第一話 5-9

「……ダメ。これは絶対に世に出しちゃいけない」


 箱に入っていた一対の短刀と指輪を一目見たネイアが、素早く箱を閉めた。


(なんで、こんなものが……)


「あっ!まだ僕よく見てなかったのにぃ〜」


 横からアベルが不満そうに言う。


「ああ、ごめんなさいねアベル……」


 でも本当に危険なものだったの、そう言ってネイアは右手のひらを上に向け、短く詠唱する。

 すると、手の上の空間に箱に入っていた短刀と指輪が投影された。


「これは、一般的には鮮血を欲するとされる魔剣、ブラッディソードと呼ばれるもので、指輪は流血を伴う誓約の円環。どちらも使用者の血、そして魂そのものを食らって力とする、禁断の魔道具よ」


 ただ、一般的な魔剣や指輪とは若干、形状が異なっている。ネイアの知識で知るものの中に、この様な形で対になるものはなかったが、これとよく似た魔道具の存在を示唆する記述が、古い文献の中にあったのを覚えていた。

 その詳しい内容について、今思い出せないのがネイアには歯痒かった。


「基本的にどちらも命、生ある者が使用するには適さない。さしずめ吸血・屍食鬼種、それも自我を持つヴァンパイア種かそのロード。体力お化けのハイ・オーガ。或いは吸血種の最上位、伝説の【不死者の王】ノーライフキングの定番装備ね」

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