第4話聞こえる

木材課の飲み会があった。会社近くのお好み焼き屋で。

西村は静かに生を飲んでいた。

すると、声が聴こえる。

「偉そうに」

西村は無視して、お好み焼きを口に運ぶとまた、声が聴こえる。

「偉そうに」

西村は振り向いた。声の主は、係長の岩田であった。

西村は、岩田に近付き、

「何か、言いたい事があるのか?」

「ふん、偉そうに!所詮、お前らは俺の部下じゃねぇか!」

「そうだよねぇ」

ナマズ天野も頭に乗り出した。

「そうか。分かった。みんな、店出るぞ」

と言うと西村を慕う社員のほとんどがお好み焼き屋を出た。

残された、岩田と天野は口をポカンと開き、飲食代をなくなく、1人で支払った。

5万円を超えていた。

西村軍団は、中華屋で飲み会を再開した。

「みんな、アイツらに仕事全部丸投げしてみようか?」

「あの、ナマズも現場に立たせてやりましょうよ」

「アハハ、いいアイデアだ市山」

「今日、喫煙所であのナマズとタバコ吸いながら話したら、息がウンコの臭いしてましたよ」

「知ってる。あのお局様は歯槽膿漏なんだよ」

「最悪」

「よし、みんな、明日仕事をボイコットする電話を課長にしよう」

全員、会社に休みの電話を入れた。間も無くして、中華屋に岩田が顔色を変えてやってきた。

「西村君、今夜の事は悪かった。みんな、明日休まないでくれ!」

西村は、ビールを飲みながら、

「偉そうに。あのナマズはどうした?アイツを現場に立たせろよ」

岩田は外で待つ、天野を店に入れた。

「お前が頭を下げないと、明日は仕事やらねえぞ」

「あ、天野君。みんなに頭を下げろ」

「……嫌です」

天野はふてぶてしく、腕を組み西村を睨んだ。

「じゃ、係長、僕らも仕事するの嫌です。歯槽膿漏女を取るか、俺らを取るのかはっきりしろよ」

「天野っ!頭を下げろ」

「……」

「下げないと、お前はクビだ!」

「……くっ!」

天野は軽く会釈程度に頭を下げると、店を飛び出した。

「しょうがねぇなぁ。岩田!あんな女いらねえよ!こっちには、川越美樹という性格の出来た事務員がいるんだ。事務員は1人でいい。業務上横領するヤツを何故、クビにしない?課長の女だからか?」

岩田は涙目になり、

「明日、総務課に話してみる。だから、仕事は普段通りで」

「あ、後、俺たちゃ、おめえの部下って意識ねえからな!」

「分かった」

「後は、ナマズを現場に立たせろよ」

「はいっ」

「ここの支払い頼んだ」

西村の復讐は今夜から始まった。

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