94話:廃棄都市《ジャンクシティ》
偉そうな
全容が見えない空間の中、彼に続いてレール沿いの通路をジャラジャラと“鎖の音”を立てながら歩く。
――結局、牢屋を出る際には脚に鎖を付けられてしまった。
床が鉄なのもあり、やけに音が響いてストレスが溜まるけれど、それよりも気になるのは周囲からの視線。
何をやっているのかよくわからないけれど、ボクと同じく
手足にも爆弾を付けられたボクを憐れんでいる……のか?
(全く、本当に何なんだここは。強欲のグリードがボクをここに送り込んだ訳じゃないのか?)
前を歩く
少なくとも彼と強欲のグリードに直接的な関係は無さそうだが、とは言え判断する程の情報を得ているとは言い難い。
一旦その件については保留にしておくも、やはり無視出来ないのはボクの自由を奪う4つの爆弾:
両足と左手、そして首に解除出来ない爆弾(牢屋のサム曰く)が取り付けられているのは大問題だ。
(一度付けたら解除出来ないなんて、そんな拘束具がある訳無い。多分、サムが知らないだけで、この
いや、状況が不明過ぎる中で暴れるのは如何なものか。
強硬手段に出るのは、もう少し情報を手に入れてからでも遅くないだろう。
「ねぇ、このまま歩いてたら
「HAHA。それはそれで面白そうだがナ。この
「
「あぁ、ここは“とある街の地下”にあル。言っておくが、逃げ出そうなんて夢は持つんじゃねーゾ。この
「ふ~ん、そうなんだ?」と適当に相槌を打ったところで。
「おい、助けくれッ」
不意に声を掛けられた。
声の主は一人の男性で、ボク等が歩いていた通路横のレールに倒れている。
両足共に機械化された足の様だが、何か大きな衝撃でも受けたのか
「そこの奴隷、仕事はどうしタ? そこで何をしていル?」
「何って、見ての通り
「そんなの俺が知るカ。自分で何とかしロ」
「自分でって、そんなの無理だッ。
警報。
通路に設置されたランプが赤色に光り、埃を被ったスピーカーから不安を煽る音が響く。
何事かと周囲に注意を向けると、後方から暗闇を照らす様に二つの光が現れた。
少し遅れて鉄の床が振動し、二つの光が徐々に大きくなる景色を見て、動けぬ男性の顔色はランプの色とは反対に青ざめる。
「マズいッ、運搬車両だ!! ここままじゃ轢かれるッ、助けてくれ!!」
「HAHA。俺が知るか、轢かれる方が悪イ。お前等奴隷の代わりなんていくらでもいるんダ」
「そんなッ……」
絶望の表情を浮かべた男性。
そんな彼を運搬車両のライトが照らし出すも、減速する気配は一切なく、そもそも今から減速したところで間に合わない。
(仕方ない、黒ヘビで助けるか――って、“黒ヘビが出せない”!?)
理由なら「心当たり」あるが、今すぐどうこう出来る話でもない。
ならば、動けぬ男性の壊れた
(ナイフが無い!?)
どうやら没収されていたらしい。
当然と言えば当然だが、気付いたのが遅過ぎた。
このままでは、男性が運搬車に轢かれて死ぬ。
名も知らぬ相手だけれど、このまま見殺しにする気にはなれない。
(左手首の
「おいッ、何してる!? お前まで轢かれるぞ!?」
慌てる男性に近付き、心配するその声は無視。
左の掌を彼の脚に当て、地獄の熱を左手に込める。
“
掌から爆炎が起き、その衝撃でボクと男性の身体が吹き飛ぶ。
結果、レールに歪みが生じたのか「ギィーッ」と耳障りの悪い音をたてながら運搬車両が通過。
ついさっきまで男性が倒れていた場所を過ぎ去り、そのまま何処までも続く薄暗がりの中へ姿を消していった。
「うッ(焼けるように痛い!!)」
爆炎のせいで掌が真っ黒に焦げている。
皮が剥がれる事態にはなっていないけれど、この痛みは当分引かないだろう。
左手首の
「うっ!?」
「馬鹿野郎!! お前のせいでコイツが死にかけたじゃねーカ!! 死ななきゃ何しても構わねーと言われてはいるが、マジで死んだらどうしてくれんだヨ!?」
「そ、そんなの俺に言われても……ぎゃッ!?」
再びの鞭。
あまりの理不尽さにこの
ここで情報源を失うのも痛手だと、そういう言い訳の余地を残して。
「ちょっと、やり過ぎだよ」
とりあえず、
途端、彼は電子マスクで怒りの表情をボクに向ける。
「おい小僧、奴隷が調子に乗ってんじゃねーゾ。誰の鞭を奪ったと思ってるんダ?」
「さぁね、そもそもアンタの名前知らないし。って言うか、調子に乗ってるのは自分じゃないの?」
「フンッ、ムカつくガキだゼ。よく糞生意気って言われるだロ」
「どうだろう? 生意気な人からそう言われることがたま~にあるくらいかな」
「……フンッ、その生意気がボスの前でも続くといいがナ」
「HAHA」と笑い、その後に
――――――――
――――
――
―
先のいざこざの後、近くにいた他の奴隷が「機械技師」を呼びに行った。
その人が来れば壊れた奴隷の脚も修理してくれるらしいけど、そこまで見届ける義理も無ければ、そんな時間を許す
再び彼の後を歩き、そして辿り着いたのは“スチームパンク風な一件の家”。
どうやらここが「ボスの家」らしく、
玄関を開けた先に居たのは、信じられない程に太った人間だった。
「ウォッホホ、コレが例の子か? オレ好みの可愛らしい顔じゃないか」
―――――――――
*あとがき
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また、お時間ある方は筆者別作品「🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🦊1000階旅館(ほのぼの日常*挿絵あり)」も是非。
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