第8話 玉井組の大蔵 狙われる

梓(あずさ)

「あなた♡…今日も早く帰って来てね♡

美味しい物を沢山作って待ってるから。」


大蔵

「ああ…梓♡行ってくるよ。」


大蔵は 手下のヒデが開けたベンツの後部座席に乗り込んだ。 

その時、反対側のドアからチンピラが入った来て、大蔵の喉元にナイフをあてがった!


「大蔵さんよ!新婚だからって浮かれてるんじゃねえぞ! ちゃんと仕事しな! 

いいか!堂島は今日から川崎組の島だ!

手出ししやがったら…タダじゃ置かねえからな!」


そう言うとチンピラはナイフを離して車から出ていった。


ヒデ

「若頭!大丈夫ですか!」


大蔵

「ああ…今のは脅しだけだ。 次は狙ってくるだろうよ!」


大蔵は苦慮していた…。

[こんな時に相談できる腹心の友がいたらなあ…。

そうだ!梓の弟の隆史さんはどうだろう?… ]


早速 大蔵は隆史に「会えないか?」と連絡を取った。


隆史

「ああ、良いですよ。

私も お兄さんと色々話したいと思っていた処です。

場所は…ご自宅で良いんですね?… 」


「タカ…いらっしゃい。その後変わりは無い?… 」


隆史

「はい、お陰さまで…大体は上手くいってます。」


「そう…大体ね。ははは。」


隆史も《東京スピンドール》の経営を任されて…

時々は その辺の組からチョッカイ出される事もあるのだ。

その辺の事情は3人共よく分かっている。


大蔵

「隆史さん、すまないね。呼び出して。」


隆史

「いえ、大丈夫ですよ。それで…?」


大蔵

「ああ、昨日 川崎組を名乗るチンピラにナイフを突きつけられてな…

堂島から手を引けと…。」


隆史

「そうなんですね。危ない組みたいですね。普通そんなダイレクトに脅して来ないですよ。」


大蔵

「そうだな。あれはカモフラージュで…もっと大きな野望が有るのかもな。

隆史さん、それで…どうだろう? 梓とも話したんだが…

時々玉井組のほうへ顔を出してもらって、

玉井組を少しサポートして貰うっていうのは?

モチロン面倒臭い事は手下にヤらせるからさ…。」


隆史

「お兄さん、良いですよ。

私のほうも組の事を色々知りたいと思っていたんです。

店にチョッカイ出してくる組も居ますからね。」


大蔵

「そう言ってくれると有り難いよ」


………………………………………………………


隆史は自分が組の事に携わるのはイヤでは無かった。

元来そういう気性が有ったのかも知れない。


しかし、それよりも隆史は梓姉さんに会った事が嬉しかった。

玉井組への出入りの話を受けたのも梓と時々会えるかも知れない…と思ったからだろう。


それに反して、梓は隆史が組に関わるのは最初 反対であった。

可愛い弟を危ない目に合わせる訳にはいかない…と考えての事だ。


しかし、大蔵と結婚し[大切な人]の順番が微妙に変化してきたのかも知れない。


それと、夫が弟と仲良く行動し…

自分の嫁いだ玉井家に時々来てくれるかも知れないと感じて賛同するようになったのだろう。


ただ近い将来…

梓と隆史の関係が思わぬ方向へ転がっていくとは

…誰にも分からなかった。

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