第3話交通費水増し請求

天野は会社からそう遠くない、アパートに住んでいた。

しかし、交通費の請求は会社から1時間半くらい電車でかかる実家からにしていた。

誰だか知らないが、天野を嫌う僕と同類項が総務課に密告した。

総務課は130万円の交通費の返金をお局様に請求した。

甘いな~、総務課は。

虚偽の申請で、クビにすれば良かったのに。

その辺りはどうなったか、分からないがお局様は会社に居続けた。

課長と不倫していたので、課長が揉み消したのだと、噂された。

あのナマズ顔は、

「わたしに逆らうと給料減るわよ~」を口グセにタバコ吸いながら仕事していた。

西村と天野は相当敵対していたので、西村の給料は散々なものであったが、ある日を境に給料が計算通りになった。

課長と飲みに行き、仲良くなったからだ。

お局様は西村が自分より、高くなることに地団駄を踏んだが、所詮8時5時だ。

会社に寝泊まりする社員より、給料が少ないのは当たり前である。

それから、若い市山などの給料もあがった。


西村は考えた。何故、課長はこんなに西村と

仲良くなったのかと。

それは、西村の仕事ぶりにあった。

たの課の応援に行くと、西村の仕事っぷりが評価された。

係長の岩田よりも仕事を知っている。

ほかの課から西村が欲しいと言われていたのだ。

課長は天野との不倫をばらされたくないので、手元に置いておきたいのだ。

邪推かも知れないが、西村の地位は向上した。

すると、係長の岩田が西村に無理難題を押し付ける。

昼夜構わず、西村らを仕事させた。

西村は耐えた。朝らか夜中まで、たまには朝から翌日の昼まで、仕事してくたくたになって帰宅する日々が続いた。

ある日、いつもの様に前日の朝から翌日の昼まで働き事務所に帰ってくると、本来は翌日は休みになるのだが、それを無視して、

「西村、明日は夜中の3時まで頼む」

「……何だと?」

「人が足りないんだ」

西村は気付けば、岩田の胸ぐらを掴んでいた。

「どこまで、人をぼろ雑巾のようになるまで使えばいいんだ!てめぇが、朝から、翌日昼まで仕事してみろよ!バカ」

「お、おれは手配師だから……」

「お前、今から労基署一緒に来いよ!分かってんのか?脳足りん!」

「わ、分かった。西村君は休みでいいよ。市山は明日も……」

「バカか、市山も一緒に頑張ったんだ。休ませてやれよ」

「で、でも人が……」

「人が必要なら、総務課の連中使えよ!お前、大卒って威張ってたな?どこの大学だ?言ってみろよ!」

「……大垣経済大学」

「バカ大学じゃねえか!そんな大卒で威張るな!ボケ」

「き、君は……?」

「オレ?おれは帝都一橋だよ」

「えっ」

「市山は関西浪花大卒だぞ!大垣経済大卒が威張るなボケ」

「……じゃ、い、市山君も休みで」

「会社の決まりなんだから、こんなことで、時間を取らすな」

「わ、悪い」


その晩、岩田は数年ぶりに夜勤をして、翌日も仕事をした。手配だけして、日中、会社のベッドで寝た。

それ以来、無茶な手配はしなくなった。

それよりも、大卒と威張らないようになった。

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