第26話
「それじゃご飯作っちゃうね?」
「ありがとー柚季ぃー。私も玲香もお腹減りまくってるぜ! まー口が寂しいことはなくなったけどさ? ねぇ玲香?」
「そ、そうだね」
柚季がキッチンで軽快な音を鳴らして野菜を切っている
あの後またあたしと美海がキスをして、それから柚季ともキスをして、3人で何度もキスし合った
途中であたしのお腹の音が鳴って2人に笑われて、それから柚季はキッチンに戻った
あんなに笑わなくったっていいじゃん……
そりゃあ雰囲気を壊しちゃったけどさ? 美海はともかく柚季も大笑いするなんて
いやまあ初めての恋人とのキスの場があんな終わりにしちゃったから笑われるだけマシだったりするのかな。幻滅されるよりはマシだよね。うん、そういうことにしておこう
それに、今は空腹感よりも強く感じているのがあるんだ
あたしは指で自分の唇を触っていた
「れ、玲香……ひょっとして、さっきの思い出してる?」
「えっ? ……あ、ごめん。気持ちよかったからつい」
「玲香はえっちだねぃ。私と柚季、どっちを思い出してたの?」
しまった。2人にばっちり見られてた!
「両方だよ……柚季も美海も、どっちもして、嬉しかったんだ」
「もうっ手元が狂うから今はやめてほしいな? 玲香も……その、ありがとう……うん……」
「あーごめん柚季、包丁持ってるから手元が狂ったら大変だよね」
「いいのっ私も玲香と美海とキスできて嬉しいんだよ」
「柚季、顔が真っ赤……あれ?」
玄関の呼び鈴がなった
誰だろう
あたし達3人は揃って玄関へと繋がるドアを見た
多分美海がネットで頼んだ荷物かな
「美海、今度はどんな荷物を注文したのさ?」
3人でここに引っ越して以来、何かと美海はネットで物を買いたがる
ゲーム機とかパソコンとか、あとリビングに置くタブレットも買うって言ってたっけ? 主に遊びに使う物が多いかもね
まあ大学生の頃みたいにまた3人で一緒にゲームで遊べて嬉しいけど、消費が多すぎないかな
「えー玲香じゃないのー? 私は知らないぜー?」
「私、見てくるねっ」
「あっ柚季は別に離れなくっても」
「いいのっ2人は待ってて?」
あたしと美海が止める間もなく、柚季は手を拭いてパタパタと玄関に向かっていった
リビングにまたあたしと美海が残された
あたしは美海の顔を見た
「ねぇ本当に知らないの?」
「多分ね。さっき柚季がご飯作ってる間にゲーム機を注文したけど、流石に届くのが早すぎるよ。サービスレベルが高すぎるね」
「そっか……」
この子またゲーム機頼んだのか……そのうち一部屋に一台とかやりそうだな
「ちなみに……」
「少し前に出たRPGだよ。昨日インフルエンサーの生配信で見たんだけどさ。みんなで一斉に同じゲームをプレイしてさ? 決まった時間になったらそこで止めて進捗を報告したり対戦モードで遊ぶっていうプレイスタイル。なんか面白そうだから3人でやりたくなったんだよ」
「ははは、分かったよ付き合うよ」
「へへへー持つべきものはゲーマー仲間だね!」
「分かった。やるからには負けないからっ」
あたしと美海はこつんっと拳を軽くぶつけ合う
「うへへー」
「はははっ」
「……」
「……」
2人で軽く笑って、空気がゆっくりと止まっていく
柚季はまだ戻ってこない。どうしたのかな
「なんか柚季遅くない? 宅配ならもうとっくに受け取り終わってこっちに戻ってきてるよね」
「だよねっ、何かあったのかな。サインするのにすっごい手こずっているとか」
「そうだとしても遅すぎるって、ちょっとあたし見てくるよ」
「あいあーい。早くしないと私がつまみ食いするって柚季に言っといてー」
「はいはいっ」
あたしは椅子から立ち上がって足をぷらぷらと振っている美海を置いてリビングを出た
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