第24話

 もう一度、皆が席に着き、新しいお茶が用意される。

 さて、何処から何処まで話せばいいのかと考え始めたクラヴィスの隣では、レーニスが真っ赤な顔をして俯いていた。

 リテラートとしてはそちらの方が気が気でない。今まで、男性と言えば父か自分しかまともに話をしたことがないというのに、カーティオを筆頭にメディウムから来た彼らはするりと彼女の懐に入り込んでしまったらしい。

 しかも、自分の目の前で起きたことならまだ、まだ許せたかもしれないが、クラヴィスとのことはカーティオとフォルテも把握していない二人だけの秘密だというし、正直、兄としては面白くない状況だ。


「まず、確認をさせていただきたいのですが」


「許す」


「精霊の姿を見られるのは、王女様とカーティス殿下のお二人なのですよね? 」


「そうだね。でも、フォルテは多分、気配は分かるよね? 」


「気配だけね」


「私は、そちら方面は苦手だ」


 精霊のいたずらだと正直に話して受け入れられるか、それとも、ある程度クラヴィスの情報を明かした方が良いのか迷う所ではある。

 サンクティオの民は、基本的に魔術よりも剣術が得意なものが多い。全く魔力がない、魔術が出来ないという訳ではないが、魔力が多く得意な者はこの国では希少だった。その中で精霊が自らその姿を見せようとした場合を除き、その場に存在する精霊の姿を見、更に言葉を聞ける者は極僅か。もしかしたら、今、この国でそれが出来るのはレーニスだけかもしれない可能性もある。

 クラヴィスには政治的な意図などないが、王子二人がリヴェラに何か聞いているかも知れない。その可能性を考えると、自分がそれを少しでも見せれば両国の関係に何かしらの変化を与えることもあり得る。

 転生の際に、国政の中枢に入り込むことを避けていたから、政から離れて久しいが、こうして頭を悩ませることは『シン』としては嫌いではない。

 さぁ、どれが正解か……。


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