第40話

3人で生活を始めてからは、あたしはどうも体力を持て余しているみたいだ

ついついスマホを片手にリビングを歩き回る癖が付いてしまった

前の仕事をしている時のあたしが見たら愕然とするだろうなぁ

休みの日はずっとベッドの上かソファの上でゴロゴロしてたし

そんな訳で、今日もあたしがリビングで歩きながらスマホで求人サイトを見ていたら、美海が背中から抱き着いてきた


「玲香ーヒマだよぅー」

「ぐええっ……美海っ?」


相変わらずあたし相手には力強く腕を締めてくるなこの子はっ

柚季には優しく抱きつく癖にあたし相手にはなぜかぎりぎりと何かの技をかけようとしているのか、すごい力であたしを締め上げてくる


「ヒマヒマヒマぁーっ! ヒマすぎて玲香のやってるゲームのセーブデータ消しちゃう衝動にかられるぅー!」

「おいマジでそれだけはやめろ」


あたしはため息をついて美海をひっぺがした

美海は頬を膨らませている

その頬をスマホの角で突いてやった


「あたしはヒマじゃないのっ。今仕事を探してるんだからっ」

「えー? お金なら別に私が出してあげるっていつも言ってるじゃんー。玲香が稼ぐ必要はないんだよ?」

「お金を出してくれているのは嬉しいけど、あたしはちゃんと仕事をしたいの……あっこの求人良いかも。キープしとこっと」


気になる求人が見つかるととりあえずその求人を保存しておく

見つかったその場で応募せずに柚季と美海に相談してから応募するようにしているんだ

相談中は柚季は真剣に求人を見てくれるけど、美海は大体頬を膨らませていることが多い

とはいえ相談自体には乗ってくれていて色々とアドバイスをくれたりする


「ぶー。玲香の仕事魔ー」

「はいはいあたしは仕事魔ですよっと」


美海がまた背中にくっ付いてくるけど、あたしはお構いなしにスタスタと歩き回る

あたしに引っ張られる形で美海もあたしにくっ付いたまま一緒に歩く


「ねぇ玲香ーお願いだから構ってよー今新しい仕事の案件がないからヒマなんだよぅー」

「ヒマなら柚季に構ってもらいなって、あたしは今求人サイト巡りで忙しいんだから」

「柚季は買い物に行ってるからいないんだってばさー」

「あー……そういえばそうだったか……」


柚季は今一人で買い物に行っている

いつもはあたしも一緒に行くんだけど、その、隠せないところに跡ができていたんだ

美海めっいや意外と柚季かも……


「でも、もうこんな時間なんだよね……」


時計を見るとそろそろ夕方だ

お昼から夢中で仕事を探していたせいで時間の感覚がなくなっていたみたい

そう思うと一気に集中力が解かれてしまった


「はぁっしょうがない。柚季が帰ってくるまでゲームでもしよっか?」


ぱあぁっと美海の顔が明るくなった

両腕を広げてぴょんぴょんと跳ねている


「やったぁー! 流石玲香っ! 何のゲームするっ? 格闘? シューティング? それともレース?」

「今日はシューティングの気分かな。2人で戦場を生き残ろうよっ」

「良いねっ! 私と玲香のコンビでトップを取ってやろうぜっ!」


あたしと美海はグッと拳をくっ付けた後、ソファに座ってそれぞれコントローラーを握った

あー……結局今日も良い仕事は見つかりそうにない。また美海に頼りっぱなしだね

これじゃどっちが甘えているのか分からないなぁ

この後あたしと美海は柚季が帰ってくるまで幾多の戦場を駆け抜けた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

百合カップルとペット(親友)の話 畳アンダーレ @ojiandare

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