第14話
色んな植物が見られる植物園。その中にもカフェは存在していた
地図を見たときに、植物園の中に飲食店があることに少し驚いたけど行ってみれば確かにそのカフェは周りの緑とよく調和していた
外観はしっかり木造になっていて自然の中でも違和感はあまり感じなかった
「へへへ~パフェってなんでこんなにも幸せになれるんだろうね~」
「色んなことから救われる感じがするよね~」
「ふふふ、美海も玲香もだらしないよー?」
「そう言う柚季だってすっごく嬉しそうじゃん」
「だっだって美味しいんだもん……」
カフェの隅にあるテーブル席であたし達はパフェを食べていた
最初はあたしほど乗り気じゃなかった美海も柚季もメニューにパフェがあることに気付くと目の色を変えた
そしてテーブルを3人で囲んでパフェをつついている
「私、全国のパフェを巡る旅にでも出ようかな」
「その時は私も連れて行ってよ玲香っ、私と玲香で日本中のパフェを食べつくしてやろうぜ!」
「もちろんだよ、全国のパフェがあたしたちを呼んでるぜっ!」
「いざパフェッ!」
「いざパフェッ!」
こつんと拳をぶつけるあたしと美海
へっへーんと得意気な顔をしている美海だけどすぐに天を仰いだ
「待って。パフェの旅に出たら外食ばっかになるじゃん。そしたら柚季のご飯食べられなくなるかも……」
「あー確かにそうだよね……それじゃあ旅には出られないなぁ……毎回材料を買ってキッチン付きのホテルを探すのも大変だろうし」
「私も一緒に行くの?」
「当たり前でしょ! 私と玲香と柚季はいつも一緒にいなきゃ!」
「そうだよ柚季! あたし達は親友だしその……恋人、だから」
「柚季がいないと私も寂しいよ。飼い主が玲香だけだとイヤだからねっ」
「えー、どうしよっかなー?」
美海はパンっと手を合わせて柚季に向けて手をすりすりと擦る
「柚季様っ、お願いしますからついてきてくださいっ! 柚季様と一緒じゃなきゃリードが足りなくなっちゃいます!」
あたしも美海にならって柚季に手を合わせる
「柚季様、美海もあたしも柚季がいないと寂しゅうございます!」
「もー玲香までそう言うの?」
柚季は少し悩むフリをして
「分かった。私がいないと玲香も美海もちゃんとしたもの食べなさそうだし、私も一緒に行くよ」
「やったぁー! 柚季様ぁー!」
「ありがとうごぜーます柚季様ぁー!」
隣り合った美海と抱き合う。そして美海は柚季とも抱き合った
次は……といったところで空気が止まる
「えっと……柚季?」
「何?……玲香?」
流れからしてあたしと柚季が抱き合う番。なんだけど、
身体が止まってしまう
あたしも柚季も、どちらも動かない
美海が呆れて大げさにため息をついた
「玲香も美海もまた恥ずかしがってぇーだめだよ」
「だってー、ね。ハズいし」
「うん……」
「はぁ……私が着いてこなかったらホントにどうなってたのやらって感じだよ」
そう言って美海はあたしと柚季の肩を掴んだ
この子あたしと柚季を強引にでもハグさせるつもりだ
「ほらハグしなって……んぷっ!」
「ほらっあたしの食べなー?」
「むぅ……玲香ぁ? 私はハグをむぅっ!?」
「ほら美海、私のもどうぞっ!」
「柚季までぇ……!」
あたしと柚季はクリームが乗ったスプーンを美海の口に持っていった
美海は抵抗しようと思っているんだろうけど目の前に持って来られたパフェには敵わないらしくパクッと口に含む
「美味しい?」
「へへへ……柚季ぃ」
「ほらもう一口どうぞ?」
「んぅ……えへへ~」
甘えるのが大好きな美海と甘えさせるのが大好きな柚季の相性は抜群だ
3人で生活を始めてからそう思うことが増えたなぁ
美海は柚季の肩に寄りかかって、そのまま柚季の膝に頭を乗せた
柚季は、行儀悪いよー? と言いながらも美海の頭を撫でている
「何とか誤魔化せたか」
「玲香っ! しーっ!」
