第一話 5-10

「……いや、今の世の中、ヴァンパイアやハイ・オーガはおろか、レッサー種も希少なのですがね。どちらも第一級討伐対象なのですから……」


 出現情報を届け出るだけでも、確度の高いものなら一年間の平均所得を余裕で上回る。それだけ出現を警戒されており、当然のことながらその討伐報酬は破格のものがある。

 出現を警戒されている、と言うのはどちらも通常の【繁殖】を経て生まれてくる魔物ではないからで、ハイ・オーガは突然変異体として生まれた屍食鬼・オーガが長い時を経て生命力が異常に発達した個体とされ、その発生確率は極めて稀であると言うのが、近年の研究における定説。

 ヴァンパイア種に至っては、禁断の呪法を用いて高位の魔術師か徳の高い司祭が特定の条件のもと、変異するとされる。


「そうね、ヴァンパイア種を十体も狩ればさっきの借金、チャラにできるかしら?」


「そうですね。確かにそれぐらいは、まあ余裕でしょう。【それ】らが隠匿しているであろう物品も押収すれば、十分に採算は見込まれる……しかしながら」


「……まあ、いるはずもありませんがね(ないでしょうけど)」


 最後、二人の間で珍しく意見の一致を見た。


「……へえ〜そうなんだぁ」


 そんな会話には興味なさげなアベルは前のめりで、空間に投影された映像を食い入る様に見入っていた。

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