82話:VS 鉱石《ゴーレム》族:ロンズ
圧巻――この一言に尽きる
衝撃地点を中心に蜘蛛の巣にも似たヒビが入り、幅が数十センチから数メートル/深さは最大で10メートルはあろうかという無数の亀裂が島の台地に生まれた。
「ハッハーッ、よく避けたな黒ヘビ!! 今の一撃で葬り去った筈だったんだがなぁッ!?」
「生憎、その程度でやられるタマじゃないんでね。まぁでも、この威力はちょっと驚いたよ」
破壊の中心地から10メートル程離れた位置で、ボクは相変わらず大声を張るロンズを見下ろす。
あと何発か今のパンチが繰り出されれば島そのものが崩壊してもおかしくないレベルで、圧倒的なパワーを見せつけた彼は、ボクの賛辞にニヤリと口角を上げる。
「俺の挨拶、気に入って貰って良かったぜ!! そんじゃあ世界最強の漢を目指す最強の俺がッ、このまま手始めにお前を倒すぞ!! 準備は良いか!?」
「準備も何も、いきなり殴って来たどの口が言ってるんだか……面倒だからさ、出来れば他を当たってくれない?」
「断る!! 俺は強い奴と戦いたいんだ!!」
「その評価はありがたいけどさ、ボクは10分間逃げ切りたいだけなんだよね」
「何を言うかッ、逃げるだけの人生に価値など無い!! ここで俺と戦って己の価値を証明しろ!! それが漢の人生というモノだ!!」
「………………(はぁ~、面倒臭いなぁ)」
暑苦しくて鬱陶しい。
それだけなら無視して逃げるか、さっさと倒せば済む話。
だけど、彼は強い。
間違いなく、この島にいる人間の中でもトップクラスの実力者。
昨日ロンズを止めた二人:『闇砂漠商会』の鬼姫やリョーガ(自称:ナンバー1ホスト)の「本気」は知らないけれど、ボクの肌感では“あの二人よりも強い”。
「何をボーっとしている!! 行くぞ黒ヘビ!!」
「来なくていいけど」という、こっちの返事は聞いちゃいない。
ロンズがひび割れた台地の一つを掴み、ちょっとした家ほどのサイズがあるそれを――“投擲”!!
「“
(滅茶苦茶だなこの人……ッ!!)
圧倒的な身体能力から繰り出される力の暴力は、しかし対象が大き過ぎるが故に回避は簡単。
黒ヘビを使うまでもなく、飛んで来た「台地の砲弾」を避けるだけだ。
まぁ、これはボクのスピードがあるから簡単に言っているだけで、大抵の人間はあの砲弾を避けれず潰されて終わり――などと考えている場合ではない。
「ハッハーッ、今のも避けるか!!」
「ッ!?」
避けた砲弾の“真後ろ”にロンズが迫っていた。
自分で投げた砲弾よりも素早く動いたというのか、先の砲弾(大地)を足蹴に“空中で方向を変え”、拳を構えて突っ込んで来る!!
「“
「“
逃げ切れる相手ではない。
黒ヘビを出し、ロンズの右拳を正面から打ち返す――が、触れた瞬間にわかる。
(駄目だッ、馬鹿正直に打ち合ったら負ける……ッ!!)
「死」を覚える悪寒。
咄嗟に黒ヘビをしならせ、ロンズの右拳を“下に逸らす”。
これで直撃は免れたものの、それは相手も理解していること。
「やるな黒ヘビッ、だがまだ終わらん!!」
右拳を諦めたロンズが、身体を捻って左腕の――
「“思いつき裏拳!!”」
(その技名いる!?)
ふざけた一撃だが、直撃すれば間違いなく致命傷。
ただ、黒ヘビを防御に使う暇は無く、かと言ってナイフの斬撃で弾き返せる相手でもない。
となれば、ボクに打てる手は限られる。
「“
左手のナイフから爆炎を放ち、ロンズの巨体を吹き飛ばした!!
