42話 スイーツ

 店に入ると先にメイが奥にいる男に注文していた。


「ウルトラスペシャルファンタスティックイチゴ特盛クリームパフェで!」


 言ってて恥ずかしくならないのだろうか。


 俺は他人のふりをしたい。


 おい、そんなにキラキラした目でこっちを見るな。


「パフェで」


 ハルはとても簡潔に注文していた。


「おはぎをください」


 俺も続いて注文する。


 店主であろう男は静かに頷き、手で俺たちに席に座るように促した。


 三人で机を囲う。


 ほかに客はおらずあまり広くはない店内だが、木の質感は少し安らぎを与えてくれる。


 店主らしき男は一人で何もしゃべらず黙々と作業している。


 やがて、俺の前におはぎが三個乗ったお皿が置かれた。


 俺が想像していたおはぎとほとんど同じものだった。


 あんは粒あん、とてもきれいな丸みを帯びている。


 そして、次にハルとメイのパフェが置かれる。


 50cmは越えている大迫力のパフェだ。


 クリームやコーンフレーク、チョコやアイスなど見た事のある、見てるだけでお腹がいっぱいになりそうなほどのボリューム感。


 その一番上、たくさんの小さな果実が乗っている。


 が、あれ?


「イチゴじゃないのか」


 つい言葉を漏らす。


 ここまですべて見たことがあるデザートだったので、見たことがない実が頂上に存在しており、それが違和感を放っていた。


「……イチゴは在庫切れだ。すまんね」


 低くボソボソとした声が聞こえる。


 誰の声かと一瞬考えるが、それが店主の声以外選択肢が無い事にすぐ気づいた。


「ええ、気にしなくていいわよ」


「……代わりにカペマを乗せておいた」


 このイチゴの代わりに乗せられている実はカペマというのか。


 イチゴより一回りほど小さい赤い実で、でもイチゴと違い見た目はツルツルだ。


 それを半分に切ったものが所狭しと並んでいる。


「この時期のカペマはよく熟れていて甘みが濃い」


「そうなの? それは楽しみだわ」


 メイはそう言うとすぐにスプーンを持ち、それをパフェに突き立て頬張った。


 目がさらに輝きを増した。


 ハルは少し怪訝な表情を浮かべていたが、メイに続いてパフェを口の中に入れる。


 食べるたびに頬が緩んでいく。


 俺はそんな二人の幸せそうな様子を見ながら、おはぎに添えられた黒文字を手に取り食べ始めた。


 口の中に入れると程よい甘さが広がる。あまり甘ったるくない、いいバランスで成り立っている。


 これは何個でも食べられる。


「お茶、あと伝票」


 店主はそう言い俺たちの机に三個湯呑を置く。そして伝票も置かれる。


 湯気がたち、店の中へと旅に出る。


 心安らぐ場所がここにあった。








 俺はちらりと伝票を見る。


 しかし、重石が置いてあり、伝票の一番下しか見えない。


 恐らく合計金額だろう数字が書かれてあった。


 計   305800


 俺は上にある石をどけ、書いてある内訳を見る。


 パフェ 2500×2

 おはぎ 800

 お茶  100000×3

 計   305800


 ぼったくりじゃねーか。

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