていって… 」

梓は涙を拭うと夕食の準備を始めた。


…………………………………………………


☆『ある店でタンゴを美しく情熱的に踊るダンサーが居たという…

その店の名前は《東京スピンドール》

二度とない出逢いとトキメキの夜を貴方に🎵♡』☆

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