3話 戦闘と出会い

 俺がその声に気付き、振り向くと同時に背の高い草むらをかき分けるようにして、男が出てきた。


 ばっちりと目が合い、二、三回瞬きをする。そしてお互いに会釈をする。先に挨拶したのは俺だった。


「……どもです」


「あ、どうも」


 相手も挨拶を返してくれる。そして相手の身なりを見てみる。


 腰に短剣?ナイフ?みたいなものを数本携えており、服は少し赤く薄汚れている布地の物だ。言葉で説明するのは難しいが、その恰好のイメージといえば……


「盗賊?」


 口に出てしまった。その言葉に反応したのか体をビクッと震わせる。やった、図星だ。


 じゃなくて、これってだいぶピンチじゃね?


「じゃ、俺はこれで」


 手を振って俺はこの場を離れようとする。しかし、相手は当然、それを許さなかった。


「おい!ここに怪しいやつがいるぞ!」


 後ろに向かって叫ばれた。え、仲間とか呼ばれた感じですか。


 やばいと思い、俺は走ろうとする。しかし、一歩目を踏み込むと同時に体がまた飛んでいく。


 また目の前の木に激突し、木を折る。


「痛っ!」


 その音に驚いた男がこちらを見る。不思議そうな顔でこちらを見る。


「なんだなんだ」


「誰か生き残りがいたのか?」







 なんか人が集まってきたんですけど、どうしようこれ。


「あいつは誰だ、変な格好してるぞ。ほかの国から来たやつか?」


「わからねぇ。けど、殺しておこうか。変に情報をまき散らされると怖えからな」


 そういうや否や一人の男が飛び出してくる。剣を振りかざしてきた。


 急いで横に飛んで逃げる。そして、また木に激突。でも、少し慣れた気がする。


 先ほど俺がいたところには剣が振り下ろされていて、少し意表を突かれた様子だった。


「回避速度早えな!でも、いつまで耐えられるかな!?」


 再び迫ってくる。そして俺も避ける。感覚をつかんで、何とか木にぶつかる前に体勢を立て直し、木を蹴ってさっきまで俺がいた場所、今は突然襲ってきた男がいる場所へと飛んでいく。完全なる直感での行動。こんなに俺って運動神経良かったっけ?っという疑問を押し殺し、男を殴り飛ばした。


 男は飛んでいき、木によって止められる。完全に気絶している。いや、頭から血が流れているところを見るに、もしかしたら死んでいるかもしれない。


 しかし、そんなことはあまり気になっていなかった。いきなりの身の危険に必死になっており、落ち着きはなくなっていた。


「なんだあいつは!?」


「全員、戦闘の準備!!」


 いつの間にか集まっていた男たちが一斉に武器を構えてくる。あれ、奥にいる人、魔女とかが持っているような杖とか持ってる。じゃあこの世界にも魔法とかあるのかな。


「魔法、放て!」


 その声が聞こえたかと思うといきなり光線のようなものが俺に襲い掛かる。それをまたしても横に躱し、敵の方へと走っていく。


「こっちにくrグハァ!」


「一時てったギャー!!」


 次々に殴り倒していく。異常な身体能力を生かして相手の目を欺き、隙あらば殴りこんでいくといった明らかに脳筋な動きである。さっき魔法を放っていた人たちは俺の姿が早すぎて見えないのとむやみに放って仲間に当たるのを恐れているのか、魔法を使うのをためらっている。


 そんな人たちを殴り続ける事数秒、俺に敵意を向けた男たちはみんな地面に倒れていた。 全員気絶してしまっている。もしかしたら死んでいるやつもいるかもしれないが、先に攻撃してきたのはどっちだ。正当防衛って事でセーフ。


そして俺は一人の女性に目を向ける。後ろの方で縛られていた人だ。多分、先ほどの盗賊に捕まったのだろう。


「大丈夫ですか」


腰が抜けてぺたんと座っている女性に手を差し出す。彼女はそれを震える手でつかみ、そして立ち上がる。彼女の雪のような白色の長髪が光を反射させ、美貌をより一層輝かせている。白を基調としたローブを身につけている。


「名前を窺っても?」


「私はハルです。助けていただきありがとうございます。あなたの名前は?」


「俺はイツキです」


「イツキさん、ですか」


彼女が少し考える素振りを見せる。


「? どうかしましたか?」


「いえ、何でもないです。あと敬語はなくても大丈夫ですよ」


「そう、わかった。じゃあハルさんも敬語はなしで」


「ええ、わかったわ」


 そして俺は地面に倒れている人を尻目に再び走り出す。彼女は俺ほど速く走れないのでお姫様抱っこで運んでいく。先ほどの戦いのおかげもあり、少しはこの力の扱いができるようになっていた。

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