スクランブル!

 「アウチッ!」

「大丈夫か?身体的にーと、言語的に。ていうか、どこ見て走ってるんだよ!!!」

「それは拙者のセリフでゴザル!そんな事より、お主か!!!先刻の爆弾は!!!」

「えっ!?いやその……俺じゃないが……」

「じゃあ、誰が一体……」

目の前の奇妙な侍に困惑していたが、すぐにある事を思い出した。さっきジャックポットを投げ飛ばした男に言った様に、こいつにもウソを言えば、シルバーブレッドへの足止めにはなるんじゃないかと。

「聞いてくれよ、もしかしたらさっきのh」

「あっ!さっきのドクター!!!」

「へっ?」

侍の後ろから走って来たカウボーイ姿の男が、ジャックポットの背後に向かって声をかける。

「あの人、助かった?」

「たぶんな。どっかにフラフラと行っちまったが。それに俺は医者じゃない。」

「ッ……………………」

ジャックポットは、何も言えなかった。後ろを振り向く事さえ、できなかった。背後の声は、確実に自分を追ってきている男で間違いなかったからだ。終わったと思ったが、一抹の希望に賭けた。

それは、人前では撃たないだろうという思い。

その願いは、現実となった。だが、撃たない理由が異なった。

「あの人、無事だと良いんだk……ああぁっ!!!」

目の前のカウボーイが、辺りをキョロキョロ見回しながら話していた口から、ある一点を見つめながら急に驚きの叫びがした。残りの3人がカウボーイを見た後、その視線の先に目を向ける。そこにはなんと、男が倒れている人に何かを振り下ろしていたのである。


「倒れてるのは、あの人じゃないか!」

「では、あの傍らに立っている者がおそらく…………」

「あぁ!俺達の闘いを邪魔してるんだろう。」

「では、参るか!」

「おう!それに間違えて撃った分、助けたいしな。」

カウボーイと侍は、それぞれ己の得物を抜きつつ、立っている男に立ち向かっていく。取り残されたシルバーブレッド達だが、立っている男を知るジャックポットが叫ぶ。

「そいつはヤバいって!!!」

「なんだ?知り合いか???」

「………………」

シルバーブレッドの問いかけに、ジャックポットは無言で返した。無言のまま、侍とカウボーイを追いかける。シルバーブレッドは再び後を追う。ジャックポットは思ったのである。手榴弾よりも、あの男に絡ませた方が、シルバーブレッドを確実に殺せると思ったからである。決して、侍とカウボーイを助けるためではなかった。



鉈は止まった。血で赤くなりながら。死ねない男の血で。死ねない男の顔も、血で赤く染まっていた。

ただ目はしっかりと、死なない男を捕らえていた。

「なっ!」

「………………」

驚く死なない男は、死ねない男に叫んだ。

「放せっっっ!!!」

よくよく見ると、死なない男の鉈は、止まっていた。死ねない男の手の中で。振り下ろされた鉈を、ガッチリと掴んでいたのである。動かそうとしても、動かす事が出来ない。

「あり得ない!いくら死への恐怖が無くとも、痛みはあるはずだ!!!」

「……ちょうど、麻酔を打ってもらったばっかりでね。痛みを感じないんだ。」

「痛みを感じないならば、そのままスッと死ねばいいのに……」

「言ったでしょ、失礼になるって。」

流石の死なない男も、恐怖を感じた。運が良過ぎるこの男、死ねない男に。恐怖を抱いていたせいで、後ろから来る二人組に気づくのが遅れた。


「「何してんだーー!!」」


その叫びで、ようやく死なない男が我に返ると、さっきの侍と知らないカウボーイが向かってきていた。二人の手にはしっかりと武器が握られており、こちらに攻撃を仕掛けてきていることは明白だった。斬撃と銃撃を受け止めようと、鉈を引いたが動かない。手を放して逃げようとしたが、遅かった。すれ違いざまも刃と、弾倉1回転分の弾丸を、死なない男は体に全て受けてしまった。

「カッ・・・ハッ・・・・・・」

死なない男は倒れ込む。カウボーイは、倒れていた顔面血まみれの男を助け起こす。

「大丈夫か?」

「なんで……助けたんだい?…………」

「それは、チョットな……」

男の当然の疑問に、カウボーイは笑って誤魔化した。



 「ヤバいヤバいヤバい‼」

ジャックポットは、1人で慌てふためいた。向かっていたあの怪力男が倒れたからである。かなりの大誤算であった。迷いながらも、止まる訳には行かなかった。止まれば後ろから来るシルバーブレッドに殺されるからである。策を考えながら、走り続ける。ジャックポットを追うシルバーブレッドも、考えていた。追いかけるのではなく、銃を撃つべきかと。しかし撃てば、先にいるカウボーイたちに当たるかもしれない。しかも、弾が少なかったからである。迷った挙句、撃つことにした。狙いを定め、引き金を引く。撃った瞬間、ジャックポットが消えたのである。弾はそのまま飛んでいき、侍に当たってしまった。

人が倒れる音がした。

倒れた音は、

ジャックポットは消えたのでなく、転んだのである。考えながら走る悪い癖によって。つまずいた原因は、斬撃と銃撃によって倒れていた怪力男である。


「また、転んじまった。」

「撃たれたでゴザル。」

「すまない!」

「大丈夫か?」

「誰が撃ったんだ???」


様々な人物が、一斉にそれぞれ声をかける。その答えが帰ってくる前に、叫び声がした。


「お前ら全員!!!ぶっ殺す!!!!!!」


倒れていた死なない男が起き上がり、落ちていた鉈を手に振り回す。眼は血走り、完全に怒っていた。怪我で動けない者や、近すぎている者がいる。危険な状態の中、一人の男が決断する。


「これでも喰らって、もうどうにでもなれ!!!!!!」


ジャックポットは手榴弾のピンを抜き、怒り狂う死なない男に投げつけた。手榴弾は手前で落下し少し転がると、その場に居た6人のちょうど真ん中で止まり、大爆発を起こした。

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