第20話

 明日には帰国するというメディウムからの訪問者のため、その日は午後からお茶会が開かれていた。あくまで表向きは王子たちの非公式な訪問であったため、規模は極小さなものだ。

 実は、子供たちだけの予定であったのだが、ルウィアのたっての希望で、急遽、トルニスとルウィア、フランとウラノス、サラーサが加わることになった。

 急ごしらえだったため、テーブルは大人と子供に分かれていることが、子供たちに安堵させることではあったのだが……。

 大人のテーブルは、さぞかし難しい話をしているかと思って耳を澄ませた子供たちは、聞こえてきた話に驚いていいのやら、笑っていいのやらと戸惑いを見せていた。


「ようやく、お友達としてお話出来て嬉しいわ。セラスは元気かしら」


 ルウィアとサラーサ、ウラノスはアカデミーで同学年だった。ここには居ないが、リヴェラとセラスも同学年で、トルニスとフランは一学年上だ。


「えぇ、サンクティオへ行くと言ったら、私も行くと駄々をこねていたのよ。陛下が一生懸命なだめていらしたけれど」


 ふふっと思い出し笑いをしたサラーサの隣では、ウラノスが苦虫をすりつぶしたような顔をしている。恐らく『なだめた』のは、ウラノスも関わっていたのだろう。

 カーティオとフォルテの母で、メディウムの王妃であるセラスは、普段はおっとりとしているが、こうと決めたことは譲らない芯の強い人だ。そんな彼女に恋をして、アカデミーにいる九年間をかけて彼女の心を射止めたリヴェラの話は、恋愛小説として執筆され、今でもメディウムでは再版され続けているのだそうだ。


「そう、何時か、聞いてみたいと思っていたのですが。本当にあの物語の通りなのですか? 」


「もしかして、フラン様はあれをお読みになったのですか? 」


 恐る恐るといった体で問うたウラノスに、フランはさわやかな笑みを浮かべたまま何でもないように答える。


「はい、トルニスに薦められたのです。とても参考になったと……」


「あ、兄上! 」


 普段の厳格な父王からは想像の付かないくらい、おろおろとフランを止めようとするその姿に、リテラートは見ては行けないものを見てしまったような気になる。

 とにかく、大人のテーブルは楽しそうで良かった……そう、思っておこうと、子供たちは聞き耳を立てるのをやめた。

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