「ぬおッ!?」
この一撃は想定外か。
吹き飛んだロンズが地面のひび割れに激突!!
同じタイミングで、反動によりボクの身体も吹き飛ぶも、こっちは何とか両足で地面に着地。
「ふぅ~」と一息ついたところで、間髪入れずに“轟音と悲鳴”。
先ほどロンズの投げた「台地の砲弾」が、周囲に居た参加者を襲った結果だ。
「ぎゃぁぁああ~~ッ、痛ぇぇええ~~!!」
「くそッ、何で地面が降って来るんだよ!?」
「マズいッ、血が出ちまった!! さっさと離脱しないと!!」
「早く湖に逃げるんだ!! このままじゃ花嫁と青鬼に殺され――」
斬ッ!!
“花嫁の手刀”と“青鬼の金棒”。
ボクとロンズの攻防、その「飛び火」によって一気に10名以上が脱落。
まぁ「脱落」と言えば聞こえはいいが、実際問題「何人生き残った」のかは怪しいところだ。
「全く、ロンズのせいであっという間に人が減ってくよ。あんまり減りが速いと、あの花嫁と青鬼がこっちに来そうで嫌なんだけど……」
「ハッハー!! 良い動きだ黒ヘビッ、最高に楽しいな!!」
「……ま、そりゃ動くよね」
地面にぶつかったくらいで止まる相手ではない。
ひび割れから「よいしょ」と這い出てきたロンズは、何を思ったか、そのひび割れた地面に“右腕を突き刺した”。
そして、強引に引っこ抜く!!
「出来たぞ!! 俺史上最高の武器――名付けて“
声高々に突き上げる、ロンズの腕に刺さった“太さ2メートル程/長さ6~7メートル”はあろうかという「台地の棍棒」。
単純にアレを振り回されるだけで、非常に厄介なことになるのは目に見えている。
「どうだ黒ヘビ!! この見るからに凄そうな“
「……かもね。ちなみにどうでもいいけど、さっき言った名前と違ってない?」
「むッ、そうだったか!? さっきは何て言ったか……ふ~む、忘れた!! まぁ名前は何でもいいさ!! この“
「あらら、遂に“剣”になっちゃった」
残念な頭脳と馬鹿げた発想。
だが、それを実行するだけの桁外れな
純粋な、それ故に誤魔化しの効かないロンズの力は、正直言って厄介極まりないレベルにある。
「“
台地、粉砕!!
ロンズの馬鹿力で軽々と振り下ろされた「巨大な棍棒」が、ひび割れた台地を粉々に砕いた。
最早感覚としては巨人と戦っているに等しいが、それでも直撃を貰う訳にはいかず、この一撃を避け、反撃に「斬撃」を放つ!!
「“
連発した斬撃は、強靭な岩の皮膚で全て弾かれた。
ならば。
「“
二の矢として放った黒ヘビの牙も、
軽々と弾かれる。
続けて、第三の矢として放った“
「“
爆炎が直撃したにも関わらず、ロンズの身体が吹き――“飛ばない”!!
「え、何で? さっきは吹き飛んだよね?」
「ハッハーッ、さっきは油断していたからな!! 油断しなければ気合で吹き飛ばん!!」
「えぇ、何それ? ちょっと無茶苦茶過ぎない?」
「無茶をやってのけるのがッ、世界最強の漢を目指す最強な俺だ!!」
「………………」
あまりの頑丈さに、戦闘中であることも忘れてボクは引いた。
そんな引いたボクの顔を見て、ロンズがニヤリと笑う。
――かくして、ボク等に生まれた“一瞬の油断”。
息を吸って、吐いて、筋肉が緩む僅かな隙を狙った「花嫁の横槍」!!
斬ッ!!
「なにッ!?」
珍しく驚いた
ボクの斬撃では斬れなかった岩の様に硬いその皮膚に――花嫁の“手刀”で、僅かながらも「傷」が生まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます