第25話
「私は、お二人と同じように、精霊たちの姿を見られますし、彼らの話す言葉も理解できます。訳あって、しばらく彼らとの意思疎通を断っておりましたが、フラン様を訪ねたことで、一定の解決が見られましたので彼らとの交流を再開いたしました」
じっとカーティオはクラヴィスを興味深そうに見ている。何時もなら口をはさんで来そうな話題だが、どうやらクラヴィスがこの状況をどう乗り切るのかを見守るつもりらしい。同じく、隣の大人たちも、今は静かにこちらの様子を伺っている。
「精霊たちには、私の事情は説明したわけではなかったので、どうやら王女様へ助けを求めてしまったようで……。彼らが力を使い、私の下へ王女様をお連れしたのです」
「精霊たちには、人間たちの事情なんて関係ないものね」
余りに面白みのない答えに、なんだ詰まらないと、言外に聞こえてきそうなカーティオに思わず苦笑したクラヴィスだったが、これでかえってそこに精霊たち以外の思惑がなかったのだと印象つけられただろう。もしかしたら、それまで黙っていたカーティスなりの助け舟だったのかも知れない。
「それは何時の話だ? 」
とはいえ、リテラートとしては色々納得できない。
精霊たちが連れて行ったとして、レーニスの姿がないとなれば、この王宮の護衛騎士たちやレーニス付きの侍女が気付かないはずはない。気付けば何かしらの情報としてリテラートやトルニスたちに伝えられるのに、それはなかった。
「申し訳ございません。それは王女様の名誉に関わることになりますので、私の口からは申し上げられません。しかし、誓って、王女様の身に危険が及ぶようなことはございませんでした」
そこまでで言葉を一旦切ったクラヴィスは席を立ち、隣のテーブルに座るトルニスとルウィアの傍で膝を付く。
「ご報告が遅れましたこと、申し訳ございません。私はどのような罰も受けますので、どうぞ、精霊たちをお叱りにはならないでください」
その場に沈黙が降り、皆の視線はトルニスとルウィアに注がれた。
ふっと息を漏らしたトルニスは、次に声を上げて笑い出す。
「さすがに、我とて精霊たちを罰することは出来ぬよ。もちろん、そなたもな。ウラノス、貴殿の息子の行く末が恐ろしいくらいだな。これではサラーサ殿のご実家に取られてしまうのではないか? 」
「息子たちは、メディウムの剣と盾を担いますので、いくら妻の実家と言えども渡す気はございませんよ。そもそも、あちらには優秀な後継が居りますゆえ」
トルニスの言葉にリテラートはそれ以上の言葉を紡ぐ事はしなかった。
その後は、和やかにお茶会は進んでいった。精霊たちの声を聞ける三人を除いては……。
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