第11話 姉さんに だけだよ…

大蔵(たいぞう)亡き後、

玉井組は他の組から かなり攻撃を受けたようだった。


大蔵の弟が玉井組を継いだのだが、

組の年寄り連中が認めず…

結局 玉井組は解散になってしまった。


どこの世界も長いものには巻かれろ……

という事らしい……

川崎組のほうは勢いを増して他の組の島も荒らし始めているからだ。


梓姉さんにと 花束を買っているのは弟の隆史だ。


「大事な女性(ひと)へのプレゼントなんだ。可愛いのにしてくれ!」


「姉さん、お誕生日おめでとう♡」

そう言って隆史が渡した花束に梓はとても喜んで隆史にハグをした。


「タカ、ありがとう♡」

梓は貰った花束を要領良く花瓶に生けた。


「へえ~、姉さん上手いもんだね… 」

隆史が梓を褒めると、梓は気を良くしてフリージアの花を自分の髪に差すと、

[どう?]という顔をした♡


「姉さん…綺麗だよ♡」

そう言うと隆史は おどけて梓の前にひざまづくと、梓の手に口付けをする真似をした。


梓は隆史を抱きしめると少し泣いた。

「ありがとう♡こんな姉ちゃんに優しくしてくれて… 」


………………………………………………………


隆史は梓のアパートの隣の部屋へ もう越してきたのだが…

初めて梓が このアパートに泊まった日の事である。


「姉ちゃんは今日このアパートに泊まるの初めてだろ…

少し寂しいんだ… 」

そう梓が言うので隆史は梓のアパートの台所で寝る事にした。


隆史が寝袋で台所に寝ていると…


「タカ…台所は床が固くて眠れないんじゃないか? それにそこは寒いだろ。」

梓はそう言って、自分の隣で寝るように促した。


確かに台所の床は固くて背中が痛かった。

「そうだな、じゃあ…大蔵兄さんゴメン!」

隆史はそう言って梓の布団に寄り添って寝る事にした。


しばらく梓は布団に…隆史は寝袋に入っていたが、以前の家とは違い、このアパートは底冷えがする簡素な造りだとわかった。


「姉ちゃん…」


「タカ…このままじゃ…二人とも凍え死んじゃうね。」


二人は意を決して一つの布団に潜り込んだ。

梓は隆史の背中を擦って温め…

隆史は恥ずかしさより…

凍え死んではいけない…と思い、

梓の身体に抱きついた。


20分位抱き合っていると…

段々身体が温まってきた。


「アッ♡……」 

隆史は梓のイケナイ所を触ったのかも知れない。


「ゴメンよ…」

隆史はなるべく気を付けて梓に身体を寄せるようにした。

「寒くない?」

今度は梓が隆史の背中から身体を抱きしめるように身を寄せてきた。


隆史は凍えてはいるが、背中に姉の身体の感触を感じている。 


梓も凍えているのだろう…隆史から身体を離す事はない。


「タカ……まだ寒いだろ。この上着を脱ぎな。」


梓はそう言って隆史の服を脱がせて、

自分の服も脱いだ。


確かに服を脱いで裸同然の下着姿で抱き合ったほうが数倍温かかった。


「もっと早く気付けば良かったよ。」

隆史はそう言って自分の背中から抱きしめる姉に向き合い、

正面から抱き合った。


「これは…温かいわ」

隆史は梓に出来るだけ密着しようと試みた。


「これは何?」

梓は自分の腹部に当たる物を不思議に思った。


「それは可愛い弟の生理現象だよ♡」

隆史は許されるだろうと思って言った言葉だったが…

梓は少し恥じらっているようだった。


「まだ49日が明けていないから…その後でね。」

梓は顔を赤らめて そう言った。


困ったのは隆史である。

この生理現象をどうしたら良いかと思い悩んでいた。アッチコッチに身体をずらせたりしていたが…


「良いのよ…このままで。」

梓のその言葉で生理現象の問題は解決したかに見えたのだが、

隆史が困ったのは…

時々姉がそれをツマンでくる事だった。


「そうそう…確かこんなだったわ」

時に軽く時に強くツマンでくる……

極楽とも地獄とも言える状況だった。


………………………………………………………


今日は姉貴の誕生日。


「姉さん、誕生日のプレゼントは何が良い?」

そう聞く隆史に…


「タカ♡……今日泊まっていけば?♡」

と言う梓…。


「じゃあ、それが誕生日プレゼントっていうことで… 」

そう隆史は言い、靴を脱いで上がり込んだ。


隆史は女性の部屋が珍しいらしく、アッチコッチと覗いてみたりした。


DVDが何枚か積んであって、一つ手に取ってみると……《How to se〇》と書いてあった。

[姉さんも…こんなの見るんだ♡]


「さあ…召し上がれ♡」

梓はそう言って隆史を豪華な夕食でもてなした。


「タカ……ワイン飲むでしょ?」

「ああ…少しだけね。すぐ赤くなっちゃうからさ。」


梓と隆史はワインで酔ってきて、少しずつ開放的になった。


「タカ……私好きだな……タカが一番好き♡」


「梓姉さんの事を俺も好きだよ♡

そうだなあ……世界で一番好きだ♡

結婚したいくらいだよ…」


「え~…それ本当? ウソだね…タカには恋人がちゃんと居るもん。 

それに比べて梓ちゃんは可哀想…

だって誰も愛してくれる男性(ひと)が居ないもの

…大蔵くんは死んじゃったし…

玉井家からは追い出されるし…

梓ちゃんは…梓ちゃんは どこにも愛してくれる男性がいないの♡」


「ここに…いるさ♡俺が姉貴を愛してあげるよ♡」


隆史はすっかり開放的になって、梓に求愛する言葉を言っていた。


「タカ……ありがとう♡

私もう一度生まれ変わったらタカと一緒になるね♡」

梓の姿は哀愁を誘った…


……………………………………………………


☆『ここは《東京スピンドール》店の灯りが少し揺らぐ時にそのダンサーは躍り始める。』☆

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