49話 離れ離れ
「は? 獣人、だと」
城から出てきた人たちが息をのむ。
「……何のつもりだ」
「隠し事はよくないでしょ?」
ハルは淡々と答える。
「ふざけやがって!」
声を荒げながら、ゲラリアと呼ばれた獣人はハルの方へと向かう。
しかし、何度やっても結果変わらなかった。
「もうそろそろ終わりでいいかな。私も急がないと」
「――!?」
ゲラリアは何かを感じ取り、刀を構える。
次の瞬間、ゲラリアの手にあったはずの刀は吹き飛び、ダガーの先端を顔に突き付けられていた。
「余裕って言ったでしょ」
「……ああ、今回は俺の負けだ」
ゲラリアは力なくそう言う。
その瞬間、パキッとという何かが割れる音をハルは聞く。
それを感じた時にはすでにゲラリアの姿はなかった。
「俺達も一旦引くぞ」
そして、先ほどまで様子を窺っていた人たちも同様の音を鳴らし、全員が消えた。
「逃げられちゃった」
ハルは静かに呟くと二本のダガーを仕舞う。
そして、目にも止まらぬ速さで走っていった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
俺はメイとノレジを探しながらある程度遠くのところまで走って逃げてきた。
この少女は息を弾ませている。
しかもメイの姿も見当たらなかった。
どうするかな。
街は突然の城の崩壊で、外出している人がほとんどいないゴーストタウンと化している。
家に籠っているのか。
そして、明らかに敵意を含んだ視線を感じる。それも一つや二つじゃない。
家の方を見ると急に窓が閉じる。そんなことが何十回もあった。
俺は今の状況を整理する。
明らかにこの国の人間ではない服装。横には豪華な着物を着た少女。
あれ、俺めちゃくちゃあやしくね?
爆発した瞬間に急いで逃げてきちゃったけどどうしよう。
ハルとイツキが何かしてるのはわかったけどそれどころじゃなかった。
「お姉さん、どうする?」
横にはノレジもついてきた。
「とりあえず他の人たちと合流するしかないわね」
私は杖を出してそれを地につけ、唱えた。
「『マピミク』」
杖を中心に同心円状に白い光が広がっていく。
「あ、それは空間把握魔術だよね! お姉さん使えるの?」
「ちょっと待ってね」
「あ、ごめんなさい」
私は意識を集中する。イツキとハルは……。
いた。イツキは私たちと少し違う方向に逃げたようだ。
近くにもう一人人がいるようだけど、それは誰だろうか。
ハルは見つからない。
とりあえずイツキと合流しよう。
「イツキの居場所が分かったわ。ついてきて」
「わかりました!」
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