第27話 幕間 森の双子
国土のほとんどが森の中に在るサルトス。その中でも大木が生い茂るところに黄昏の神子の神殿があった。
「歌……? 」
「どうしたの? ウェルス」
「ティエラ、歌が聞こえる」
隣に座るウェルスの視線を追ったティエラは、その方向へ耳を向けると目を閉じる。風が揺らす木々の葉の音に交じり、微かに、確かに聞こえてくる歌があった。
サルトスの木々は歌を歌い、森に起こる様々な事を彼らは伝えてくる。それを聞けるのはサルトスの王族だけだ。
だが、歌には人が理解できる言葉はない。木々の間だけ理解できるのか、もしかしたら、精霊たちならそれを理解できるのかも知れない。その音の中にある彼らの感情を読み取り、サルトスの王族たちは民を導いていく。
「これはファートゥム? 初めてだね」
「嬉しいような、悲しいような……? 分からないな。でも、悪い感じはしないから、何にもないといいけれど」
「後で、母様と姉様にも聞いてみよう」
そうだねと微笑みあった二人の耳に、今度は聞きなれた声が聞こえた。
「お~い、ティエラ、ウェルス。そろそろ戻らないとクロイツ卿に叱られるぞ」
太い木の枝に並んで座っていた二人は、あっと顔を見合わせると、くすくすと笑う。クロイツ卿は宰相の長男であり、次期宰相と噂される優秀な人で、二人の教育係でもあった。
「今日は好物を用意してるから、怒られないけどね」
「うん、きっと」
クロイツ卿は怒ると確かに怖いが、何故か王子二人にはどうも甘い傾向にあるようだ。
木の下からお~いと困ったように呼び掛けるリデルに、今行くと告げて、二人は枝から飛び降りた。
ファートゥムは歌う
新たな『シン』の覚醒を……
『シン』の訪れを喜び
『シン』の行く末を嘆いて
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