第22話
フォルテはずっと気がかりだった。
あの日、傍にはカーティオもいて、一緒に庭園を駆けまわり、二人とも疲れて寝てしまって、特に変わった事はなかったはずだ。
フォルテが起きるまでは……。
『あれ? 兄様、クラヴィスは? 』
隣にいたはずのクラヴィスの姿はなく、何時も穏やかな笑みを浮かべている兄のカーティスも青い顔をしていた。
クラヴィスのことも心配だが、目の前で大丈夫だと繰り返しながらも、全くそうは見えないカーティスのことを放っておくことは、フォルテには出来なかった。
しかし、その日を境に、クラヴィスは王宮へ来ることが少なくなり、何時しか姿を見ることがなくなった。
サラーサを王宮で見つけては、クラヴィスの様子を聞いていた。
決して暗い表情をしなかったサラーサだったが、その口から出る言葉は何時も同じで、剣の鍛錬は欠かすことはないが、屋敷の外へ出ることを拒んでいると。それはウラノスに聞いても同じだった。
王子として命令すれば、きっとクラヴィスは王宮に上るだろう。けれど、それは彼が望む事だろうか。自分が本当に望む事だろうかと、フォルテは幾度自問自答を繰り返しただろう。
気が付けば、三度目の季節が巡ろうとしていた。
そんな時、ウラノスが纏まった休暇を取ると知ったのは、ウラノス不在の間、フォルテに付けられていた護衛の配置が換わると聞かされたからだ。
フォルテの記憶にある限り、近衛隊長であるウラノスがリヴェラと共に出る以外で、王宮に上らなかった日はない。その彼が王族に着く護衛の配置が変えられるほど不在にする。その事実は何かしらの予感を生んだ。
それはカーティオも同じで、二人は共にリヴェラの下を訪れた。そこで見たのは、サラーサに着いていくとリヴェラに直訴するセラスの姿だった。
ウラノスではなく、サラーサに着いていく。それは、恐らくクラヴィスも共に行くということなのではないか。そう思った二人は、セラスの直訴に便乗することにした。
結果、警備の面で同行が認められたのは王子二人のみであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます