■【右腕を代償に「黒ヘビの腕」を手に入れた少年の復讐劇】 ~ 死後、4000年の殺し合いを経て地獄最強の咎人となった少年が、地獄を抜け出し欲望渦巻く「闇の世界」で成り上がる!! ~
11話:ドラノア VS 『青銅身体《ブロンズボディ》』
11話:ドラノア VS 『青銅身体《ブロンズボディ》』
草むらから姿を現した3メートルの大男。
片手に「弟の生首」を持っているが、問題はそこではなく、その胸に「轟々と燃ゆる炎を灯している」ことか。
(コイツ、“
人知を超えた力:“
新世界『AtoA』に生きる人間から
(この男の肌が「
「おいチビガキ、聞いてんのか? 俺の可愛い弟を“こんな姿”にしたのは、テメェかって聞いてんだよ」
「あー、それは『ボクじゃない』って言ったら大人しく帰ってくれるの?」
「いいや、テメェも同じ目に遭わせる!!」
唐突に殴りかかって来た大男。
その拳をギリギリで避けると、背後にあった大木の幹に命中。
地鳴りと共に頭上の葉っぱがガサガサと揺れて、ハラハラと幾枚もの葉っぱが舞い落ちた。
「チッ、逃げるんじゃねーよ」
「いや、逃げるでしょ普通。っていうかさ、一応確認しておくけど、アンタが『
「だったらどうした」
「コレも一応確認だけど、人身売買は禁止されてるって知ってる? 人攫いとか良くないと思うんだよね」
「おいおい、ガキが大人に説教か? 笑わせてくれるぜ」
弟の生首を軽く上に放り投げ、両手でガシッと鷲掴み。
それから大男は胸に炎を灯したまま、生首に向かって口を開く。
「なぁ兄弟、この世は“人の不幸こそが金になる”、そうだろ? 人一人攫って売るだけで何百万、種族によっては何千万だぜ? こんなに楽な仕事を辞められるか? 無理だろ? 無理だよなぁ?」
(コイツ……狂ってるな。正気の沙汰じゃない)
変なクスリでもやっているのか。
唖然とするボクの視線もお構いなしに、大男はペチャクチャと一人勝手に喋る。
「特によぉ、今回の女は上玉だったぜぇ? 俺の
物言わぬ生首に叫んだ大男だが、今更生き返る訳も無い。
うんともすんとも言わない変わり果てた弟を手に、彼は「はぁ~~~~」と深く大きなため息を吐く。
「駄目だ、やっぱり喋らねぇ。弟は死んじまった……大事な家族だったのに……」
「その台詞、今までアンタ等が攫った人達の家族にも言えるの?」
「……この糞ガキ、度胸だけは一丁前だな。『攫い屋:バッチャー兄弟』と言えば、この辺じゃあ知らない奴はいねぇ筈だが?」
「何? 有名人気取りなら他でやってくれない?」
「ハッ、その強がりがいつまで持つか見物だな。これから苦しんで泣き叫ぶテメェの姿、せっかくなら弟に見せてやりたかったが――あぁ“良いこと”思いついた。可愛い弟の
(ん? 何言ってんだコイツ)
バッチャーと名乗ったこの大男。
やはり変なクスリでもやっているのか、意味不明な台詞を吐いた後。
唐突に“大きく振りかぶる”。
その手に生首を持ったまま、まるでボールの様に――投げた!!
「“
(ちょッ!?)
技の名前に吃驚している場合ではない。
剛速球で飛んで来た生首を横に跳んで避けるも、その奥から再び大男:バッチャーが迫り来る!!
「うおらッ!!」
ブンッと振るわれた拳は、初撃以上のスピード。
巨体の割にかなりの俊敏だが、こちらも伊達に地獄で4000年も鍛えていない。
「“
すれ違い様、ガラ空きのお腹目掛けナイフを振るう!!
今までの経験上、コレで勝負あった筈だったが――
ガキンッ!!
――金属音と共に、斬撃が“弾かれた”。
「ッ!?」
「何を驚いてる?」
ボクの斬撃を弾き。
すぐさま距離を詰めて来た大男:バッチャーの追撃!!
「ぐッ!?」
完全に油断していたと言わざるを得ない。
想定外の「二の矢」だった拳に殴り飛ばされ、ボクの身体が宙を舞う。
殴られる際は咄嗟に受け身を取り、巨木の幹にぶつかる前に体制を整えはしたものの、その後に地面へ降り立ったボクは「ギュッ」と唇を歪める他ない。
(アイツ、皮膚が異様に硬い……ッ!! あの
「俺の“
「教えて貰わなくて結構だよ。もうわかった――『
「お? 見た目ほど馬鹿じゃないらしいな」
一旦足を止め、攫い屋:バッチャーが「ゴンッ」と両拳を叩きつける。
「そうさ、俺の“
「………………(参ったねコレは)」
生憎、ボクのナイフに金属を斬れる程の威力は無い。
その領域に、今から一瞬で到達する可能性も皆無か。
「ハハッ、流石に絶望したか? チビが多少素早く動けたところで、圧倒的な実力差の前には成す術もねーんだよ。所詮、弱者は強者のオモチャ。俺に勝てないと理解出来たら、無能のゴミは死ぬまで大人しくボコられてろ!! 弟の何億倍も苦しめてやるよ!!」
お喋りの時間が終わり、再び迫り来るバッチャー。
動き出しはボクより遅いけど、その歩幅故に距離を詰めるのは一瞬。
「おらよッ!!」
三度振るわれた大きな拳。
その軌道を見ながら、ボクは思い出す。
『チビで無能なテメェは“負け犬”だ。殴られても当然の存在なんだよ』
それが、ボクの復讐相手「ジャック・A・バルバドス」の考え方だった。
体格に恵まれ、“
声を震わせても、身体を震わせても、魂を震わせても現実は何も変わらず、この小さな身体に青痣が増えるだけの日々。
今思い出しても、いつ思い出しても腹が立つ。
(こいつはジャックと同じだ。同じ種類のゴミだ)
ゴミはゴミらしく。
然るべき対処をしなければならない。
ナイフが効かないなら、右肩から黒ヘビを繰り出せばいい!!
「“
「なッ!?」
驚愕に目を見開く攫い屋:バッチャー。
彼の大きな拳を、それ以上に大口を開けた黒ヘビが骨ごと噛み砕く――その筈が、黒ヘビの牙もガキンッと“弾かれる”!!
(くッ、コレも駄目か……ッ!!)
奇襲は失敗。
ボクとバッチャーが互いに距離を取り、「次の一手」を考えたところで、初めて彼が「笑っている」ことに気付いた。
「こいつは驚いたぜ。長らく人攫い稼業をやってるが、“バグ使い”に会うのは今日が初めてだ」
「は? バグ、使い……?」
――――――――
*あとがき
次話、勝負の決着です。
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