第一話。【不運の始まり。或いは伝説の夜明け前】Chapter 6-1

 二つの指輪。それには同様の文字の様な刻印がなされているのが見えた。嵌められている宝石はかなり大粒な赤玉と青玉。それぞれ赤玉は傷一つない楕円形、青玉は正方形にカットされ、さらに中心に向かって90度ずつ角度をつけられた正方形が、段々にカッティングされている。その点から、原石の大きさを考えると……


「めちゃくちゃ高そうな宝石が嵌ってるんだね〜これ」


 真の価値を知ってか知らずか、アベルが呟く。


「確かに。でもね、それも多分普通の宝石じゃ、ないわね」


 そう言いながらネイアは改めて、一対の短刀の方に目を向けた。緩やかに反りの入った刀身は白銀で鈍く青みがかった光を放っている。それは素材そのものの色。ミスリル銀の特徴であり、箱の中で左右対象になる様、置かれていた。

 下がってガード部分、その中央には宝石が挟まっており、その形は指輪の物とは反対に正方形にカッティングされた赤玉に楕円形の青玉。


「……多分、この反対側に指輪の宝石を嵌める部分があるか、それぞれ対になっている指輪を手に嵌めて使用する様になっているわね……」


 そう、ネイアは考察する。魔道具が放つ色が、指輪が紫、宝刀がそれぞれ嵌められた宝石の色に光っているのが恐らく、使用の際の組み合わせを示している。

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