「……はっ!!」
しまった、美海が正気に戻っちゃった
ガバっと柚季の膝から起きてわなわなと怒りで震える美海。それでも柚季から差し出されたスプーンはパクッと食いついていた
美海はそれを急いで呑み込んだ後、柚季の次のスプーンが来る隙を突いてガタっと立ち上がった
「玲香も柚季も何で2人とも私にあーんしてるのさ! 2人のデートなんだから2人でしなよ! というかとっととハグしろぉー!」
「そう言われても……美海もノリノリだったじゃん」
「美海はすごく嬉しそうに食べてくれるから好きだよ」
「うぐぅっ」
美海は立ち上がったまま後ろに反り返って固まった
そして勢いよく戻ってきて
「じゃあ私が決めるからっ……玲香!」
「は、はいっ!」
「スプーン持って、そう……それからクリームを乗せて……はいっ柚季の方に!」
勢いに押されて言われるがままスプーンにクリームを乗せてしまう
「みっ美海っあのっ……!」
「柚季ーっだめだよ逃げたらっ!」
がしっと柚季の肩を掴む美海、その退路を断たれた柚季はがくがくと震えている
「ほら玲香っ柚季にあーんしてっ!」
くぅ……この子勢いで押し切る気だよ
でもあたしにはまだ逃げ道がある。美海の口に持っていけばこのクリームはなくなるはずだっ
「言っとくけど私に持っていったらリードを付けてもらうからね。本物の! あと自分で食べるのもダメだから! もし自分で食べたらハグだから」
あっさり退路を断たれてしまった
思わず歯ぎしりするあたしに美海はふんすっと息を噴き出している
「れ、玲香……私は……その」
「分かってるよ、柚季」
こうなったら覚悟を決めるしかないよねっ
「柚季、口開けて?」
「はい……」
言われた通り口を開ける柚季、柚季の舌を見てまた心臓が跳ねた
柚季の舌、なんかすごくやらしい……
いや固まってはいられないんだ。柚季っ恥ずかしいけど我慢してねっ!
「あーん……」
「んっ……ん……っ……」
柚季の口の中にスプーンを入れて、取り出す
スプーンの上の白いクリームは綺麗になくなって、スプーンの表面は銀色に光っていた
「柚季……っ」
ただのあーんなのに、柚季にした瞬間にあたしの胸はキュッと締め付けられた
恋人同士がしているのを何度も見かけたけどまさかあたしがする日が来るとは思わなかったな。しかも女の子が相手だし、しかも柚季に
「えっとその……美味しい?」
「美味しいよ玲香……次は私がするんだよね?」
「えっ?……あぁうん、そうだよね。お願い柚季」
「流石柚季ぃ! ほら玲香が待ってるよ柚季!」
柚季がスプーンを持ってあたしの方に持っていく
なにこれ、めちゃくちゃ恥ずかしいし心臓がうるさいしどうにかなっちゃいそうなんだけど!
さっきの温室ほどじゃないけど柚季とあたしの距離が近いし
「玲香……いくよ?」
「うん……いつでもどうぞ……!」
柚季の前で口を開ける
あたしが見たように柚季にもあたしの舌が見えてるんだよね
ゆっくりとあたしの口に入ってきた冷たいスプーンを咥えてクリームを絡め取る
柚季はあたしのパフェと同じ物を注文したんだから味も同じだし知っている味だ
でもクリームの甘さ以外にも違う味がして、胸に別の感覚がやってきた
「玲香……どう?」
「美味しいよ柚季、その、ありがと」
「玲香が嬉しいなら、いいよ」
柚季はまた胸に手を当てて固まってしまった
柚季も、あたしと同じように感じたのかな
だとしたら……
「2人ともやればできるじゃん! 玲香も柚季もっ!」
あたしと柚季の顔を交互に見比べていた美海が腕を組んでうんうんと頷いていた
美海に見られていた恥ずかしさもあるんだけど、こうまで堂々としていると気にしても仕方ないって思えてもくる。悔しいけど
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