52話 デジャヴ
俺はすかさず飛び出す。
「グッ」
「おーい、ここにいるゴフッ」
俺は大通りにいる衛兵たちを呼ぼうとする声を遮るため殴るが、その声を聴いた何人かが様子を確認しに来た。
「ここに居るぞー!」
大通りのほうから声が聞こえる。
「お前らどけよ!」
「俺が捕まえる!」
「邪魔だって言ってるだろうが!」
俺達のいる場所は狭いため、すでに俺たちの存在に気付いた人たちがごった返し、入り口付近で詰まっていた。
その反対方向もすでに人が集まっていた。
ならば。
「セルウェラ、ちょっと持ち上げるぞ」
「ふぇ?」
素っ頓狂な声を上げたセルウェラを持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「屋根まで飛べるか?」
「わかったわ」
「オーケーよ」
それを聞き俺は直ぐにジャンプした。
狭い建物同士の間をぬけ。屋根の上へと飛び乗る。
続いてハルと杖を持ったメイも飛び乗ってくる。
先ほどまで俺たちがいた場所は大量の衛兵が入り込んでいる。
「屋根の上に逃げたぞ! 追え!」
「「「『ケルガン』!」」」
何人かが何かを叫ぶ。
白く丸い球が飛んでくる。
「『バーリャ』」
メイによってそれらがすべて弾かれる。
「ここにはもう居れないでしょ。逃げましょ」
「ああ、そうだな」
俺はノレジのことが気にかかったが、この状況では多勢に無勢だ。
しかも俺はセルウェラを抱えており攻撃できない状況だ。
逃げるという選択肢しか残ってなかった。
「国の防壁は低かったから屋根伝いで行けばそのまま国の外に逃げられるはずだ。セルウェラ、大丈夫か」
「殿方に抱えられて……。あわわわわ」
「大丈夫そうだな。よし。行くぞ」
「わわわわ、へ? キャー!」
俺達は走り出した。下と横から追いかけてくる気配を感じる。
しかし、それらは直ぐに振り切ることができた。
セルウェラを抱えているため全力で走ることは難しいが、それでも進むスピードは他の人よりも早い。
屋根の上を走る。何かデジャヴを感じる。
境目が見えてきた。オトイックの外に行きそのままどこかに身を潜めよう。
そう思っていたが、その近くの屋根に誰かが立っている。
そいつは何かを投げる動きをしている。
光に反射されそれは光る。
クナイだ。
俺はセルウェラを抱えながら躱そうとし、バランスを崩し、いったん止まる。
他の二人も気になったようだ。走ることをやめていた。
すると、クナイを投げてきたやつがこちらへと向かってくる。
近くに来ることによって見えた服装、それはまさに忍者であった。
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