第33話
「じゃー柚季の残留に記念して、かんぱーい!」
「「かんぱーい!!」」
あたしと隣にいる柚季、そして美海とグラスを打って鳴らした
柚季が仕事の復帰の誘いを断って、あたしたち3人であのスーツの人たちを追い返したのが今から数日前
美海が 「あの時は夜遅かったから大したパーティーはできなかったからさ、今度こそみんなでパーッと盛大にパーティーしようぜっ!」 と言い出したのでまた3人でのパーティーが始まった
「ぷはぁっ! いやー柚季が残ってくれて良かったよぉ」
「そうだよね、あたし柚季がいなくなると思ってハラハラしちゃったよ」
「えへへ、みんな心配かけてごめんね?」
テーブルには柚季が作ってくれた料理と美海が宅配で頼んだジャンクフード、そしてあたしがスーパーで買ってきたお酒が敷き詰められている
さらにモニター前のローテーブルにはお菓子が大量に乗っかっている
子どもが見たら驚くくらいの量だ
「本当にありがとう柚季、残ってくれて。嬉しいよ」
「ううん。私は玲香と美海と一緒にいたかっただけだよ。それに玲香とはずっと一緒って約束したでしょ? 彼女として……ね?」
「へー2人共結構恋人らしくなってきたじゃんーペットとして嬉しいよ」
「美海もありがとう。玲香と一緒に私を守ってくれて」
「私としても飼い主がいなくなるのは嫌だからねー、それにあのスーツの人たちにはビシっと言ってやりたくなったし! ほらほらそれよりもっとお酒飲もうよっ今はパーティーの途中なんだからさっ!」
美海が身を乗り出してあたしと柚季のグラスにお酒を注ぎこむ
就職を蹴った記念に乾杯するというなんとも不思議なパーティーだけどね
柚季に仕事が見つかったと思いきやこれだもんね。
あたしには……うん。今は忘れよう。あたしの仕事は明日もまた探すからさ
「このお酒美味しいね」
「うーむっ玲香のお酒のセンスも上がったんだねぃ?」
「ありがと。まあ会社生活でお酒に頼る日はたくさんあったからなぁ……」
ストレスをお酒で紛らわす。学生の頃はありえないって思っていたけどまさか自分がそうなるとは思わなかったな
なりたくはなかったよ。うん
「まあそんなことはいいからっほら柚季!」
「れっ玲香っ!?」
勢いよく振られたのか、柚季はびっくりして目を見開いた
「今日は柚季が主役なんだから食べたいのがあったら言ってよ?」
「おっ玲香が良いところ見せようとしてるー! でもそうだぜ柚季? このパーティーは柚季のためにあるんだから遠慮しちゃだめだぜぃ!」
美海はビシっと柚季を指さした
「えへへ……ありがとう。でも私はみんなといるだけで嬉しいんだもん。遠慮しちゃうよ」
柚季は顔を赤くして恥ずかしがっている
まあ柚季の性格からしてこういうのは苦手だろうね
「んんーっ! 柚季のご飯また美味しくなってんじゃん!」
「あんたは柚季を見習ってちょっとは遠慮しなって。せっかく柚季が頑張って作ってくれたんだから」
「いやそうだけどさー玲香も食べてみれば分かるって! これ美味しいよ柚季!」
「ふふふ、ありがとう。美海はいつも美味しそうに食べてくれるね」
「だって本当に美味しいんだもん……ほら玲香もっ!」
「あっあたし?」
「当たり前! 柚季のご飯を玲香が食べないなんてありえないよ!」
「玲香……どうかな? 今日パーティーだからね? 頑張って作ったの」
まだ恥ずかしさで顔を赤くしていた柚季がおずおずとあたしに聞いてきた
チキンとキャベツをトマトで煮たスープ
あたしはチキンを箸でつまんで口に入れる
「……美味しい……」
「本当!?」
「うんっ美味しいよ柚季っ! 前に食べた時よりもまた美味しくなってる!」
「えへへ。良かったぁ……」
柚季は二口目を食べるあたしを見てはにかんだ後胸に手を当てた
そしていつの間にか空になっていたグラスに追加のお酒を注ぎ込んですぐに口をつけた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます