■【右腕を代償に「黒ヘビの腕」を手に入れた少年の復讐劇】 ~ 死後、4000年の殺し合いを経て地獄最強の咎人となった少年が、地獄を抜け出し欲望渦巻く「闇の世界」で成り上がる!! ~
36話:『格付け戦』ドラノア VS イヴァン
36話:『格付け戦』ドラノア VS イヴァン
相手は組織の先輩(自称)だが、当然ボクとしても負けるつもりはない。
(さてと、イヴァンはどう出るかな? パッと見で武器は持ってないけど……)
既に、彼の胸にはメラメラと燃ゆる炎が見える。
物体を球体にして操る“
刃物や銃を隠し持っている可能性はあるし、身体能力の程も不明。
こう来るだろうと決めつけるのは対処の幅を狭める結果に繋がり兼ねないが、かと言ってあらゆる選択肢を考慮して動くのも無理がある。
ボクの基本的な戦闘スタイルが彼にバレている以上、こちらも早々に相手の戦い方を見抜いておく必要がある。
「どうした後輩、来ないのか? テメェが動かないと始まらないぜ?」
「……それもそうだね」
“
まずは様子見。
ナイフで斬撃を飛ばし、それをイヴァンが避けないどころか、むしろ「逆」。
右手を伸ばして斬撃を受け、直撃した斬撃が“丸くなる”。
「なッ!?」
丸まった斬撃は球体の中で渦を巻き、それがイヴァンの掌の上に浮いていた。
「おいおい、親に習わなかったのか? 刃物を人に向けちゃいけません、ってなぁ!!」
浮いた斬撃(球)を投げ、それがボク目掛けて飛んでくる!!
「おっと」
直撃を喰らう訳にはいかない。
横に跳んで斬撃(球)を避けるも、すぐさま背後に嫌な予感。
「ッ~~!!」
慌ててその場に伏せ。
伏せたボクの頭上を、戻って来た斬撃(球)が通り過ぎた。
(い、今のは危なかったッ)
と安堵している場合ではない。
再度戻って来た斬撃(球)に、ボクはナイフで新たな斬撃をぶつけて「相殺」。
威力を失った斬撃(球)はブワッと四方に飛び散って消えた。
「ハハッ、流石にこの程度じゃ終わらねぇか。ピョンピョン跳ねて楽しそうにみえたがな」
愉快気に笑うイヴァンは、戦いが始まってから一歩たりとも動いていない。
楽に勝てる相手ではないと思っていたけど、まさか「物質」以外も丸くするとは……これは思ったよりも骨が折れそうだ。
しかし、それはこちらの負けを意味している訳でもない。
(ボクの斬撃を“奪う”為に、イヴァンはわざわざ右手を伸ばした。奴隷オークションの時もそうだ。手で触れた物が球体になった)
つまり、あの手に触れられなければ攻撃は通る筈で――
「わかるぜ。俺の手に触れられない様に攻撃を当てようとしてんだろ? まぁそう考えるのが普通だよなぁ」
「………………」
心を読まれた、訳ではない。
彼と戦った経験がある者は、恐らく皆同じ考えに辿り着いているのだろう。
その上で、イヴァンに勝った者がいるかどうはわからないけれど……でも、やるしかない。
ナイフを振るう。
一瞬で、15発もの斬撃を繰り出す!!
“
「チッ、数でごり押す気か!!」
右手一本で全てに触れるのは不可能。
仮に左手も同じ能力だとしても、それでもこの数は対処出来ず、避ける為にはその場から動かなければならない筈だ。
結果として。
それは紛れもない事実であったが、やはり一筋縄ではいかない。
イヴァンがすぐさまその場にしゃがみ込み、右手で荒野の地面に触れる。
途端、彼の立つ“地面がボコっと浮き上がって丸くなり”、その丸まった地面に斬撃が激突!!
ガガガガッと丸まった地面を削り取るも、球体の一部を崩しただけで終わった。
「参ったね……その“
「出来ないと言った覚えは無いぜ? ちなみに、足は一歩も動かしてねーからルール違反じゃねーぞ」
「………イヴァン、思ったよりも強いね」
「お、ようやく俺の凄さが理解出来たか。降参するなら今の内だぜ?」
「生憎だけど、コレで終わる程ボクも弱いつもりは無いよ」
まだだ。
まだ黒ヘビも、地獄の熱も使ってない。
「次から全力で行くね」
「来いよ。テメェの全力が如何にちっぽけなモンか、如何に小さな世界で強者ぶっていたのか、それを思い知らせてやる……ッ!!」
――ここからが、全力。
斬撃も、黒ヘビも、地獄の熱も。
手加減無しで全身全霊を込め、一切の出し惜しみ無しに全てを使った。
それら全てを使った上で。
持てる力の全てを出し尽くした上で。
ボクは『Darkness World (暗黒世界)』の荒野で天を仰ぐ。
これからの未来を暗示しているのか、ガスがかかって薄暗い空を見上げながら。
それら空を覆い隠す、“何百もの岩の球体”を視界に捉え――悟る。
(駄目だな。今のボクじゃあ『
強いとは思っていたけれど、ここまで実力の差があるとは思ってもいなかった。
この倒れた状態で、あの何百もの岩石砲を避けきるのは不可能。
「どうした、まだやるか?」
離れた位置から聞こえるイヴァンの声。
ボクは唇を噛み締めつつ、他人に聞こえるか聞こえないかの声で呟く。
“参りました”。
その声が何処まで届いていたのかはわからない。
ただ、状況的に「勝負あった」と思ったのだろう。
火の玉姿のグラハムが淡々と告げた。
「『格付け戦』:勝者――イヴァン」
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