51話 大量の足音


「メイ?」


 俺は建物同士の隙間から呼びかける。


 メイは振り返って俺たちの姿を視認すると、こちらに歩いて近づいてきた。


「さっきここらへんでものすごい音がしてたんだが、何かあったのか? あと、ノレジを知らないか?」


「……ノレジは、連れて行かれた」


「え?」


 俺は耳を疑った。


「いつの間にか囲まれてて、一斉に攻撃を受けた。ノレジを守ることを失念してたわ」


 メイのその様子から後悔が読み取れる。


「どこに連れていかれたわかるか?」


「わからない。反応しないのよ」


 俺達は頭を抱える。


「あと、その子は?」


 メイが質問する。


「ああ、この子は城から出てきたから助けた」


「そういえば自己紹介がまだでした。私、セルウェラと申します」


「セルウェラはあの城で何があったか知ってる?」


 ハルが尋ねる。


「私が外を歩いているときに急に爆発音がして、そうしたら天守閣が倒れてきて、その後は走って門まで向かいました。あんまり周りの様子とかは見てないです。ごめんなさい」


「責めるつもりはないよ」


 やっぱり中にいた人も何が何だかわからなかったようだ。


「あのときイツキたちを襲ってきたやつらが恐らくあの爆発を起こしたんだろうけど、何の目的で……」


「とりあえずそれを考えるのは後にしよう。それよりノレジをどう探すかだが……」


 その時、大通りの方がやけに騒がしくなった。


「まだそんなに遠くまでは行っていないはずだ! 探せ!」


 大量の足音が俺達の方へ近づいてくる。


を連れ去った輩を許すな!」


 やがてその足音は俺たちのすぐ近くを通っていく。


 多くのそれが通り過ぎていく中、何人かは俺たちがいる狭い場所を歩いてくる。


 俺達は建物の凹んだ所に身を潜める。


「しっかしまあ、なんでこんなことになるのかね」


「王がどっか行ってるからだろ。にしても杜撰すぎる気がするが」


「帰ってきたらどう思うかね。最愛の娘は誰かに連れ去られ、妻は爆発に巻き込まれて……」


「最後まで言わないほうが身のためだぞ。聞かれてたらどうする」


「そうだな。気を付けるべきだった。まあ俺たちはその娘を見つけて取り戻せば一生分の金は手に入る。どっかに落ちてねえかなぁ」


「落ちてるってなんだよ。まあでも、こんなところを探してもいるわけが……」


 その時、俺たちの目の前に二人の男が現れた。


 全員が固まる。


「「いたーーー!!!」」


 二人が同時に叫んだ。

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