第31話
こうなることは分かっていたけれど、本当にうんざりだ……。
目の前の家庭教師が何やらガミガミと言っているが、その内容の半分もフォルテには入ってきていない。
「フォルテ様、聞いていらっしゃいますか? それでは、カーティオ様のように自在に魔力を扱うことは難しいですぞ」
だいたい、カーティオの魔力とその術は規格外なのだから、基準にされても困る。それは目の前の教師だとて同じだろうに……。
フォルテは舌打ちしたい気分になりながら、なんとかそれを抑えている。しかし、こんな日々を早くなんとかしたいところだ。
カーティオが王位継承権を放棄すると聞いたのは、サンクティオからの帰り道だった。きっと、彼はずっと前からそうしようと決めていたのだろうと、フォルテは感じた。それは恐らく、クラヴィスが王宮に来なくなってからだろうとも。
あの日から変わってしまったのは、クラヴィスだけではなかった。元々、兄として自分よりは大人のように見えていたカーティオが、もっとずっと遠くに行ってしまったように思っていた。
だが、それを共に感じられたであろうクラヴィスは居らず、一人胸の中にしまっていた。だから、二人には、自分では理解出来ない何かがあったのだろうと、無理矢理に納得することしかフォルテには術がなかった。
『止めないの? 』
『僕が止めたら、覆るような意思なの? 』
『ううん、それはない』
『分かってて、僕が無駄なことするとでも? 』
『思わない』
『なら、聞かないで。もし僕に悪いと少しでも思ってるなら、反対したり面倒なことしてくる奴らの対策考えてよね』
『もちろん考える』
『あと、王位は僕に押し付けてもいいから、ちゃんと側にいて』
『なんかトゲも見えたけど、それは絶対違えない』
『じゃあ、もうなにも言わない』
フォルテありがとうと、痛い位に抱き締めてきたカーティオの腕の温もりを信じるしかなかった。自分には彼ほどの力はないと、誰よりもフォルテ自身が知っていたから。
そして、カーティオは帰国して早々に行動に移し、それと同時に策も講じた。今はその芽が出始めたところだ。
もう少しの辛抱だと、フォルテは自分に言い聞かせる。
もう少ししたら終わる。このつまらない授業も、王宮内のゴタゴタも……。
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