第7話 姉さんの婚礼

隆史は恋人のサヤカとベッドの中にいる。

「タカちゃん…今日はダメだね。ちっとも相手してくれないんだもん… 」


「悪い!なんか…その気に成れなくてな… 」



サヤカは身支度を整えると隆史を残したまま ホテルを後にした。


[サヤカは…今は仕事はしていない筈だから…

きっと相性の良い男を見つけてデートでもしてるのかもな。]



隆史はやはり梓姉さんの婚約がショックだったのだと自分で分かっている。


梓姉さんとは血が繋がっているが、失明させた負い目があり…

気持ちの上では特別な関係となっていた。


そんな梓姉さんを他の男が持って行くのだから…

姉弟だと分かっていても嫉妬を感じている。



[時間が…こんな気持ち…忘れさせてくれるさ!]


そう隆史は自分に言い聞かせた。


[何か遊んでいれば気も紛れる]

そう思って夜の街をブラついてみた。



梓姉さんの婚約相手とは二度ほど面識があった。

まさに前から若い衆を率いて歩いてくるのは玉井組長の息子の大蔵だった。


「オメーら悪さするんじゃねえぞ! 

玉井組の看板に傷を付けた奴は生かして おかねえからな!」


大蔵「おっ、これは極楽さんトコの梓さんの弟さんじゃ無いですか。この度は良いご縁を戴きまして… 」


隆史「これは…こちらこそ良いご縁を戴きまして…。これからお遊びですか? ご一緒しても?… 」


大蔵「モチロン大歓迎ですよ。

俺はねえ 梓さんに目が無いもんで…

弟君!是非とも歓待させてください。」


大蔵は若い衆に隆史を特別扱いさせて大いに もてなした。


隆史は…大蔵がイメージしてた程 悪い奴では無いと思えてきた。


大蔵が顔の利く店を何件も呑み歩くと…


「女のほうはどうします? 俺は結婚前だからダメですけどね。」と言い、隆史に主導権を持たせた。


「俺も止めときますよ。

結婚して俺の女癖が悪いのが姉貴の耳に入ると怒られますからね。」


隆史は何か梓姉さんとの事が吹っ切れたような気がして少し爽やかになった。


………………………………………………………



梓姉さんと玉井組の大蔵は それから二ヶ月後に結婚式を挙げた。


「ねえ…ココんトコにキスして…ああ感じるわ♡」

大蔵と梓は毎日飽きるほど愛し合った。


………………………………………………………



玉井組の島が荒らされるようになったのは、そんな幸せな出来事が一月程続いた後だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る