77話:もう一人の『メリーフィールド』
迫り来る4メートル近い体躯を阻止したのは、鬼族の少女:
それぞれに「刀」と「手刀」で圧倒的な巨体を止めているが、それら「刃」を
それどころか、彼は「ニヤリ」と不敵な笑みを浮かべる。
「ハッハー!! 世界最強の漢を目指す最強の俺を止めるとはッ、やるな貴様等!!」
言って、身体を一回転!!
独楽のようにグルンッと周り、鬼姫とリョーガの2人を軽々と弾き飛ばした。
「いいぞッ、最高だ!! 貴様等も中々にやり手のようだな!! 見たことある顔だが……忘れた!! ちょっと待ってろ!!」
そしてポケットに手を突っ込み、ぐしゃぐしゃになった紙を見比べるロンズ。
どうやら手配書を持ち歩いているようだが、あの感じだと探すのには時間がかかるだろう。
結果的に一時休戦の形になると、先ほど吹き飛ばれた鬼姫(難なく着地していた)が、呆れた視線をボクに向ける。
「全く、ちょっと届け物をしに来ただけなのに。ドラノア君は変な輩に絡まれないと気が済まない特殊体質なのかい?」
「そんなこと言われても、別にボクが望んだ訳じゃないし」
「おい黒ヘビッ、俺の名前を忘れるとはどういうことだ!?」
鬼姫との会話に割って入って来たのは、
「ゴメン、あんまり興味無くて……ミョウガだっけ?」
「リョーガだ!!」
「あー、そうだったね。今度からは忘れられない様に頑張って」
「くッ、このガキ……!!」
悔しそうに顔を歪めるリョーガはさて置き。
図らずしも見たことある顔が揃ったかと思えば、これまた「ざわざわ」と周囲がざわついているのがわかる。
「あの女、『
「あぁ、奴も次世代ルーキーの一角だ。懸賞金“5億”の首」
「『
「隣の“
「奴は最近『闇砂漠商会』に入ったらしい。鬼姫はともかく、黒ヘビとも知り合いなのか?」
――流石は裏社会の人達ばかり。
ここに居る面子のことは知っているみたいだけど、だからと言って鬼姫やリョーガ、ロンズ並みに強そうな人物は見当たらない。
他に実力者が出ない限り、『
「わかったぞ!!」ロビー中に大声が響く。
声の主は岩男:ロンズで、くしゃくしゃの手配書3枚を手にしている。
「女!! お前が『闇砂漠商会』の鬼姫だな!? 手配書の顔にそっくりだ!!」
「おいおい、今頃気付いたのか? 他の者はとっくに気付いていたぞ」
「そうかッ、それは悪かったな!!」
ここでロンズの視線が
「そんで、そっちはリョーガだな!? 手配書の顔にそっくりだ!!」
「そうだよ。俺が、かの有名なナンバー1ホスト――」
「でッ、お前がドラノアだろ!? 『ドラノア・A・メリーフィールド』!! 手配書の顔にそっくりだ!!」
今度は視線がボクに向くも、確認するにはタイミングが遅過ぎる。
万が一人違いだったらどうしてたんだろう、という興味が湧いて来たので……。
「え、ドラノアって誰? 多分、人違いだと思うけど」
「何ッ!? 人違いかッ、それはスマン!! 手配書の顔に似てると思ったんだが……ッ」
語尾を強く言わないと死ぬ病気にでもかかっているのだろうか?
強めの口調で首を捻った後、改めてボクの顔とぐしゃぐしゃな手配書を交互に見比べる。
「う~むッ、似てるがなぁ……ッ!! 俺の勘違いか!?」
「いや、そいつが『黒ヘビ:ドラノア』で合ってるぞ」とナンバー1ホストが訂正。
「ちょっと、バラさないでよ」
リョーガを睨むも知らん顔なのは、名前を間違えたことへの腹いせか。
そして今度こそ確信を持ったロンズがボクを大声で攻め立てる。
「やっぱりお前がドラノアか!! 嘘吐くなんて最低だぞ!! この嘘吐きめ!!」
「ゴメン、何か面倒臭くなって。嘘吐いたら誤魔化せるかなって」
「正直だな!! だがッ、面倒臭いのは俺も嫌いだ!! ――という訳で!!」
岩の様な両拳を叩き付け、岩男:ロンズがグッと腰を低くする。
「面倒だからッ、貴様等3人まとめて掛かってこい!! 『
今日一の大声を放つロンズだが、対する3人の1人:鬼姫は涼しい顔。
「馬鹿か貴様? ここでの騒ぎはご法度だ。騒ぎを起こした者は『
「何!? そんな話は聞いて無いぞ!! 初耳だ!!」
「エントリーの際に注意を受けただろう?。というか、それを知らなくても普通はこんな場所で手を出さない。馬鹿なのか?」
「馬鹿じゃないッ、最強だ!! 俺は世界最強の漢を目指す最強の漢だ!!」
「……うるさいな」
辟易した様子で鬼姫が溜息。
忠告を無視してロンズが戦う可能性も考慮したが、最終的に決着は持ち越しとなるらしい。
裏社会の大勢が見守る中、岩男:ロンズは上半身を持ち上げ、腰に両手を当てて「ハッハー!!」と笑う。
「――いいぜッ、明後日だ!! 明後日の『
――――――――
――――
――
―
一触即発の状況から静寂を取り戻したロビーにて。
それでも、未だに大勢いる裏社会の人間がそれぞれに監視の視線を送る中、鬼姫が紙袋を片手に臆せず声を掛けて来る。
「女性陣から、ドラノア君にお土産だよ。まぁ主にダークエルフ嬢からだけどね」
「そうなんだ、ありがと」
紙袋を受け取り、中を見ると幾つかの甘い食べ物が入っていた。
素直にありがたいけれど、一番上に乗っていた代物――“食べかけの骨付き肉”を取り出すと、先輩(自称):イヴァンが「うげッ」と顔をしかめる。
「何だよそれ、食いかけじゃねーか」
「察しの通り、狐君からドラノア君へのお土産だよ。ダークエルフ嬢と姫様が甘いモノを詰めていたら、
「正気かアイツ……」とイヴァンは引いている。
ボクも正直、最初は「うわぁ……」と思った。
それでも、お肉が大好きなテテフがお土産に分けてくれた事実が嬉しく、ボクは手に取りむしゃむしゃと食べ始める。
「うげッ、マジかよお前。それ食うのか?」
「せっかくテテフがくれたんだし、悪くなる前に食べないとね。イヴァンにはあげないよ」
「要らねーよ」
嫌そうに顔をしかめた後、イヴァンは鬼姫に声を掛ける。
「それよりお前、こんな目立つ場所で俺達に話しかけていいのか? 結構な注目浴びてるぜ」
「本当に注目を浴びているのは、私ではなくイヴァン殿だろう? 今回の『
「ハハッ、俺も有名になったもんだ。大人しく暮らしてたつもりなんだけどな」
「何を戯言を。“『世界管理局』に喧嘩を売る”ことを、世間では大人しく暮らしていたとは言わない。そうでしょう? “世界反逆罪”の大罪人、グラハム卿の
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