第一話 6-2

 ブラッディソードにそんな仕様のものがあるとは、ネイアの知識を以てしても思い至らない。


「対になって初めて真価を発揮する魔道具、アーティファクトの類は幾つかありますがねえ。流石に魔剣と対になるものは、私も初めて目にします」


「単体で魔力の増幅や特定の効果を付与する魔石、魔法剣はありますけどね、先生」


 ブラッディソードもその基本構造は同じであると、ネイアは語る。

 双刀のグリップから柄頭にかけては、それぞれ壮年の男女の姿が模られており、箱の中では双方が見つめ合う様に並べられている。赤玉が嵌められているのが女性像、青玉は男性像である。


「……何にせよ、これはバラン殿ご夫婦が結婚の記念に作らせたもの、などではありませんね、これは明らかに古代の遺物。一級、特級の魔法具物に違いありません」


 アルベルトがそう言うとネイアは投影を解除し、映像は消失した。


「ちなみに先生、この品に商会が値をつけるとしたら、お幾ら?」


 そう言う彼女の瞳は、奇妙な光を湛え口元は少し歪みが見えた。


「……何ですか?その欲に塗れた視線は。貴女はご両親の形見を売り飛ばすつもりですか?」

 

「いや〜ちょ〜っと、興味が湧くじゃない?やっぱり魔術を志すものとしては、こう言ったアーティファクトがどれほどの相場で取引されてるのかって……」

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